主夫ロマンティック

独身中年男子の介護録──母が授けてくれたこと。そして、それからのこと。

【約束の日】

2022年6月25日⁡先立った2人を連れて、無事に初日を見届ける──ようやく役目を果たせたような気がした。⁡⁡#森山開次 #NINJA #新版 #初日 #新国立劇場 #中劇場

【約束の地へ、再び】

2022年6月22日⁡遂に劇場入りを果たした日──ここまで、ながいながい道のりだった。⁡《新版・NINJA》と銘打たれ、2019年の初演時は小劇場──そこから中劇場へと場所を移して行われるこの再演は、ほとんど〈新作〉と言っていいほど印象が異なっている…

【〈あとがき〉喪われ、育んだ10年──母と婚約者 ふたつの死】

2021年12月3日に母を、2022年1月10日に婚約者を相次いで喪くし、今日まで何もできない毎日が続いた。⁡寝て、起きて、食べて、寝る──たまに飲みに出ては暴飲暴食を繰り返し、自己嫌悪に陥って自制する──その繰り返しだった。⁡たとえ酒場に出か…

【母と彼女への葬送曲〈後編〉──母と婚約者 ふたつの死(34)】

2022年5月3日⁡遺骨は、パウダー状になってもその質量は失われず、手にした瞬間にずっしりと重みが感じられた。⁡となると、手放した途端、骨は一気に沈んでいくのではないか?──ぼくが勝手に期待していたイメージでは、水なもに粉となった遺骨がたゆた…

【母と彼女への葬送曲〈前編〉──母と婚約者 ふたつの死(33)】

2022年5月3日⁡葬儀を望まなかったのは母の意志だった。⁡⁡「田舎に墓があったら、誰もけえへんやろ」⁡⁡そう言って、母は33年も前に自ら都心部に墓を設けた。しかしそれから時代は過ぎた。ぼくや兄夫婦がこの先どこへ移り住むかわからない。求められれ…

【母を荼毘に付した日〈後編〉──母と婚約者 ふたつの死(32)】

2022年5月2日⁡棺の蓋を閉じる前、亡き婚約者が母の額にながくながく手を触れていた。母に何を伝えようとしてくれていたのか、ぼくにはわかる気がした(その一ト月後、急逝した彼女を見送るとき このときの返礼のつもりで、ぼくも彼女の額にながくなが…

【母を荼毘に付した日〈前編〉──母と婚約者 ふたつの死(31)】

2022年5月2日⁡母の火葬は、1週間後の12月10日に執り行うことになった。当時、東京もまだ感染拡大はしていなかったものの、婚約者を何度も往復させるわけにはいかないと思ったが、彼女の強い希望がぼくのこころを動かした。⁡⁡「お母様を見送らない…

【夕闇に亡き婚約者と母を見送る──母と婚約者 ふたつの死(30)】

2022年5月1日⁡「人生、やり残しなし」⁡在宅介護を続けていた間、月に一度行われるケアマネジャーとの面談で、母は毎回こう口にしていた。面談では毎月、目標を立てることになっていたのだが、母は問われる度にこう応えてはケアマネジャーを苦笑させる……

【初めて観た人の死に顔──母と婚約者 ふたつの死(29)】

2022年5月1日⁡母の亡骸に会いに行ったのは、息を引き取った翌日のことだった。当日は午前中から死亡診断が病院で行われることになっていた。遺体が戻ってくるのは午後になり、その後、お別れの支度を整えるため時間をいただきたいとの申し出が施設側か…

【母が死んだ夜のこと──母と婚約者 ふたつの死(28)】

2022年4月30日⁡2021年の師走に入った最初の日、まだ夜が明けぬままの未明の刻だった。東京には凄まじい風が吹き荒れていて、ぼくは床の中で眠れぬままの時間を過ごしていた。強い風が、安眠のため毎夜閉め切るシャッターを激しく叩く音が絶えず鳴…

