主夫ロマンティック

独身中年男子の介護録──母が授けてくれたこと

【或る区切りとして──叔父と叔母の墓前にて2021】

2021年11月10日⁡悲しい出来事があった。⁡感情を容易く言葉に置き換えられるなら、きっとすぐに楽になれるのだろう。これまでも無数の感情にラベリングを施してきた。⁡⁡──こんなときに混乱しないように──⁡⁡これは「痛い」これは「苦しい」これは「辛…

【介護者生活丸9年──10年目の介護記念日】

2021年10月15日⁡9年前のあの昼間の出来事を懐かしむことができる日は、まだ来ないらしい。それまで聴いたことのないような大きな物音が鳴り響いた「あの瞬間」のことをだ。⁡そのときぼくは、眠っていた。それでも、音に携わる仕事をしてきただけに…

【目と耳の検診から知る心身チューニング法(2)】

2021年10月13日⁡続いて耳鼻科へ。待合で順番を待っている最中に、既に体力の限界に達しようとしていた。しかも、検査のための点眼薬で開放されたままの瞳孔には、病院内の白くて明るい照明がとても堪えた。瞼を閉じても強く光を感じるため、まずは俯…

【目と耳の検診から知る心身チューニング法(1)】

2021年10月13日⁡1番──。⁡こんな位はもう久しく味わっていない。そんな有難いはずの位が、まさか病院の受付番号だったなんて皮肉だ。⁡パンデミックの最中、最も酷使したであろう目とみみに違和感を感じ始めていたのはいつからだろう。身体に備えられ…

【貫いた辛抱──14,400時間(4)】

2021年9月24日⁡今日の面会には、母との再会以外にも目的があった。この20ヶ月の間の母の移ろいを知りたかったのだ。15分間の面会時間の途中で、日ごろ母のお世話をして下さっている職員の方お2人から、最近の母の様子を聞かせていただいた。⁡⁡「…

【貫いた辛抱──14,400時間(3)】

2021年9月24日⁡ぼくが一方的に喋って、母がその様子を見つめる──それだけのやりとりに収まったのは、いつごろからだろうか? 特別養護老人ホームにお世話になり始めた3年前は、だいぶ子供がえりが進んで、思うときに思ったまま何でも口に出すように…

【貫いた辛抱──14,400時間(2)】

2021年9月24日⁡非常階段からバルコニーを伝うルートは、施設の外周をぐるりと一周する形で、思いのほか長い道のりだった。その間、担当の方より、母の現状報告をいただいた。久々の対面でぼくに動揺が走らないように、という配慮が伺えた。当たり前の…

【貫いた辛抱──14,400時間(1)】

2021年9月24日⁡あれから今日まで、幾月が過ぎたのか?⁡今日、母と再会を果たした。⁡母の87歳の誕生日を施設で一緒に祝ったのは、2020年1月下旬。その後、施設は例年通り、季節性インフルエンザの流行期に伴って面会中断となった。そして、その…

【明日への願いを描く──秋分の日2021】

2021年9月23日⁡この30年見渡している、お隣のお庭の断片──。⁡自然は今年も季節を間違うことなく感じ取り、木々を色づき始めさせた。⁡暦とは、人が生み出した概念である。時の流れを周期化し、その日その瞬間に名前と意味を与えたからこそ、人は「今…

【20年前、東京にて】

2021年9月11日⁡幸せの総量は、決まっているのか?──。⁡今から20年前、その出来事を目撃することになる前夜──日本時間、2001年9月11日、夜──ぼくは自宅の寝床に横たわりながら電話をしていた。どれくらい通話していただろう? 2時間? それとも3時…

【着信──緊張、高鳴る】

2021年9月7日⁡今日は兄の誕生日。母に手紙を送るには最適な日のひとつだ。⁡会話ができなくなっただけでなく、面会もできぬままの状況が続いていることもあり、現在、母がどんな様子なのかまったくわからない。そこで募る不安は、ある話題から母の感情…

【父の五十一回忌】

2021年8月4日⁡今朝、浅い眠りの最中に、どいうわけか、素数について考えていた。「1」とそれ自体を約数に持つ数字のことである。目を瞑ったままおぼろげに数字を数え始め、50の台まで計算をした。⁡⁡「51は、もしかして素数なのか?」⁡⁡そう思って…

【謝恩】

2021年7月19日⁡酷暑が続いている。だから昼間からビールを飲んでいる──そんなわけでは、もちろん、ない。⁡事情を説明したところで、ぼくが抱えることになってしまった想いは、理解されようがない。いや、そもそも今のぼくでさえ、自分の感情がいかな…

【ある不安を取り除くために──ワクチン接種1回目】

⁡2021年7月4日⁡特別養護老人ホームに暮らす母の2回目の接種が完了してから、約1週間が経過した。その後、連絡もないことを踏まえると、大きな変調もなく過ごしているのだろう。⁡一方のぼくは、三重の基礎疾患がある身。感染拡大が報じられてから過ぎ…

【絵画のような空】

2021年6月29日⁡いくら梅雨空だといっても、最近、あまりに劇的な空模様をよく目にする。今夕も近ごろよく見かけるような空にまた出会した。延々と連なる雲の行くえを視線で追うも、距離感が掴めない。なぜだ?⁡⁡──拡張と縮小──⁡⁡どういうわけか、それ…

