主夫ロマンティック

独身中年男子の介護録──母が授けてくれたこと

【最後の晩餐】

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2018年3月6日

2016年の秋、ミラノで本物を観た。

英語のタイトルで”The Last Supper”──。
イタリア語で”L’Ultima Cena“──。

日本語で綴られた《最後の晩餐》という響きが、もっともこの作品の色気を表現し尽くしているように思えた記憶がある。

何事も、それが「最後」になるかどうか、誰にもわからない。たとえば、揺るぎない強固な決別の決意があったとしても、また次の機会が訪れることがあるかもしれない。

それはすなわち、こういうことだ。


──最後になるかどうかは「結果」だけが証明する──


今夜、自分でもよくわからない間に、ぼくはシュウマイを作っていた。しかも、初回に大失敗したというのに、2回目のチャレンジをしていた。母の大好きなパスタにするつもりだったのに、デイサービスから母の帰宅を待つ間、自然に手を動かしていた。

仕上がりは、上々だった。連絡の手違いでデイサービスで夕食を食べてきた母だったが


「おいしい美味しい」


そう何度も繰り返し口にして、ときには手づかみで食べたりしながら、楽しそうに食べきってくれた。

付け合せに即席で拵えたほうれん草のおひたしは、施設の指導通り、母が嚙み切れるように小刻みにした。

物語は、いつもこんな風に、そっと終わりを告げるものかもしれない。今夜も2人で、かつて数えきれないほど過ごした食卓を過ごすことができた。特別なことは、何もいらなかった。


ただ、ひとつだけ変わらないことがある。


──次にまためぐり合うまでは、これが最後──


だからぼくは、次を信じていうのさ。


──またね──


明日から、介護老人保健施設へ再入所する。その1週間後、母の姉にあたる叔母の命日に、特別養護老人ホームの入居面談が予定されている。今の母は、そのことについて、何も感じていない。

もしも「何も知らないフリ」をしてくれているなら、見事な演技力だ。

未だに迷えるぼくに、ケアマネジャーは言う。


「これまでもそうだったように、お母様が自ずと進むべき道を示して下さると思います」


そう、これまでずっと不思議だった。


──まるでぼくの身を案じるように、何事も間に合うタイミングですべての出来事が起こった──


今度もきっと、そうなる。


食事を終えて、テレビを観る母の気配を背中に感じながら、母がよく淹れてくれた緑茶入り玄米茶を差し出す。

緑茶の甘味が、今夜はやけに深く感じられた。きっと、またこの甘味を感じるたび、今夜のことを思い出すのだろう。

今夕、母の帰宅を待ちわびながら、シュウマイの具材に使った玉ねぎを刻んでいた。溢れかえるものを隠すのに、とても都合が良かった。


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