主夫ロマンティック

独身中年男子の介護録──母が授けてくれたこと。そして、それからのこと。

2020-01-01から1年間の記事一覧

【孤独のラザニアで50歳を祝う】

2020年12月26日1日遅れのメリークリスマス。しかし世界は広い──日本時間26日14時現在、サンフランシスコではクリスマス・ナイトのクライマックス。それに、昼間の明るい時間にメリークリスマスというのも何だかいい気分だ。子供時代のクリスマ…

【久々に車椅子を押した日】

2020年12月15日この街に身体のメンテナンスに通うようになって、もう1年以上が経った。いつも通り、午後のゆるめの時間に治療を終えて、今日も日用品を買い求めに周辺を歩いた。30分ほどで用事を済ませたあと、ふと街の喧騒から離れたくなって、ひ…

【介護者生活8周年── 信じる・受容れる・自然に過ごす──無意識の決断】1/3

2020年10月21日 かつて母が過ごした介護老人保健施設に隣接する森のなかで、これを書き始めた。同じエリアにある、母のかかりつけの病院へ今年も健康診断の申し込みにやってきたのだが、2020年はこれまでとは勝手が違うらしい。感染拡大防止のためか…

【介護者生活8周年── 信じる・受容れる・自然に過ごす──無意識の決断】2/3

2020年10月21日 8年前のあの日、突然我が家に鳴り響いた轟音──そのとき感じた不安と恐れは今もはっきりと憶えている。音を専門とする身だけに、その異常な音の質感は、一瞬にしてぼくの想像力を掻き立てた。──かなり大きなものが落ちた音──何かが倒…

【介護者生活8周年── 信じる・受容れる・自然に過ごす──無意識の決断】3/3

2020年10月21日あれから8年──もう思い出せないほどたくさんの出来事があった。自分の身には、振り返りたくもない苦い経験までもが起こった。心を病み、何かに、そして誰かに依存し、自暴自棄になりかけては「これではダメだ」と己を鼓舞し、悶絶し…

【父の五十回忌──2020年、東京にて】

2020年8月4日49年前の今日、父が逝った。そのときのことをぼくは憶えていない。いや、憶えているはずもない。──生後8ヶ月──その日のことはおろか、父と過ごしたその8ヶ月のことさえ思い出せない。父に抱かれた写真を観ても、どんなエピソードを家族か…

【笑う門には福来たる──母の日2020】

2020年5月12日母が暮らす特別養護老人ホームは、例年、季節性インフルエンザの時季になると、館内での感染予防のため面会制限が行われる。今年はそれが、無期限で延長されている。当然の判断である。去年から、意識的に母との距離を保つようにしてき…

【卵ぬき手打ち生パスタ──料理が教えてくれたこと】

2020年5月10日2012年秋で──母の介護に直面して、これから食事をどう賄っていくかを考えたとき、自然と思ったことを憶えている。「ぼくが作ろう」それまで料理を習慣的には行ってはいなかった。けれどいつしか、衰えを見せ始めた母の傍で感じてい…

【それはまるで太陽のごとく】

2020年5月6日 「身体で覚えたものは不滅です!」そう思わず叫んでしまいそうな瞬間だった。30数年ぶりにやっても流れるように身体が動く様は、それはある種の戦慄に値する瞬間だった。ラジオ体操──実に偉大である。・初めてでもお手本を見ながら何の戸…

【サバイバルライフのための自前ロードマップ考──BURN or ALIVE】

2020年5月4日18時から日本政府による発表がある。そろそろ、今後どういう事態を想定していて、それらにどのように向き合っていくのか? いわゆる出口戦略的な展望を聞かせていただけることを願っている。完全収束または共存までの道のりには当然、いく…

【これからゆく道】

2020年5月3日「まっすぐ歩けるはずはない」山あり谷あり、さらに落とし穴あり──真当な教育も受けず、確かな後ろ盾もないまま、音楽、そして美術の道に進む選択をしたぼくが歩んできたのは、そんな道だ。──あれから30年も経つのか──もしかしたら、道さ…

【この恐れは何かに似ている】

2020年5月1日令和元日から1年が経った。こんな日常がやってくると予想さえできていなかったのは、日々の暮らしに追われていたせい──その事実を反省しながらも、計り知れない恐れに押しつぶされそうな今、改めて自らに言い聞かせている。「この危機に…

【世界一平和で安心安全な場所 ──Jくんとラザニア】

2020年4月10日あれは確か、小学三年生か四年生のころだった。ある放課後、仲良くしていたJくんのお母様に声をかけられた。「ラザニア食べに行きましょうよ」ラザニア・・・聴いたことのない響きだった。当時は昭和50年代半ば。今のように「イタリアン…

【我が愛器からの忠告】

2020年3月27日3月21日──その日の夜は意気揚々としていた。厳戒態勢のなか行われたあるリハーサルは順調に進み、ようやく音楽の全体像が見え始めていたからだ。帰宅後、予定どおりアサリのパスタを作り満足な夕食をいただくことができたのも、気分が高…

【自然から学ぶ──再び】

2020年3月26日案の定、混乱時にかならず起きる「いつかみた様相」を呈してきている。──他者の言動を批判する──人が会うことを制限されているにも関わらずそれが目につくというのは、まさしく現代の象徴である。今こそひとつになるときだというのに…。…

【今日という名の贈りものを再び】

2020年3月25日「この危機を乗り越えて生き延びることができたら何をしようか?」風水的には全く勧められないらしい西陽の射す台所でコーヒーを淹れるなどしてひと息つきながら、近ごろ、よくそんなことを思い浮かべる。ここはぼくのお気に入りの場所…

【チーズケーキを頬張り「いまこのとき」を想う】

2020年3月8日この冬は、ずっと調子を崩したままだ。昨晩秋の出張中、突如襲われた呼吸困難──主治医によれば、肺の音を聴く限り肺炎や喘息ではないという。逆流性食道炎による食道への胃酸上昇で刺激され気管支炎を起こした・・・と考えられるとのこと…

【母の予言】

2020年2月5日「人生やり残しなし」被介護者になってから、母は幾度となくこの言葉を口にしていた。月に一度行われる介護サービス担当者会議では、今月の目標を訊ねるケアマネージャーにいつもこう言い放っていた。「やりたいことはぜんぶやった」ぼく…

【母、誕生会──87歳】

2020年1月20日母の誕生日当日である1月17日に予定されていた誕生会は、ぼくの急用により延期された。──明日のことは誰も知らない──「今」という瞬間しか確かなことはない──母との日々を過ごして、そう強く意識させられてきた。ゆえに延期すること…