主夫ロマンティック

独身中年男子の介護録──母が授けてくれたこと。そして、それからのこと。

【停まっていた時を動かす──映画《土を喰らう十二ヶ月》から思い出したこと(1)】

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2022年11月11日

「1」が並ぶめでたい気分の日──今から十ヶ月前の「1」が並んだ日には、「果たして今日がめでたい日なのか?」と、自問自答を繰り返していたことを、今でもたびたび思い返す。

その日は、急逝した婚約者が遺した意志が叶えられた日だった。何も前触れもなく呼び寄せられた病院で、ご家族とぼく、そして医療チームがずっと寄り添い、苦しみ抜いて決断した先にあったのは、いま思えば、彼女が遺してくれた〈希望〉だったのかもしれない。今も決して割り切れることのない想いに苛まれることは多いが、その「割り切れない」事象の象徴として、真っ先に思い浮かぶものを想像すると、ほんの少しだけ気持ちが和らぐことがある。


──円──


割り切れないものとして最初に教わるのは、「円周率」ではないだろうか?


──命は巡る輪のなかにある──


この割り切れることのない感情が、その輪=円のなかでうごめいている。解のない問いに向き合い、その問いに自ら意味をもたらすこそが〈生きる〉ということならば、この苦しみもまた、生きている証に他ならない──そう、何の違和感もなく思えるのは、もしかしたら、自らの終を垣間見るときまで訪れることないのかもしれない。

《土を喰らう十二ヶ月》──この作品が映画化されることを知ったのはいつだったろう? たしか、あまりに強い悲嘆感情をどうにかしたいと、恐山へ向かうことを決めたころだったはずから、今年の6月ごろか? 「まだ半年近くも先か」とひとり遠い目を浮かべては、公開されるころにはどんな心情になっているか不安ばかりが募っていたことを今でもよく憶えている。

この一ト月以上の間、よく眠れない毎日が続いている。心理的要因が身体に影響を及ぼしていることは十分に考えられるが、主たる要因は、身体の問題──床に横になると背中、肩、首の尋常ではない凝りが発生し、数時間を費やし悶絶する──毎夜毎夜、そんな時間を通り抜けたあと、朝になって疲れ果て、ようやく寝入る・・・そんな状態に陥っている。

これまでは、たっぷり昼寝してなんとかバランスを維持してきたのだが、隣家の解体工事が重なって、昼寝して休息を補うことさえ不可能となった。解体の騒音よりも堪えたのは、常時、地震のような揺らぎが続いたこと──この二週間は、ほとんどまともに身体を休められないままだった。

そんな状態で迎えた公開初日の朝は、想像した以上の不調だったが、どうしても「1」が並ぶ日の今日の初日に見届けておきたかった。この願いを叶えようと、不調の極みを覚えつつも、夜の上映時間まで、できる限り身体を休めようと努めた。


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