主夫ロマンティック

独身中年男子の介護録──母が授けてくれたこと。そして、それからのこと。

2017-11-01から1ヶ月間の記事一覧

【晩年】

2017年11月30日 冷え込みが厳しくなってきたこの頃、病院付添いの帰り道にふと視線を逸らすと、こんなに綺麗な紅葉がすぐ隣にあることに気づいた。 ──うつむき加減で歩いていたら、側にある美にさえ気づけない── そんな当たり前のことを、植物はいつ…

【無事でよかった──今日も、あの日も】

2017年11月30日 なんだかこうしてみると、イチゴのショートケーキに見える。 「歳を取ったら明るい色を着なあかん」 若い頃からよくそう口にしていた母。それに倣って、ぼくが服を選ぶようになってからも派手な色を纏わせている。 寒色系でも鮮やか…

【あといくつ季節を過ごせるだろう?】

2017年11月29日 昨夜は、どうにも咳が止まらず、よく眠れないまま朝を迎えた。 咳払いを繰り返しながら疲れた身体を起こして床から抜け出し、どうにか居間のソファーに腰掛けた。白湯をゆっくりと飲みながら、最近また拾い読みしている《137億年の物…

【夢中ということさえ知らずにいたあのころのように】

2017年11月28日 未だ微熱にうなされる午後、随分と久しぶりに抹茶入り玄米茶を淹れた。 この2年近くはコーヒー中心になっていたし、たまに味わう日本茶はいただき物の八女茶だった。それをぜんぶ飲み干して以来だから、いつが最後だったのか思い出せ…

【またも発熱】

2017年11月25日 朝、まもなく目覚めるであろうころ、浅い睡眠に切り替わってきたあたりから、眠りながら強く咳込み始めた。 ──また風邪、か?── 手洗いやマスクなど気をつけている方だと思うのだけれど…。 こんなときは、身体を暖めるに限る。 いや…

【いつかの気持ち】

2017年11月24日 時間にすれば僅か3分間ほどだが、母が暮らす施設に隣接したこの森を抜けて面会に行くのが最近の楽しみになっている。 森といっても当然、人の手によって造られたものではあるけれど、それが植物の放つ力なのか、そこをくぐり抜けるだ…

【数えきれない食卓の記憶】

2017年11月24日 まもなく日付も変わろうかという時刻…ようやく作り置きが終わった。いや、まだ大根が煮上がるのを待っているところだった…。 遂に、甜麺醤を手作りし始めてしまった。普段ほとんど使わない砂糖と赤味噌が余っていたのが理由だったが…

【マフラーは届くだろうか?】

2017年11月24日 数日前、ほとんど期待せずに渡してみた編みものセットだったが、なんと予想を覆して、結構な分量が編みあがっていた。もちろん試し編み程度の内容だったけれど、意外にも編み目もそこそこ綺麗に整っていて、驚いた。 「Hさんがやって…

【初めての内見──特養老人ホーム】

2017年11月22日 特養老人ホームの内見にいった。 ──知らないふりをしていた── いつかこうした日が来ると、どこかでわかっていたはずなのに。 でも、この日を迎えられたのは、それだけ母がながいあいだ元気でいてくれたことの証明でもある──それはと…

【乙女の時間】

2017年11月21日 この編みものセットを母を連れて買いに行ったのはいつだったろう? たぶん、ちょうど1年前くらいかな? 車椅子を押して好みの毛糸を選びに出掛けていったことを思い出す。 時間もあることだし、頭の体操のためにも何か手先を動かすこ…

【物心を置きに】

2017年11月20日 夕方、陽が落ちる前に母の面会に行こうとしていたのだけれど、昨日、ネット動画で耳にしてから気になったコード(和音)があったので、ギターを爪弾きながら確認していたら、案の定…。 足速に外に出るとすっかり辺りは暗くなっていた…

【明日のことは誰も知らない】

2017年11月20日 今夜は、細めの弦を張ったギターと戯れる──。 昨夜の練習では太めの弦を張ったギターを使った。僅かな違いでも弦全体のテンションは変わってくるから、やはり細いと押さえる力が少なくて済むので手には優しい。 最近よく聴いているア…

【前を向くために】

2017年11月17日 「どうするんだっけな?」 もうながい間、窓を磨く気持ちの余裕さえなかった。あらゆることに追い詰められ、ときにそれから逃れることばかりに注力しては、気づくと身近なことから疎かになっていた。 ──ガラスみがきとワイパーを買っ…

