主夫ロマンティック

独身中年男子の介護録──母が授けてくれたこと。そして、それからのこと。

主夫ロマンティック

【自分のワクチン接種券、届く】

2021年6月23日⁡遂にこの日がきた。なんだか実感がまだ湧かない。映画のワンシーンのなかにいるような感覚があるが、仮に映画の中だったとしても、ここで放たれるセリフはきっとこうだ。⁡⁡──これは現実だ──⁡⁡先日、居住地区の役所が設けたワクチン接種…

【母のワクチン接種/1回目】

2021年6月2日今日、特別養護老人ホームに暮らす母の、新型コロナウィルスのためにワクチン接種が行わる予定になっていた。接種は、「当日の体調次第」となる旨、予め確認の連絡があったが、予定通り完了できたかどうか、今はわからない。少なくとも、…

【予期しなかった代理サイン】

2021年5月4日新型コロナウィルス感染拡大、第4波──。母に代わってこの書類にサインしたのは、2度目の緊急事態宣言が解除されたあと、4月に入ってまもなくのころだった。それから一ト月と経たないうちに3度目の発出──こうして刻一刻と、日本の歴史が…

【孤独のおでんに2021年の躍進を誓う】

2021年1月2日元旦のラザニアに続いて取り組んだのは、おでん。コロナ禍になる直前、去年の今頃だったか、ふと思いついて〈おでん研究〉を始めた。あらゆる具材を試した結果、どうもぼくは、練りものに興味がないことがわかった。唯一、あまり人気のな…

【孤独のラザニア〈正月仕様〉で元旦を祝う──静けさのなかにある安寧】

2021年1月1日謹賀新年──。もうすっかり、この静かな暮らしが気に入っている。満たされない何かを埋めようと、現実から逃げていた時代が嘘のように晴れた・・・まるで他人事のようにその昔を思い返すも、あのときはああすることでしか自分を守れなかっ…

【孤独のラザニアで50歳を祝う】

2020年12月26日1日遅れのメリークリスマス。しかし世界は広い──日本時間26日14時現在、サンフランシスコではクリスマス・ナイトのクライマックス。それに、昼間の明るい時間にメリークリスマスというのも何だかいい気分だ。子供時代のクリスマ…

【久々に車椅子を押した日】

2020年12月15日この街に身体のメンテナンスに通うようになって、もう1年以上が経った。いつも通り、午後のゆるめの時間に治療を終えて、今日も日用品を買い求めに周辺を歩いた。30分ほどで用事を済ませたあと、ふと街の喧騒から離れたくなって、ひ…

【介護者生活8周年── 信じる・受容れる・自然に過ごす──無意識の決断】1/3

2020年10月21日 かつて母が過ごした介護老人保健施設に隣接する森のなかで、これを書き始めた。同じエリアにある、母のかかりつけの病院へ今年も健康診断の申し込みにやってきたのだが、2020年はこれまでとは勝手が違うらしい。感染拡大防止のためか…

【介護者生活8周年── 信じる・受容れる・自然に過ごす──無意識の決断】2/3

2020年10月21日 8年前のあの日、突然我が家に鳴り響いた轟音──そのとき感じた不安と恐れは今もはっきりと憶えている。音を専門とする身だけに、その異常な音の質感は、一瞬にしてぼくの想像力を掻き立てた。──かなり大きなものが落ちた音──何かが倒…

【介護者生活8周年── 信じる・受容れる・自然に過ごす──無意識の決断】3/3

2020年10月21日あれから8年──もう思い出せないほどたくさんの出来事があった。自分の身には、振り返りたくもない苦い経験までもが起こった。心を病み、何かに、そして誰かに依存し、自暴自棄になりかけては「これではダメだ」と己を鼓舞し、悶絶し…

【父の五十回忌──2020年、東京にて】

2020年8月4日49年前の今日、父が逝った。そのときのことをぼくは憶えていない。いや、憶えているはずもない。──生後8ヶ月──その日のことはおろか、父と過ごしたその8ヶ月のことさえ思い出せない。父に抱かれた写真を観ても、どんなエピソードを家族か…

【笑う門には福来たる──母の日2020】

2020年5月12日母が暮らす特別養護老人ホームは、例年、季節性インフルエンザの時季になると、館内での感染予防のため面会制限が行われる。今年はそれが、無期限で延長されている。当然の判断である。去年から、意識的に母との距離を保つようにしてき…

【卵ぬき手打ち生パスタ──料理が教えてくれたこと】

2020年5月10日2012年秋で──母の介護に直面して、これから食事をどう賄っていくかを考えたとき、自然と思ったことを憶えている。「ぼくが作ろう」それまで料理を習慣的には行ってはいなかった。けれどいつしか、衰えを見せ始めた母の傍で感じてい…

【サバイバルライフのための自前ロードマップ考──BURN or ALIVE】

2020年5月4日18時から日本政府による発表がある。そろそろ、今後どういう事態を想定していて、それらにどのように向き合っていくのか? いわゆる出口戦略的な展望を聞かせていただけることを願っている。完全収束または共存までの道のりには当然、いく…

【この恐れは何かに似ている】

2020年5月1日令和元日から1年が経った。こんな日常がやってくると予想さえできていなかったのは、日々の暮らしに追われていたせい──その事実を反省しながらも、計り知れない恐れに押しつぶされそうな今、改めて自らに言い聞かせている。「この危機に…

