主夫ロマンティック

独身中年男子の介護録──母が授けてくれたこと。そして、それからのこと。

【顔は口ほどに物を言う?】

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2018年1月24日

 

深夜、自宅にて。かつては母専用だった洗面台の前にひとり佇む──。

 

明かりをつけることもなく、夜、暗い中トイレに立つ母を案じて取り付けたセンサーライトが、今夜も青白く灯っている。

 

 

──鏡に映る自分の姿は左右が反転した虚像──

 

 

本来の己を決して見ることができないというのは、なんと興味深い事実だろうか?

 

 

──その虚像をたまにこうして撮ってみる──

 

 

まだ挑戦できる表情をしているのか?──それを確認するためでもある。

 

他の誰も未だに知るはずもないぼくの未知なる可能性は、無論、このぼくにさえ知るすべはない。

 

 

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【新しい出逢いに巡り会うために】

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2018年1月23日

 

昨日、浜辺の街にて──。

 

この風景を観て、4年前の大雪の日にも、この街にいた記憶が蘇ってきた。

 

 

──ハンマーヘッドスタジオ 新・港区──

 

 

横浜港を臨む海沿いにあった巨大シェアスタジオに入居して、自身が求める美について見つめていた日々──。

 

2012年春、スタジオがオープンして最初に招いたのは、もちろん母だった。

 

次の春で、あれからもう6年になる。

 

 

──変わってしまったのは、母のことだけではなかった──

 

そしてこの場所とも、春にはお別れ──。

 

また新しい出逢いに巡り会うために。

 

 

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【大雪の夜に】

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2018年1月23日

 

朝は起きられそうにないから…近所迷惑にならないように、そぉ〜っと雪かきを──。

 

まずは避難路を確保。次いで、車のための導線確保のための除雪──。

 

朝になってこのままだと、ごみ収集車も介護施設への送迎車も、そして自分の車さえも進入できなくなる。

 

運転しない皆さんは、家の角に雪を積み上げがちで、凍結したら巨大な氷と化して手がつけられなくなる。そうなる前に処理しておけば、明日以降はだいぶ楽になるはず。

 

だが、何より今回は、雪の量が多過ぎる。避けておくスペースさえないので、一時的に高く積み上げてから少しずつ崩して薄く慣らす、という面倒な工程を経て、どうにか完遂した。

 

ぼくも既に若くはないが、ご近隣もご高齢になられてきたし、日々色々とお世話になっているので、できることくらいは引き受けたい。それに、このところの食べ過ぎ解消にはちょうど良かった。お陰で頭の中に降り積もった余計なチリも、いくらか取り除けた気がする。

 

27:30、作業完了──。

 

風呂でゆっくり身体を揉みほぐしたけれど、起きたら確実に筋肉痛に苦しめられているに違いない。

 

あとは、明日の朝日に任せて今夜は眠ろう。

 

 

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【fatigue】

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2018年1月22日

 

疲れているのは、年始の喧噪にまみれていたからだけではないらしい。

 

介護者生活も6年目に入った。この1年、自宅で母を看ることが難しくなって直接世話をすることも少なくなったけれど、介助の負担が減っても何かを解決してくれるわけではないと思い知らされてばかりだったような気がする。

 

この1年という時間を思い返しながら、師走に母を歯科受診に連れて行ったときに道中で聴いていた曲を今夜もかけてみた。

 


──プッチーニ作曲〈誰も寝てはならぬ〉──

 

 

歌唱はもちろん、母が愛するバヴァロッティだ。

 


──嗚呼──

 


音楽はどうしてこうも深く、記憶と共に心に刻まれるのだろう。

 

いつか襲いくる時間を想像しながら、想う。

 


──もう、この曲は聴けないかもしれない──

 


日曜日の深夜──ひとり思いに耽るにはちょうどいい。

 


音程も、あまり取れなくなってきた。
裏声なんて、もちろんだせなくなっている。
歌う様子は、まるで子供みたいだ。

 


あの日の母の様子が思い出された。そして、近ごろ触れられたあの方の今と重なって…少し呼吸が荒くなっていたことに気づいた。

 

「わかる」なんて言葉は、気安く使いたくない。だからぼくは、こう記そう。

 


──その気持ちが、想像できる──

 


言葉は便利だ。不可解な気持ちにラベリングして、そのときの状況を自ら認知し、自分を納得させることができる。

ならばこの気持ちのラベルは何だ?

 


──今はまだわからない──

 


ただ、今は少し、疲れているんだ。

きっとそれだけのこと。

 


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【誰かに話したくなる出来事】

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2018年1月20日

 

午後、母の散髪をしに施設へ向かった──。

 

日常の介助を施設にお願いしているため、ぼくにできることが、実はもうほとんどない。今では、節約のために自宅で続けている洗濯と通院の付添いくらいになっている。

 

施設に定期的に入る理容/美容サービスでもカットなどはしてもらえるから、これまで何度か利用してみたけれど、どうもなかなか本人の思うようにいかないらしい。要望も上手く伝えられないのだろうし、カットする側も短く切り過ぎて苦情が出るケースも多々あるとのことで、「普通」の範囲に収めることがほとんどだと、ケアマネジャーから実情を伺った。

 


──ならばぼくが──

 


と思ったのも束の間、ただでも忙しい日常のオペレーションにイレギュラーなイベントが挿入されるのはどうなのか? そう疑問に感じて相談してみたところ、快く了解して下さり、今日、母の居室でさせてもらった、という次第である。

