主夫ロマンティック

独身中年男子の介護録──母が授けてくれたこと。そして、それからのこと。

2018-03-01から1ヶ月間の記事一覧

【出航】

2018年3月31日何度かよったか思い出せない場所が、今夜で幕を閉じる。──BankART Studio NYK──横浜にあるオルタナティブアートスペース=BankART1929が管理する施設だった。日本郵船の倉庫跡だった場所をお借りして、さまざまな活動を展開してきたチー…

【音楽がそばにいてくれるから】

2018年3月31日16時──新作パフォーマンスのための音楽、初稿=全40分が完成した。──こわかった──家族・人生・命──そのテーマは、考えれば考えるほど深みにはまり、何度も闇の淵を覗き込むことになった──そんな時間の渦に飲み込まれながら、この、望ま…

【解放】

2018年3月29日早朝、いつもの窓辺から、朝陽を背に染まる満開の桜を眺める。──変化と刺激のある暮らしを──表を歩くことが難しくなった母を車に乗せて、近くまで桜を観に出かけたことを思い出した。去年はこの時期ずっと入院していたから、あれは2年前…

【新しい視点】

2018年3月28日祖母は惚けているのではなくて、違う時間軸にいるらしいと、私は思っていた。かつて過ごしたおびただしい時間が同時に存在する、静かな現実のなかに祖母はいた。《だれかのことを強く思ってみたかった》角田光代 佐内正史(集英社文庫)…

【家族というテーマ】

2018年3月28日3年前のあの日々よりも苦悩する制作期間が訪れるだなんて…。「家族」というテーマは、今のぼくには抱えきれないのだろうか?#主夫ロマンティック #介護 #介護者 #在宅介護 #介護独身 #シーズン6 #kawaseromantic #介護者卒業間近 #母 #…

【幸運はとめどなく】

2018年3月27日こんなときでも、腹が減る──。つまり、これは、たいした問題じゃないということなのかもしれない。いや、食欲を満たすことによって、苦痛を紛らそうとしているのかもしれない。いずれにせよ、こんなときでも、確かに腹は減るものだ。こ…

【他には何もいらない】

2018年3月27日だれかの手でふれられること──。(エリザベス・キューブラー・ロス/デーヴィッド・ケスラー《永遠の別れ》より) #主夫ロマンティック #介護 #介護者 #在宅介護 #介護独身 #シーズン6 #kawaseromantic #介護者卒業間近 #母 #老人保健施…

【その瞬間】

2018年3月27日ここ数年、いつ訪れるかわからないその瞬間に備えるべく、様々な準備をしてきた。こうした本に目を通すことも、その一環。「まえがえき」を読み終えた瞬間、まさか嗚咽するとは思わなかった。急激に「今」という時から遠のき始めた母を…

【ぼくはここにいる】

2018年3月26日言葉では言い尽くせない恐怖に苛まれている。何をしたって、この恐怖から逃れることはできない。ただ唯一、その痛みを和らげることができるとしたら…。──目を逸らさず、今と向き合う──どんなときも、それしか方法を知らない。いくら狂乱…

【幸運はずっとそばにある】

2018年3月24日絶え間なく訪れるのは、空虚さだけではない。今夜もまた、どこからともなく、メッセージが届いた。──ぼくの心のざわめきを察知しているかのように──連絡がくるのは、久しぶりだった。それだけでは足りない気がするけれど、思い浮かぶの…

【あの日この日】

2018年3月24日組織に属してこなかったぼくにとって、春はもう、出逢いの季節ではない。当然、別れの季節でもない。けれど、春にはなぜか、振り返りたくなる出来事がたくさんある。そんな記憶の断片を象徴的に彩るのが、桜だ。芽吹くたびに、花を咲か…

【抑えられない気持ち】

2018年3月23日季節の変わり目のせいに違いない。このところ気持ちのざわめきが収まらない。さらに現在、制作真っ只中のため、「丁寧に暮らす」というミッションからも遠のき始めている。制作中はそのことで頭がいっぱいで、他のすべてのことが手につ…

【森山開次《サーカス》──再演に向けて】

2018年3月22日3年ぶりにここに帰ってきた。同じメンバーで同じ作品がこの場所で再演できること──とても光栄であり、嬉しくもあり、誇りに思う。初演当時、母は既に長時間歩くことが難しくなっていて、ぼくが車椅子を押して一緒に鑑賞した。あの日が、…

【大人は社会の模範たれ】

2018年3月22日午後、母が入所している介護老人保健施設でコンサートがあった。入所者の方を中心にした…と伝えられていたが、その方は元々、日劇で歌手をされていたそうだ。バンドのサポート陣もまたプロフェッショナル。ジャズスタンダードを中心にし…

【正気と狂気の狭間で】

2018年3月21日小雪が散らつく春分の日──。ひと気のないこの家の中でひとり、頭のなかから離れなくなった音を紡いでいる。──待ちわびていた音楽が舞い降りてきた──問題は、この今の感情にどこまで向き合えるか? そして、完遂するまで、ぼくが耐え切れ…