【世界一平和で安心安全な場所 ──Jくんとラザニア】

2020年4月10日あれは確か、小学三年生か四年生のころだった。ある放課後、仲良くしていたJくんのお母様に声をかけられた。「ラザニア食べに行きましょうよ」ラザニア・・・聴いたことのない響きだった。当時は昭和50年代半ば。今のように「イタリアン…

【チーズケーキを頬張り「いまこのとき」を想う】

2020年3月8日この冬は、ずっと調子を崩したままだ。昨晩秋の出張中、突如襲われた呼吸困難──主治医によれば、肺の音を聴く限り肺炎や喘息ではないという。逆流性食道炎による食道への胃酸上昇で刺激され気管支炎を起こした・・・と考えられるとのこと…

【母の予言】

2020年2月5日「人生やり残しなし」被介護者になってから、母は幾度となくこの言葉を口にしていた。月に一度行われる介護サービス担当者会議では、今月の目標を訊ねるケアマネージャーにいつもこう言い放っていた。「やりたいことはぜんぶやった」ぼく…

【母、誕生会──87歳】

2020年1月20日母の誕生日当日である1月17日に予定されていた誕生会は、ぼくの急用により延期された。──明日のことは誰も知らない──「今」という瞬間しか確かなことはない──母との日々を過ごして、そう強く意識させられてきた。ゆえに延期すること…

【介護者生活7年を過ぎて──令和元年大晦日】

2019年12月31日2019年を終えようとしている。2016年から2019年初頭まで費やした「我が改革」の成果を見届けようとした今年──新しい門出を迎えるに相応しく、元号も新たになった。この1年、主に取り組んでいたのは、まず何より、全力で…

【母の裁縫箱に詰まったもの】

2019年4月3日ながらく続いた介護者としての日々のなかで、ひとつだけ決めていたことがある。──裁縫だけはやらない──もう昔のことすぎてその理由はあまり思い出せないが、あらゆることをこなし過ぎていたせいもあり、時間がかかる作業はしたくないと思…

【涙のスイッチ(2)】

2019年4月2日ぼくの誕生と入れ替わるように父が先立ち、母は兄とぼくを連れて東京に移住することを決めた。その準備におそらく3年ほど費やしていたはずだ。ぼくがちょうど幼稚園にあがる年、我が家の東京での暮らしが始まった。移住計画が実行された頃…

【涙のスイッチ(1)】

2019年4月1日ある日曜日の夜、出張帰りの東京駅での出来事──。それは、品川駅を過ぎたときだった。大半の乗客が降車し、車両内が急に静まり返った。そしてぼくは突然に、嗚咽した。夕暮れ──無事に現場を終え、機材をパッキングして休んでいると、歩く…

【そのときのための支度】

【解放】2018年3月29日早朝、いつもの窓辺から、朝陽を背に染まる満開の桜を眺める。 川瀬 浩介 - 【そのときのための支度】  2019年3月29日  1年前の今日──。 ... | Facebook 2019年3月29日1年前の今日──。我が家から拝めるお…

【Survive──鉄鍋で味わう野菜くず】

2019年3月7日最近、改めて、鉄鍋で調理したときの旨さに感心させられている。きっかけは、南部鉄器。アヒージョを作ろうとして、ココットのような手のひら大の鍋を手に入れたこと。油を馴染ませるシーズニングのために、いつもどうにか味わいたいと思…

【愛という名の音楽】

2019年3月5日母と亡き父の結婚記念日──。今日、施設にいる母に会いに行かないと決めたいくつかの理由のひとつは、これだ。そして奇しくもこの日、「愛」を表象するための音楽が完成した。母に何かをしてあげることよりも大切なことがぼくにはあった。─…

【時機 ── 一ト月ぶりの面会と親子インタビュー(2)】

2019年2月18日テーブルの上には置く場所はない──壁に穴を開けることはできない──つっぱり棒などで取り付けるのは大げさ過ぎる──安全性も考慮しなければならない──しばらく思案するも、持ち前のアイデア力がぼくに妙案を授けてくれた。──望むと必要な…

【時機 ── 一ト月ぶりの面会と親子インタビュー(1)】

2019年2月18日この6年の間、こんなにも母と顔を合わせなかった日々はなかった。この一ト月、面会が中止されていた。施設内でインフルエンザが発症したそうで、落ち着くまでの間、一切の入館を禁じられた。その連絡が届いたのは、母の誕生日から数日経…

【自然のリズムに乗って──もう一度、ひとり御膳を】

2019年1月27日関東でも積雪があると予報された今日、我が家のある街は幸いにも晴天のままで一安心。昼間の陽射しがあるうちは暖かさえ感じられた。昨夜は創作で脳が湧いたのか、0時前に作業を切り上げるも、明け方まで寝付けなかった。最近は早起きを…

【快気を期して──ひとり御膳】

2019年1月26日ようやく咳も落ち着いてきた。夜、寝ているときにも咳き込むことが多かったけれど、ここ数日、積極的に紅茶を飲んでいることに加えて、処方された漢方薬の効果も現れてきたのだろうか? 怠さも感じなくなってきた。すると復活するのが食…