主夫ロマンティック

独身中年男子の介護録──母が授けてくれたこと

【母のワクチン接種/1回目】

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2021年6月2日

今日、特別養護老人ホームに暮らす母の、新型コロナウィルスのためにワクチン接種が行わる予定になっていた。接種は、「当日の体調次第」となる旨、予め確認の連絡があったが、予定通り完了できたかどうか、今はわからない。

少なくとも、緊急連絡がなかった事実から想像すると、接種が実施されていたとしても副反応はなかったと考えられる(万が一の場合の処置体制を整えた上での接種になることも事前に伝達されている)。

もし何らかの事情で接種が見送られていたら──いずれにせよ、何も連絡がないのであるから、母は今もこの世に留まっていることには違いない。

この接種には、注射針を挿入するのには痛みを伴うそうだが、そのときの母の表情が思い浮かぶ。もう会話は出来なくなって久しく、言葉による意思表現はほとんど不可能になっているのだが、そんなときばかりはきっと反射的に声を上げているような図が浮かんでくる。


──「イタイ」──


大阪生まれの関西弁ネイティブスピーカーらしい「あのイントネーション」まで思い浮かぶ。

母を在宅介護していたころ、ぼくが足の指の爪を切っていた。永く生きた証か、母のそれはかなりの巻き爪になっていて、ニッパーと似た形状の動きを精細にコントロールできる爪切りを用いても(かつ、ぼくの器用さを持ってしても)、痛みを伴う場面を避けられなかった。そんなときに何度も聴かされたあの音が、今、イヤーワームのように耳のなかをこだましている。


──「痛みは生きている証」──


これは、ぼくが常套句としていた、痛みを訴える母への言い訳だった。

接種券は、自宅にもおくられてきたが、居住地区の介護施設には、役所から別途、送られているそうだ。しかし、手元の接種券は、施設で接種券できなかった場合に必要となる可能性があるため、念のため保管しておくよう指示を受けている。

このウィルス危機に関わらず、ぼくに明日が無事にやってくる保証はどこにもない。年齢的にも、いつ何がおきてもおかしくはない世代だ。ゆえに、別に暮らす兄に連絡を入れ、接種券の保管場所を伝え、もしものケースが生じた場合の対処をお願いした。


──母は大胆でありながらも、非常に慎重だった──


その姿を、家族の中で誰よりも永く側で見てきたから・・・この時期に挑む厳格過ぎるとも思われる姿勢──目的のためなら他のすべてを手放す──は、その影響と言えそうだ。ここでいう「目的」とは言うまでもない。


──無事にこの危機を越えていくこと──


それに他ならない。

2度目の接種は、3週間後。それを終えて夏を迎えるころには、ぼくの番を迎えられるだろうか? 三重基礎疾患ホルダーゆえ、今も慎重に慎重を重ねている。

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