主夫ロマンティック

独身中年男子の介護録──母が授けてくれたこと。そして、それからのこと。

2018-01-01から1ヶ月間の記事一覧

【前進】

2018年1月27日 夕暮れどき、まるで予定されていたような隙間の時間を得た。 ──何をするのが有意義か?── そうだ、せっかく近くに来たんだから、父の墓参りに行くことにしよう。年末に向かったときは陽が落ちてしまって墓石を磨くのが不十分だったから…

【恋?】

2018年1月26日 最近の母は、少しだけ発する言葉が変わってきた。 「ここに居ると楽しいからすぐに時間が経つ」 退屈でやることがないとボヤいていたころもあったが、そう思うと、これは実に大きな変化だ。 よく観察してみると、母の周りにはいつも誰…

【こうすけさん】

2018年1月26日 毎日窓を開けて空気を入れ替え、仏壇に手を合わせるだけになって久しい母の寝室からみた夕暮れ時の西の空。陽の当たらない場所は今も残雪が目立っている。 夜になって、仕上がった洗濯物を届けるため面会にいった。就寝時間も近づいて…

【母を初めておんぶした日】

2018年1月25日 母の帰宅前訪問と併せて新規介護サービス二社との契約を終えた15時過ぎ、ようやく食事の時間になった。 生活スペースである二階に上がれるかどうか? わずか数日の帰宅とはいえ、その間に通院やデイサービスに出かけるため、毎日昇り降…

【丁寧に、そして静かに】

2018年1月24日 27時──。 母の衣類までアイロンがけをしたかったけれど、自分の分だけで力尽きる。 ──どんなときも、親はこうして寝る暇を惜しんで、夜なべしてくれていたんだろう── もうそのまま眠りそうになっていたが、小一時間ほどネットを彷徨い…

【母、帰宅前訪問、前夜】

2018年1月24日 だいぶ溶けたけれど、未だに置き場所に困るほどの残雪。 ──破壊と再生を繰り返し筋肉は鍛えられていく── 先の除雪による影響で喰らった裏腿と臀部の痛みを感じながら、怠けた身体にはきっといい影響があると信じて、黙々と雪を掻く──。…

【とうに限界を超えているのはよくわかっているのだけれど、誰かに頼めることじゃないこともまた痛いほどよくわかっている】

2018年1月24 もしかしたら、今年に入って初めての作り置きだろうか? 今日は必死に主夫の日──母の面会に行くために、お借りしている駐車場の雪かきから始まって、明日に予定されている母の帰宅前訪問のため、家の前も再び除雪。終わるなり洗濯機を回…

【顔は口ほどに物を言う?】

2018年1月24日 深夜、自宅にて。かつては母専用だった洗面台の前にひとり佇む──。 明かりをつけることもなく、夜、暗い中トイレに立つ母を案じて取り付けたセンサーライトが、今夜も青白く灯っている。 ──鏡に映る自分の姿は左右が反転した虚像── 本…

【新しい出逢いに巡り会うために】

2018年1月23日 昨日、浜辺の街にて──。 この風景を観て、4年前の大雪の日にも、この街にいた記憶が蘇ってきた。 ──ハンマーヘッドスタジオ 新・港区── 横浜港を臨む海沿いにあった巨大シェアスタジオに入居して、自身が求める美について見つめていた…

【大雪の夜に】

2018年1月23日 朝は起きられそうにないから…近所迷惑にならないように、そぉ〜っと雪かきを──。 まずは避難路を確保。次いで、車のための導線確保のための除雪──。 朝になってこのままだと、ごみ収集車も介護施設への送迎車も、そして自分の車さえも…

【fatigue】

2018年1月22日 疲れているのは、年始の喧噪にまみれていたからだけではないらしい。 介護者生活も6年目に入った。この1年、自宅で母を看ることが難しくなって直接世話をすることも少なくなったけれど、介助の負担が減っても何かを解決してくれるわけ…

【誰かに話したくなる出来事】

2018年1月20日 午後、母の散髪をしに施設へ向かった──。 日常の介助を施設にお願いしているため、ぼくにできることが、実はもうほとんどない。今では、節約のために自宅で続けている洗濯と通院の付添いくらいになっている。 施設に定期的に入る理容/…

【最も苦しいときに大きな決断をしてはいけない】

2018年1月19日 35年のそのキャリアのほとんどをリアルタイムで聴いてきた方から、思わぬ形で介護の話題を耳にした今日は、案の定、何とも言いようのない気持ちに支配されたままだった。 来月の母の一時帰宅に向けて、担当ケアマネジャーが着々と準備…

【母の誕生日に】

2018年1月17日 1月17日──母の誕生日。今日で85歳。 「誕生日、おめでとう!」 「えぇ? 今日やったっけ? 忘れてたわ」 いつもの調子で始まる面会は、会話になるときもあればならないときもある。最近は顔を合わせると 「来てくれてありがとう」…

【ぼくが母のもとに授けられたわけ】

2018年1月11日 昨日の午後、森を見渡せる席を陣取って、老健/居宅2名のケアマネジャーとの面談が設けられた。この先、二タ月ほどの期間について、母の帰宅スケジュールおよび介護支援サービス選択を確認しあった。 場の空気といい、職員の皆さんの雰…