【家族の太陽】

2018年3月20日母のケアプラン作成のためのサービス担当者会議に出席した。母の現状をこの目で確認し、この先、どうサポートしていくかを検討する場である。母の状況は、先にケアマネジャーから伝えられていた通り、脚力、認知力含め、この2週間ほどで…

【家族のメロディ】

2018年3月19日家族──。家族──。家族──。家族をテーマにした作品を手がけることになった途端に、そのことばかりが身の周りを埋め尽くし始めている。晩年を迎えた母を見つめながら家族について考え、酒場に出かけて語れば、顔馴染みの店主や常連さんら…

【pureness】

2018年3月17日かれこれ知り合ってから10年にもなるアーティストの結婚のお祝いに横浜まで。ぼくは年齢に関わらず、「さん付」で作家仲間を呼ぶことにしている。それは、相手に対して敬意を払っているという気持ちの表れであることはもちろんのこと、…

【甘えたっていい】

2018年3月16日先の静岡出張中に報告が届いた母の義歯破損の件──その修復のため、今日は遥々、母が30年お世話になっている横浜の歯科医院まで付き添った。通常、行きは車で1時間、帰りは渋滞に巻き込まれて2時間はかかる道のり。1番心配なのは、母の体…

【幸運の証】

2018年3月15日友人夫妻のお祝いに駆けつけた夜──。たくさんの仲間たちから祝福される様子をみて、自ずと嬉しくなる自分がいた。きっと、こんなに愉快な毎日を築き上げるのは並大抵のことじゃない。でも、それが叶えられるのも「ふたり」がいるから──…

【選択──今すぐ実行できる何よりも容易い願い】

2018年3月15日笑いに満ち溢れた再会の夜を越えて──ひとりの時間に戻ったあとのギャップに耐えかねている。迎えた今日の夕暮れ、夕陽に染まった台所の様子が目にとまるのは、この5年半の間で何度目だろうか?──望んだ静けさに包まれている──この家のな…

【大切な君へ綴られた物語】

2018年3月15日実に些細なことなのかもしれない。それでも、これは紛れもなく、ここ最近続いている「引きのちから」が影響しているに違いない。先の静岡からの帰り道、乗るはずだった新幹線が停電によって運行停止となった。──こんなトラブルに巻き込…

【幸運に抱かれて】

2018年3月14日午後、母の特別養護老人ホームの面談が行われた。この面談をもって入居が確約されるわけでも、いつまでに入居できる保証があるわけでもないのだが、気分は、面談が決まったころから、ずっとざわついている。身支度を整えて家を出ると、…

【幸運であること】

2018年3月9日あの日の夜、また闇に沈みそうになっていた。考えても仕方ないことは考えないように努めてきたけれど、選択を迫られたら、考えるほかない。しかしどんな選択をしようとも、どこかに後悔は残る。──だから肝心なのは、選択したあとの日々──…

【だれかおしえて】

2018年3月7日先月に続き実施された2泊3日の母の一時帰宅は、今回も何事もなく終えることができた。万全の体制で準備してくださった全関係者に、感謝しきりだ。午前中に母を介護老人保健施設へ送り届けた。夜中に面会に行くことが多かったからか、梅の…

【次があると信じて──またね】

2018年3月7日次に逢うまでは、これが最後──。いつだってぼくは、そう思い浮かべながら、「またね」と口にしている──次が必ずあると信じて。そんなぼくの心の揺れを母は察したのか、甘いもの満載の朝食を終えると、珍しくぐずり始めた。「施設に帰りた…

【最後の晩餐】

2018年3月6日2016年の秋、ミラノで本物を観た。英語のタイトルで”The Last Supper”──。イタリア語で”L’Ultima Cena“──。日本語で綴られた《最後の晩餐》という響きが、もっともこの作品の色気を表現し尽くしているように思えた記憶がある。何事も、そ…

【ありがとオムレツ】

2018年3月6日母へ。ありがと。#主夫ロマンティック #介護 #介護者 #在宅介護 #介護独身 #シーズン6 #kawaseromantic #介護者卒業間近 #母 #老人保健施設 #入所中 #特養 #入所準備 #男の料理 #料理男子 #料理中年 #オムレツ #ありがと #川瀬浩介

【鼓動はいつからこんなに力強く脈動するのだろう?】

2018年3月6日早朝5時──目覚ましの音で目覚める。つまりそれは、昨夜も母は一度も目覚めることなく夜を過ごしたらしい、ということになる。一度も睡眠を邪魔されなかったのは助かるが、なんだか嫌な夢を見た。──ギターがなくなる──ギター合宿にでも向か…

【マーラーのアダージョとカジキマグロとシメジのアラビアータ】

2018年3月5日先月の一時帰宅からおよそ3週間。母の食は、また細り始めている。前回の経験を踏まえて、今夜はだいぶ少なめにしてみたけれど、途中…いや、だいぶ序盤で「もうお腹いっぱい」と、皿ごとぼくに差し出した。無理に食べさせるつもりはない。…