【2009年】

2021年6月27日⁡朝、居間の壁に掛けたカレンダー表示付きの時計に目をやる。すると、電池切れになったらしく表示が消えていた。⁡こうした電化製品は、とても少ない電力で動作するのか、電池交換サインがでようと、そのまま使い続けることができたりす…

【自分のワクチン接種券、届く】

2021年6月23日⁡遂にこの日がきた。なんだか実感がまだ湧かない。映画のワンシーンのなかにいるような感覚があるが、仮に映画の中だったとしても、ここで放たれるセリフはきっとこうだ。⁡⁡──これは現実だ──⁡⁡先日、居住地区の役所が設けたワクチン接種…

【母のワクチン接種/1回目】

2021年6月2日今日、特別養護老人ホームに暮らす母の、新型コロナウィルスのためにワクチン接種が行わる予定になっていた。接種は、「当日の体調次第」となる旨、予め確認の連絡があったが、予定通り完了できたかどうか、今はわからない。少なくとも、…

【自律神経が留守の間に】

2021年5月29日確か前日に目覚めたのは、夕方5時──その日も朝、だいぶ日が高くなってから眠りに就いたような記憶がわずかに残っている。今日も気づけばすっかり朝を越えて、昼に迫りつつある時刻だ。目前の作業は佳境を迎えている──1時間という長尺…

【予期しなかった代理サイン】

2021年5月4日新型コロナウィルス感染拡大、第4波──。母に代わってこの書類にサインしたのは、2度目の緊急事態宣言が解除されたあと、4月に入ってまもなくのころだった。それから一ト月と経たないうちに3度目の発出──こうして刻一刻と、日本の歴史が…

【大仕事を終えたら、いつだってぼくは、パンが食べたいのだ】

2021年4月27日「頑張ったご褒美に」なんて思考があるうちは大成しない・・・と、かつてどこかで読んだ気がする・・・そんなことを、昔にも書いた記憶がうっすらある。自愛の心を高めて行くことがこの危機を乗り越えるためには欠かせない──そう結論し…

【海を超えて贈られた願い】

2021年3月12日復帰作とも呼べる音楽映画作品《キネマムジーク》を仕上げてから、完全なる放心状態に陥っている。のんびりしている間などないというのに、なにも手がつけられない自分に苛立ちを覚える気力さえない。この1年、いやこの10年の想いを…

【孤独のおでんに2021年の躍進を誓う】

2021年1月2日元旦のラザニアに続いて取り組んだのは、おでん。コロナ禍になる直前、去年の今頃だったか、ふと思いついて〈おでん研究〉を始めた。あらゆる具材を試した結果、どうもぼくは、練りものに興味がないことがわかった。唯一、あまり人気のな…

【孤独のラザニア〈正月仕様〉で元旦を祝う──静けさのなかにある安寧】

2021年1月1日謹賀新年──。もうすっかり、この静かな暮らしが気に入っている。満たされない何かを埋めようと、現実から逃げていた時代が嘘のように晴れた・・・まるで他人事のようにその昔を思い返すも、あのときはああすることでしか自分を守れなかっ…

【孤独のラザニアで50歳を祝う】

2020年12月26日1日遅れのメリークリスマス。しかし世界は広い──日本時間26日14時現在、サンフランシスコではクリスマス・ナイトのクライマックス。それに、昼間の明るい時間にメリークリスマスというのも何だかいい気分だ。子供時代のクリスマ…

【久々に車椅子を押した日】

2020年12月15日この街に身体のメンテナンスに通うようになって、もう1年以上が経った。いつも通り、午後のゆるめの時間に治療を終えて、今日も日用品を買い求めに周辺を歩いた。30分ほどで用事を済ませたあと、ふと街の喧騒から離れたくなって、ひ…

【介護者生活8周年── 信じる・受容れる・自然に過ごす──無意識の決断】1/3

2020年10月21日 かつて母が過ごした介護老人保健施設に隣接する森のなかで、これを書き始めた。同じエリアにある、母のかかりつけの病院へ今年も健康診断の申し込みにやってきたのだが、2020年はこれまでとは勝手が違うらしい。感染拡大防止のためか…

【介護者生活8周年── 信じる・受容れる・自然に過ごす──無意識の決断】2/3

2020年10月21日 8年前のあの日、突然我が家に鳴り響いた轟音──そのとき感じた不安と恐れは今もはっきりと憶えている。音を専門とする身だけに、その異常な音の質感は、一瞬にしてぼくの想像力を掻き立てた。──かなり大きなものが落ちた音──何かが倒…

【介護者生活8周年── 信じる・受容れる・自然に過ごす──無意識の決断】3/3

2020年10月21日あれから8年──もう思い出せないほどたくさんの出来事があった。自分の身には、振り返りたくもない苦い経験までもが起こった。心を病み、何かに、そして誰かに依存し、自暴自棄になりかけては「これではダメだ」と己を鼓舞し、悶絶し…

【父の五十回忌──2020年、東京にて】

2020年8月4日49年前の今日、父が逝った。そのときのことをぼくは憶えていない。いや、憶えているはずもない。──生後8ヶ月──その日のことはおろか、父と過ごしたその8ヶ月のことさえ思い出せない。父に抱かれた写真を観ても、どんなエピソードを家族か…