【ぼくを滑り抜ける風──母と婚約者 ふたつの死(27)】

2022年4月28日⁡このところまた激しく泣き崩れてしまう日が増えている。今日もそんな1日だった。⁡調子が崩れかけた原因は、昨夜読んでいた本の序文だったと思われる。⁡⁡──悲しみは、故人と2人で癒すもの──⁡⁡そんな一文を目にした途端、床のなかで嗚咽…

【1400万人のなかのひとり──母と婚約者 ふたつの死(26)】

2022年4月25日⁡彼女の葬儀を終えて火葬場へ移動する際、担当して下さったドライバーの方が労いと同時に、驚きを伝えて下さった。⁡⁡「あんなに花で満たされた棺は初めてです」⁡⁡遺影と共に助手席に乗ったぼくにそう話しかけて下さったとき、しばらく続…

【彼女が荼毘に付された日──母と婚約者 ふたつの死(25)】

2022年4月25日⁡真の悲しみを知らずにいた蒼い時代には、上辺だけの言葉をいくつも吐いていた記憶がある。当事者になった今、痛切に思い知らされているのは、そんなことなど、到底できない、ということだ。⁡⁡──前を向く──⁡⁡この悲しみは、決して消えな…

【出棺の午後に舞う雪──母と婚約者 ふたつの死(24)】

2022年4月21日⁡母の死から一ト月後に起きた婚約者の急逝は、文字通りあまりに突然な出来事だっただけに、未だ強いショックと深い悲しみに囚われている。⁡今まさしく〈はれもの〉な状態のぼくはその自覚があるゆえなのか、それとも元来そうして生きて…

【亡き婚約者の百箇日──母と婚約者 ふたつの死(23)】

2022年4月19日⁡納骨式から戻って以来、ほとんど寝込んでいた1週間だった。⁡帰京直後にぼくのことを案じて集ってくれた友人の輪のなかで過ごした時間もあった。しかし、安心な時間があればあるほど、その輪のなかに彼女がいないことが強調されてしま…

【果たされたわが使命──母と婚約者 ふたつの死(22)】

2022年4月17日⁡また酷い抑うつ状態に陥っている。⁡彼女の納骨式に立ち会う間、亡くなった彼女のことを知る人たちに会えば、その時間は気が紛れるはずだった。ところが気づけば、その時間はぼくに、彼女の不在をより色濃く知らしめることになった。⁡⁡─…

【振り出し──母と婚約者 ふたつの死(21)】

2022年4月14日⁡この悲しみに、再び打ちのめされてしまった。⁡婚約者の納骨式に立ち会うにあたり、ぼくは期待を抱いていた。この悲しみを共有できる輪のなかで、今からおよそ90日前──危篤から火葬を終えるまで──に体験した奇跡のような時間が再び訪…

【むき出しになった真の悲しみ──母と婚約者 ふたつの死(20)】

2022年4月10日⁡彼女の納骨式に立ち会った。⁡この日、樹木葬が執り行われ、彼女の遺骨を大地へ埋葬した。⁡⁡──儀式は、遺されたものの気持ちを静めてくれる──⁡⁡いつか、遠い遠い未来から今日のことを振り返る日を迎えることができたら、この日が明らか…

【彼女が育った街で出逢った奇跡──母と婚約者 ふたつの死(19)】

2022年4月8日⁡母の喪失に備えて、グリーフケアや悲嘆に関する書籍を読み始めたのは、今から5年ほど前のこと。知識を蓄えておけば、予想できない悲しみを乗り越えるために役立つのではないか? そう考えて取り組んでいたことだが、同時に、絶えず頭の…

【やさしさという名のエール──母と婚約者 ふたつの死(18)】

2022年4月8日⁡一日も早くこの状況から抜け出したい──。⁡残された自分の人生を全うするために、強くそう願っていた。⁡しかし、そのためのエネルギーは、未だ一切ない。そんな状態で無理し過ぎていたのだろう。現実と理想のギャップに、完全に打ちのめさ…

