主夫ロマンティック

独身中年男子の介護録──母が授けてくれたこと

【抑えられない気持ち】

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2018年3月23日

季節の変わり目のせいに違いない。このところ気持ちのざわめきが収まらない。

さらに現在、制作真っ只中のため、「丁寧に暮らす」というミッションからも遠のき始めている。制作中はそのことで頭がいっぱいで、他のすべてのことが手につけられなくなる。

料理も、母の不在が続く中、自分のためにはする気も起きず、今では座って食事をすることさえほとんどない。せめて簡単なものだけでも、と、ペペロンチーノくらいは作ってみるけれど、美味しく仕上がれば仕上がるほど、虚しくなる。


──自分のために、セロリとパセリのみじん切りを加える必要があるか?──


香り立つパスタを立食いで頬張りながら、そんなことばかり考えてしまう。

この家のなかの静けさに耐えかねていることも理由かもしれないのだけれど、このところは掃除も放棄しがちになっている。


──乱雑な環境の方が空虚さを埋められる──


無意識にそんなことを思い浮かべているのだろうか? といっても、洗濯物をたたまないままにしたり、食器を貯めてから洗うといった程度だけれど、たったそれだけのことで、悪循環に陥っているようにも思える。

今夜、溜まったままだった母の洗濯物を整理して、施設へ届けた。

最近、少しだけ、母の面会から脚が遠のいている。


──顔を合わせるのが苦しい──


この時間があることの幸運──そうどんなに言い聞かせても、揺れる気持ちをコントロールすることができない。

いまぼくにできることは、そんな心情を悟られないようにすることだけ。


──道化を演じる──


「周りが知るぼく」は、きっとこんな感じだ──。

それが、さらに余計に、自らに負荷をかけてしまう。

そんな仮面の向こう側の気持ちが伝わってしまったのか、母の義歯が、また折れてしまった。

その報告を受けてから、母が休んでいる居室へ向かった。

すでに寝入っていたけれど、ぼくがカーテンを開けた音で目を覚まし、開口一番、伝えてくれた。

「来てくれて嬉しい」

聴き馴染んだ、関西弁のイントネーションだった。

喜びを伝えられて苦しくなる──この感覚は、いくつか覚えがあるような気がした。


──別れのとき──


もう、本当にいよいよ、ぼくのなかで、覚悟ができたのだろうか?

花粉の影響か、突然、左眼の目頭が異常に痒くなる時間がある。今夜も母の目の前で、堪え切れない痒みに襲われた。それを言い訳にするには、とても都合がよかった。面会を早々に切り上げ、足早にエレベータへ駆け込んだ。ドアが閉まると、今の、自然な自分に瞬時に戻れる、独りを味わうにはちょうどいいサイズの小さな空間だった。

1年後、きっと何かが再び襲いかかるような予感がある。ぼくは無論、預言者ではないけれど、こういうときだけは、能力が呼び覚まされることが多い。

すべてを先回りして、先手を打っておきたい。こんなざわめきに陥っても滞りなく役目を遂行できるように。


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