【母へ音楽の贈りもの】

2017年11月15日 ゆっくりとゆるやかに子供がえりをしている今の母に、何か退屈しのぎはないだろうか? 本はあまり読まないからいつも新聞ばかり届けていたけれど、 「そうだ!音楽はどうだろう?」 と今ごろ気がついて訊ねてみた 「譜面はまだ読める…

【安心の食卓】

2017年11月12日 Back to the Basic──。 母の不調が契機となり主夫ロマンティックと化して丸5年。ほとんどの家事をなかなかのハイレベルでこなしてきたゆえか、主夫的バーンアウトを味わっているこの頃、特に料理への探究心…いや意欲がなくなってきて…

【居心地のいい孤独】

2017年11月11日 ベルリンから戻ってちょうど1年ほど経った──。 わずか10日間の滞在だったけれど、あの街の肌触りはとてもよく憶えている。東京に帰ってきてから、どこかの街角でそれと似た感触を想い出すことがある。今日も母との面会に向かう道す…

【この森を抜けて──介護の日】

2017年11月11日 今日は歩いて面会に行くことにした。 先日、母が入所している施設の隣にある病院まで健康診断を受けに歩いていったのと同じ道順だ。片道30分ほどかかる見込みだったけれど、歩くテンポもよかったのか、予想よりハイペースで近づいて…

【現存するレトロ──時間という荒波を超えて】

2017年11月11日 果たして、このオーブンはいつから家にいるのだろう? ビルトイン式はもちろん、電子レンジやオーブンレンジさえ存在しなかった遥か昔から我が家を見つめ続けてきたこのオレンジ色の電熱式オーブンを、今朝、壊してしまった。 母は、…

【おかゆで労わる心と身体】

2017年11月10日 咳と熱がようやく出始めた1日。 ──おかゆが美味しい── このところの暴食で胃腸に負担がかかっていたことは否めない。おそらくそれが原因。 心身ともに労わるには、おかゆが一番。倒れる前に炊いておいたもち麦入り玄米を鶏や昆布の…

【夢に出るほど縁遠い──再び】

2017年11月10日 母が歩く背中を見つめている。 その速度になかなか追いつけない。 自転車も乗りこなしている。 買い物だってひとりで行ける。 ──これならまた家に戻って来られる── 育った街の街角を一緒に歩きながらそう思い浮かべた矢先、ぼくは空…

【真夜中の特訓】

2017年11月9日 午前3時間──アイロンがけの特訓、終了。 埃を立てたのか? それとも風邪か? 僅かに寒気もするゆえ、その両方か?…鼻水、頭痛に発熱傾向もあり。 生姜湯を呑んで暖まろう。 #主夫ロマンティック #介護 #介護者 #在宅介護 #介護独身 #シ…

【自分のためだけには贅沢過ぎた朝】

2017年11月8日 曇天の朝、午前8時──。 このところ気分が優れないのは、誰かを想って作られた食事から遠のいているからだ。 そう感じて、今日は朝から行動した。 平穏な暮らしと引き換えに、自由業であることの幸運はこうしたひと時にあるものだと、今…

【遅めの午後に】

2017年11月7日 13:30──午後、早々と西陽が射し込む台所で、遅めのお昼の支度を。 自家製大盛レッドカレー! (ついまた左利きシフトにしてしまう) #主夫ロマンティック #介護 #介護者 #在宅介護 #介護独身 #シーズン6 #kawaseromantic #介護者卒業間…

【或る定めを生きる】

2017年11月4日 Ryuichi Sakamoto: CODA──。 映画を公開初日に、しかも舞台挨拶までも見届けた経験は、今日が初めてだった。 ──CODA── タイトルが物語る通りの内容だと感じた。 かれこれ振り返れば三十余年、リアルタイムに追い続けたぼくにとっては特…

【文化の日の嗜み】

2017年11月3日 たぶん20年ぶりの網戸の張替えのための「練習」──。 南向きの大きなサッシ用の網戸を張替える前に、台所の小窓のものでテスト。 「業者のように、ピンっとは張れない」 と、若かりしころの挑戦で嘆いていたが、今回は上手くいった。し…

【鯖の味噌煮とレッドカレー】

2017年11月2日 俗に「ジャンク」と呼ばれる類いのものを半ば意図的に大量摂取していたここ最近の悪習からようやく抜け出し、今日も料理をひとりこなす。 出かける予定をキャンセルして励んだ甲斐あって、いつもどおり旨い鯖の味噌煮とレッドカレーが…