【肌触り──その場とそこにいる人たちが放つ空気】

2019年1月9日 特養老人ホームへの入居希望を出すにあたってそろそろ目を通しておくべきかと、手に入れたままだった本を開いた。 昨年亡くなられた日野原医師の解説を先に目を通すと、一言一句に深い同感の意を覚えた。寝床に移って早速本編を読み進め…

【Nくんと空豆】

2018年1月8日 空豆を皮ごと食べると美味しいと教えてくれたのは、小学校のクラスメイト・Nくんだった。 お家で八百屋さんを営んでいて、遊びに行くとオヤツに色んな野菜を食べさせてくれたけれど、今でも憶えているのは、空豆のことだけ。 茹であげら…

【忘却の砦】

2018年1月8日 いつ以来の雨だろう?── 。 見事な曇天の空を見上げながら、引出物に頂いた真新しい紫色の傘を差して、夕暮れ前、面会に向かった。 ──スポーツ新聞全紙── 正確には5紙だが、星野仙一が一面に上がっていたものすべてを差し入れた。施設に…

【二度とは来ないそのときのために】

2018年1月8日 三層に連なったグラデーションの夕焼けを見るのが好きだ。最近は、この景色を、施設の東の窓辺から、母とぼんやり見つめている。 ──なんの感情も覚えないひと時── こうした瞬間もまた、人は自ずと〈幸福〉を感じているのだろう。 厳しい…

【この呼吸が尽きるそのときまで】

2018年1月7日 この季節らしい澄んだ空に、東へ向かってゆっくりと雲が流れる朝、寒さに肩をすぼめながらひとり歩いた──。 朝陽を浴びて映し出された月が西の空に浮かんでいる。その様子をぼんやり見上げていると、このところよく思い浮かべていること…

【音楽のちから──ベイビー銀ちゃんたちから捧げる詩】

2018年1月8日 週末は面会が混み合うのであまり足を向けなかったが、そろそろ衣類が足りなくなるころだったので、陽が落ちる前に施設へ向かった。 到着すると大広間はがらんとしていた。母も居室で寝ているのかと思ったが見当たらない。職員の方に訊ね…

【顔も名前も知らない君へ】

2018年1月4日 大きな袋いっぱいに、母の洗濯物が今夜も仕上がった。しっかりアイロンをかけて整えるのは骨の折れる作業だけれど、整った様は無条件に美しい。 しかし、こうして家事に熱中している間、ふとした瞬間に現実を考えてしまう。 ──この時間、…

【博士の愛した数式】

2018年1月4日 ずいぶん前に手に入れたままだった小説を、いよいよ読むときがきたらしい。 ──言葉がでない── 序盤から引き込まれ、飽きるところは一切なかった。柔らかで淡い心理描写と純粋無垢な数学の神秘と美をモチーフにながら、この世の理りと人び…

【束の間のデート】

2018年1月3日 正月三が日──この時季らしさを表象する静けさを映したかのような見事な快晴の空が、連日、東京に広がっていた。 眠れぬ夜を過ごしようやく起き上がった午後、この空模様を確認して、この一年、習慣化している瞑想に入った。 目を瞑り、呼…

【困った。実に困った。】

2018年1月3日 いや、これはむしろ、「感激」というのが相応しいのかもしれない。 昨夜、ひっそりと炊き上げた十六穀米入り玄米…これが、あまりに旨いのである。 凡庸で退屈な食事の席では他のことに気を取られがちだが、この茶碗の前では目線を、意識…

【熱狂は心のうちにだけあればいい】

2018年1月3日 発熱〜咳〜インフルエンザ〜咳──。 11月下旬からおよそ一ト月以上も風邪にまつわる症状に見舞われていたため、この2年ほどでせっかく習慣化したコーヒーの嗜みが滞ってしまった。 三が日の静けさを噛みしめるようにして、今日からまた、…

【真夜中の土鍋米、6合半】

2018年1月3日 未明の真夜中に、米を炊く──。 「玄米にもち麦」という組合せが最近の定番になっていたが、今夜はだいぶ久しぶりに十六穀米を混ぜた。この赤飯のような色味が着いた仕上がりは、実に懐かしい感じだ。 「業務用」と謳われた十六穀米は、か…

【(心地よい関西弁で聞く)来てくれて、ありがとう】

2018年1月2日 こじらせた風邪も癒えてきたので、今日はいつもの森を抜けて母に逢いにいった。 「今日も来てくれるかねぇ…と話されていたんですよ」 部屋に入るなり、スタッフの方がそう声をかけて下さった。家族や子供がいたりすればこうもいかないだ…

【20,000回の奇跡】

2018年1月1日 目を閉じて、再び目を開く ──瞬きひとつ── 息を吐いて、もう一度空気を胸いっぱいに吸い込む ──呼吸ひとつ── それぞれ1日に2万回に迫る数を繰り返すと言われる「瞬きと呼吸」──。 当たり前のように、無意識に行っているそれらの活動も、…

【面会はじめ──2018年元旦】

2018年1月1日 昨日に続いて、元旦の無事を祝うべく、母に逢いに行った。 今日も元気に和かに、いつもと変わらぬ笑顔を浮かべていた母に、新年の挨拶を。 「今日は元旦だよ。挨拶しないと」 「えっ? 何やったっけ?」 そう言って、母はまた顔をくしゃ…