【奇跡の時間のはじまり──母と婚約者 ふたつの死(17)】

2022年4月6日⁡亡くなった婚約者の納骨式が近づいている。⁡四十九日のころはまだ感染拡大が続いていて、予定が組めなかったとご家族から伺っている。誰よりも感染拡大を抑えたいと願っていた彼女のことだから、その時期に人を集めることを望まなかった…

【世界一幸運な男〈後編〉──母と婚約者 ふたつの死(16)】

2022年3月27日⁡退所手続きは、事務的に済ませればわずかな時間で終えられるものだった。しかし、多弁なぼくだから、こうして綴っているような、これまでの思い出や様々な気持ちの移ろいまでもお話しさせていただいた。⁡その時間はまるで、グリーフケ…

【世界一幸運な男〈前編〉──母と婚約者 ふたつの死(15)】

2022年3月27日⁡今年度のうちに、どうしても終える必要のある手続きをひとつ残していた。⁡⁡──退所手続き──⁡⁡晩年の母が暮らした特別養護老人ホームとの最後の手続きである。そのための連絡は2月中旬にいただいていたのだが、ちょうどそのころ、早逝し…

【真夜中の儀式──母と婚約者 ふたつの死(14)】

2022年3月25日⁡今日、空を見上げて想った。⁡⁡──遂に春がやってきた──⁡⁡この寒い冬にふたつの死別を体験したとき、ふと感じたことがあった。⁡⁡──春よ、早く来い──⁡⁡春が来さえすれば大丈夫。そのときすべてから解き放たれる──そう祈っていた。⁡しかし…

【最期の意志を叶える──母と婚約者 ふたつの死(13)】

2022年3月25日⁡喪失と向き合う時間は何かに似ている──母を喪って100箇日が過ぎ、婚約者の急逝から四十九日を超えた、未だ苦悶する最中、そんなことが頭をよぎった。⁡⁡──禁断症状──⁡⁡突如としてたち消えた関わり──それを克服するには、この状況に慣れ…

【死は忌むべきものではない】

2022年3月24日⁡昨日は極端な1日だった。⁡こんな状況の最中に、わが幸運を噛み締める出来事があったかと思えば、同時に、恩師の訃報が届けられた。今の気持ちに染み入る言葉を交わし合い、想像さえし得なかった穏やかな時間が過ぎた途端、恩師の訃報…

A moment of Marine Funeral for my mother

5th March 2022On 5th March in Tokyo Bay.The day is the same day as my parents’ wedding anniversary. #主夫ロマンティック #介護 #介護者 #介護独身 #シーズン10 #kawaseromantic #母 #特養 #看取り #川瀬浩介 #元介護者 #寡夫 #寡夫ロマンティック #シ…

【母の死を受け止めた日──母と婚約者 ふたつの死(12)】

2022年2月22日⁡「2」が並んだ日──今日は、来る母の海洋葬へ向けて、東京の西部にある会社窓口へ母の遺骨を引き渡す予定が組まれていた。⁡約束は午後だったが、自宅から距離があるため、午前早めに起床する計画していた。しかし、相変わらず体内時計…

【あの日の手の温もり──母と婚約者 ふたつの死(11)】

2022年2月19日⁡3度目のワクチン接種──副反応で2日間、寝込むことになった。レポートされている通りの症状が次々と現れた。発熱は一時、39度を記録したが、不思議と熱による身体のだるさや辛さは感じなかった。呼吸も正常で苦しさもなかった。一番…

【幼さという凶器──母と婚約者 ふたつの死(10)】

2022年2月15日⁡心ない言動に「案の定」、感情を揺さぶられている。⁡⁡──自分のこころの内を公にすること──⁡⁡それは少なからず、誰かを傷つけることになる──そう捉えられても仕方のないことであると、覚悟はしていた。しかしその覚悟は、現実を目の前に…