主夫ロマンティック

独身中年男子の介護録──母が授けてくれたこと

【安心の食卓】

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2017年11月12日

 

Back to the Basic──。

 

母の不調が契機となり主夫ロマンティックと化して丸5年。ほとんどの家事をなかなかのハイレベルでこなしてきたゆえか、主夫的バーンアウトを味わっているこの頃、特に料理への探究心…いや意欲がなくなってきている。

 

この1年、入退院等を繰り返して母が不在だったこともその理由のひとつだろう。

 

 

──作る目的がない──

 

 

母はことあるごとに口にしていた。

 

 

──「自分のためだけなら料理はせん」──

 

 

その気持ちが今ではよく想像できるようになった。

 

こんなときは、初心に戻るがいい。そう思って今日は早朝から台所に立った。

 

母が高齢になってきたころから、ぼんやり考えていたことがある。

 

 

──「このレシピを引き継いでおきたい」──

 

 

それがまさか、あんな出来事が引き金になろうとは、全く想像だにしなかった。

 

ある秋の日の正午前、母は自宅内で転落事故を起こして頭部をコンクリートの床に強打した。在宅だったぼくは、これまで聴いたことのないほど大きな物音に戦慄して、なかば覚悟を決めて母のもとに駆け寄った。

 

台所の床に横たわっていた母は微動だにしない。問いかけには応答するも、意識は朦朧としている。そのまま救急搬送され入院。脳震盪という診断だったが、病室へ運ばれた際は口もきけず、頰に触っても感覚はなさそうだった。

 

幸い、翌日には意識も感覚も戻り、相変わらずの調子でよく喋り出したので一安心だったが、1週間後、退院してから次々と歯車が狂い始めた。

 

止まらないめまい…それを抑えるための薬が合わずさらなる不調を来し…そんな状況下での自宅療養中、横になっていたソファーから転げ落ちて、反射的に手を着いた際に手首を骨折してしまった。

 

 

──全治2ヶ月──

 

 

それが、主夫ロマンティック誕生のきっかけである。

 

 

最初に教わったのは、食卓によく出てきていたぼくのお気に入りの三品。

 

 

──里芋の煮物・茄子の肉味噌炒め・鶏肉と野菜のトマト煮──

 

 

買物に一緒に出かけて食材を選んで、調理方法を伝授される…材料の切り方から手ほどきを受けたけれど、初めから手取り足取り、という感じではなかった気がする。普段の食卓で、味付けや材料、調理方法のことなど、よく話題にしてくれていたからだろう。食材を全くダメにしてしまうような大きな失敗はほとんど経験せずに済んだのは、きっとそのお陰。

 

今朝、手を動かしながら、教えてもらった日のことを思い返していた。

 

 

──「安心の食卓を守りたい」──

 

 

その想いから始まっていたに違いない。ここにいるときだけは、すべてから守られている。

 

どんなに嫌なことがあっても、家に帰って食卓に付くと、何があったのかさえ聞かずに、母がそっと食事を差し出してくれる。

 

 

──「ほら、おたべ。これ、あんた好きやろ」──

 

 

そんな風にして──。

 

 

そのせいだろう。食事の席で仕事の話や日頃の愚痴、着地点のない議論や身のない噂話はしたくない。

 

 

──ここは、そのための場じゃない──

 

 

ただひたすらに、愉快な話をしたらいい。話題がなければ耳を澄まして、目の前の食事に集中すればいい。

 

 

だってこれは、あなたを想って作られた料理なんだから。

 

 

何より大切なことを語らずして教えてくれた母へ──。

 

ありがとう。

この想いをできるだけ多くのひとたちへ伝えていきます。

 

 

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