主夫ロマンティック

独身中年男子の介護録──母が授けてくれたこと

【回想の森】

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2017年10月30日

 

秋晴れの朝、森の小道を抜けて健康診断のため病院へ向かった。

 

母の事故以来、丸5年通い続けている病院は、当時の面影も少なくなり、すっかり生まれ変わっている。今年は遂に健康診断の仕組みも改善され、計測〜採血〜問診〜心電図までフロア移動を行わずしてできるようになっていた。

 

ただ唯一、画像撮影だけはこれまで通り。母が着替え中に転倒して股関節を骨折するという「悔やまれる記憶」が刻まれたフロアへと誘われる。

 

順番を待っている間、ご家族に付き添われて認知症の検査に来られたご婦人が不安に駆られる様子が気になって仕方なかった。

 

首から名札をぶら下げた男性は、ケアマネージャーか相談員か、丁寧に言葉を選びながら、このあとの検査と治療、生活についての話をしていた。ご婦人は「検査は病院のため」と言い張って、周りを困らせていた。

 

何事も初めてのことに向き合うときは不安になる。まして、自分に選択権がないような場合はなおさらだ。

 

 

──なぜこんなことをしないといけないのか?──

 

 

理屈が感情を超えることはない。思いつく言い訳を可能な限り並べては、なんとか回避せんとするのが心情だろう。

 

母にも一時期、似たようなことがあった。週に3回もお願いしていたリハビリやぼくの仕事の都合でショートステイに預けられることを「ケアマネージャーの売り上げのため」と揶揄した。いくら整然とした理屈で説明しようと、家族からの意見など、まったく聞く耳なし。検査や治療、さらには手術を勧めているぼくには、無論、それが確かな効果を生むかどうかなんてわかるはずもない。医師にしたってそれは同じだ。

 

 

──預言者はどこにいる?──

 

 

股関節骨頭置換、白内障認知症検査、心臓カテーテル…いずれも根気よくリスクも含めて説明して、どうにか同意してもらったけれど、そこまでして母を今日に導いたことがよかったのかどうか? と、ときおり思い返すことがある。

 

 

──ただぼくは、後悔したくなかっただけなのかもしれない──

 

 

あの日もこんな風にして、MRI室の前で母に検査の必要性を説いていた記憶が蘇る。

 

それは…母のためというより、自分のために他ならなかった。

 

 

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