主夫ロマンティック

独身中年男子の介護録──母が授けてくれたこと

【だれかおしえて】

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2018年3月7日

先月に続き実施された2泊3日の母の一時帰宅は、今回も何事もなく終えることができた。万全の体制で準備してくださった全関係者に、感謝しきりだ。

午前中に母を介護老人保健施設へ送り届けた。夜中に面会に行くことが多かったからか、梅の花が咲いていたことに、今日、ようやく気づいた。思えば、こちらにお世話になったのは、去年の5月末から。梅も桜も終わった、初夏のころだった──ここで芽吹いた花々を観られるのは、今年で最後になるだろう。

いつもの居室に母を送ったあと、ケアマネジャーと1時間ほどの面談があった。議題は、来週に迫った特別養護老人ホームの入居面談についてと、それを踏まえた今後のケアプランについて。特に、今日、指摘のあった母のリハビリをどうしていくかに関しては、その決定をぼくが下す必要があり、また頭を悩ませることになってしまった。

母のリハビリ態度が意識散漫なのは、今に始まったことではない。病院へ通ってのリハビリも、自宅でのリハビリも、入院中も、言われたままにやってはいるものの、集中している様子があまりない。

自宅復帰をお互いに必死で願っていたころは、ぼくからもハッパをかけていた。


「家に帰りたい! そうアピールしないと、リハビリ担当者も気持ちが入らないじゃない?」


その助言を素直に受け止めてくれたのは、もう1年半も前のことだ。今でも諦めず、この瞬間の会話も忘れてしまう母に、何度も何度も、繰り返し繰り返し伝えているけれど…届くことのない宙に浮いたままの想いをただ見つめているのは、どれだけ経験を重ねても苦しさばかりが募っていく。


──愛しい人を失ったときと同じように──


この一ト月の間にも、母の体力は、確かに衰えているように感じた。寝室のベッドから居間の椅子へ移動する際に介助すると、その衰えようがよくわかる。脚力は、支えがないと立っていられない状態。腹筋も益々衰えてきて、背もたれがないと座ってもいられない。


──ただ座ってテレビを眺めているだけの時間──


それも、さほど楽しそうな様子は、ない。


選択を迫られるとき、絶えず問うてきたことがある。


──やれることは、すべてやったのか?──

──その選択は、後戻りできる選択なのか?──


後悔だけが残る──それが介護者というもの。

この5年半という時間のなかで、身にしみて思い知らされてきた。

母に永続的なリハビリを与えることは、かえって母を苦しめることにならないだろうか?

自分の脚で立つことが、人らしい暮らしを支えることには違いない。


──たとえ一歩でも、自分で動ける脚力を残す──


その願いを伝えられたとき、心が揺さぶられた。


──何が母のためになるのか?──


だれかおしえてほしい

母の明日を見通せるなら

ぼくの選択は間違うことはないと


苦しさあまって、今朝まで母が過ごした居間のソファーに身体を沈めた。花瓶に移し替えた結婚記念日祝いの花が、今夜もやけに甘い香りを漂わせている。

逃げ出したくなったときは、どんなときも眠気が差し込んでくる。


──そっと目を閉じる──


眠ることしか、逃れる術を知らない。


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