主夫ロマンティック

独身中年男子の介護録──母が授けてくれたこと。そして、それからのこと。

【約束の地へ、再び】

f:id:kawasek:20220623072902j:image

2022年6月22日

遂に劇場入りを果たした日──ここまで、ながいながい道のりだった。

《新版・NINJA》と銘打たれ、2019年の初演時は小劇場──そこから中劇場へと場所を移して行われるこの再演は、ほとんど〈新作〉と言っていいほど印象が異なっている。

この再演を誰よりも楽しみにしてくれていた、とても愛しい人が逝ってから半年が過ぎた。寒さに凍え、〈これを超える苦痛はない〉と思うほどの悲しみと孤独に震えたあの時間のことは、生涯、忘れえないだろう。

すべてのシーンを見つめるたび、彼女の多彩な表情が想い出される。目を丸くして作品の世界観に引き込まれていたかと思えば、ときには息を呑むような表情で場面を見守る──。


──ぼくの心を介して、目の前のすべてを感じてくれている──


そう信じて、溢れでてくるものをこらえている。

体調はよくなる気配がない。最近は、脳が燃えたぎっているような感覚で、頭脳に熱を帯びている。

今日もこうして「今」を迎えられているのは、亡き母と早逝した彼女が見守ってくれているからに違いない。

ここまで辿り着くことが、ぼくの役目だった。劇場では卓越した能力と経験を備えた音響チームが中心となって音作りを進めて下さっている──これでもう、安心。

すべての関係者と、この作品を見届けて下さるお客様の無事を祈願して、これから本番まで、あと僅かな時間を全力で駆け抜けたい。

思い描いた図を見届けることが理想だが、何より無事に、全行程を終えることができれば本望である。


#主夫ロマンティック #介護 #介護者 #介護独身 #シーズン10 #kawaseromantic #母 #看取り #川瀬浩介 #元介護者 #死別 #遺族 #寡夫 #寡夫ロマンティック #シーズン1