 

それにしても、だいぶ久しぶり過ぎて、やや後頭部を切り過ぎてしまった印象は否めない。それでも、見慣れた母の髪型が蘇った。

 

ハサミもタオルもマントも襟足を揃えるバリカンもタオルも何もかも、これまで使っていた道具を持ち込んで、寝癖のままの髪を濡らさずにカットを始めると、案じた通り、母はじっとしていられない。

 

「手が切れると楽器弾けなくなるからじっとしてて」

 

そう何度お願いしても、気になる話を始めては後ろを振り向く母。しまいには注意するぼくを面白がって、いたずらっぽく首を動かすフェイントをかけては笑い始めた。

 

幸いなことに、これまで母の散髪をしていて大事になったことはないが、一度だけ、やはり母が急に動いて、指の腹をわずかにハサミで切ってしまったことがある。だが、何事も経験。以来、ある程度動きを予測したり、細かいカットの際は話しかけるのを止めたり、色々と工夫している。

 

そうこうしていると、様子が気になったのか、お隣の入居者の方から声がかかった。

 

「あら、散髪屋さん? 私もお願いしたいわ」

 

よくみると、ボタンホールを繋ぐようにストライプの入った白いシャツを着てハサミを持っていたぼくは、まぎれもない「床屋さん」スタイル。見間違えられてもおかしくなかった。

 

母は、ぼくが次男で音楽をやっていることや、年の離れた長男がいて〇〇大学を出て立派に働いていることなど、その方に向けてスラスラと話し始めた。ぼくのことにはついては──


「この子が家のことはぜんぶやってくれる」
「料理も洗濯も掃除もみんな」
「だから私は楽チン」

 

──そんなことを、いくつか加えてくれた。

 


──まだ憶えてくれてたんだな──

 


もしもほんの少しだけ、この世の記憶をあの世に持ち込んでもいいのなら、こんな風に、誰かに話したくなる出来事だけに限りたい。

 

母が、そのひとつに今日のことも加えてくれたら、嬉しいのにな。

 


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【最も苦しいときに大きな決断をしてはいけない】

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2018年1月19日

 

35年のそのキャリアのほとんどをリアルタイムで聴いてきた方から、思わぬ形で介護の話題を耳にした今日は、案の定、何とも言いようのない気持ちに支配されたままだった。

 

来月の母の一時帰宅に向けて、担当ケアマネジャーが着々と準備を進めて下さっているなか、そんな宙に浮いたような心のまま淡々と日々の日課をこなした。

 

最後に母の衣類の洗濯を終えてアイロンがけをしているときには、無心になりたかったのか、何も考えないように、ただひたすらに手を動かしていたかったけれど、やはりそうはいかなかった。

 

 

──こうしている間にも、時間は過ぎている──

 

 

すべてを完了させたところで、軽い空腹を覚えた。無益な報酬は与えたくない。どっかりと座り込んだアイロン台の前からゆっくりと腰を上げ台所へ向かい、湯を沸かしながらそっとその様子を見つめていた

 

 

──お茶で一服──

 

 

これでなんとかしのげる。

 

寿司屋の湯呑みにたっぷり注いだ緑茶入り玄米茶をすすりながら、不在が続き殆ど役目を果たさないままの母のタッチアップをぼんやりと見つめ、最近思いついた楽曲になりそうな断片をギターで爪弾く──。

 

自分も、たくさんの逃げ道に迷い込んできた。けれど、そのどれもがぼくなかで欠けてしまった何かを満たすことはなかった。

 

今では「パートタイム」と言われても仕方のないような状態の創作ではあるけれど、その機会を僅かでも与えてもらえるからこそ、どうにか「今」を生きてこられた気もしている。

 

 

──「最も苦しいときに大きな決断をしてはいけない」──

 

 

今一度、肝に銘じておきたい。

 

森羅万象は、無常である。希望も絶望も、人のこころも絶えず移ろっていく。

 

かつて、なんの前兆もなしに、その「しかるべきとき」が訪れて万事が始まったのだから、またいつか「新しい目覚め」がめぐってこないとも限らない。

 

この先のどんなことがあっても、その目覚めを素直に受け止められる自分でいたい。

 

 

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【母の誕生日に】

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2018年1月17日

 

1月17日──母の誕生日。今日で85歳。

 

「誕生日、おめでとう!」

「えぇ? 今日やったっけ? 忘れてたわ」

 

いつもの調子で始まる面会は、会話になるときもあればならないときもある。最近は顔を合わせると

 

「来てくれてありがとう」

「ここに座って景色を観ていると時間が直ぐに過ぎてええわ」

 

 

それを繰り返し伝えてくる。

 

「今日の誕生日も生きてくれていてありがとう」

「景色を観て1日過ごせるなんて、殿様みたいな暮らしでいいね」

 

そう応えながら、嫌味や無理なお願いを言わない母の気質をありがたく思った。

 

「なんで毎日来てくれへんねん」

「一人でなんでもできるから家に帰りたい」

 

いつそう口にし始めるか、ずっとこのままでいられるか…それは誰にもわからないけれど、わずかな時間でも、こうして穏やかにしていられること以上に望むものはない…そう強く思った。

 

今日、元気で無邪気な母の表情を見つめながら、はっきりとわかったことがある。

 

この1年、自分に言い聞かせるように言葉を重ねてきたけれど、ぼくは今も、母を喪う不安に駆られている。心の揺らぎを抑えつけるように理屈をこねては、感情を受けとめるのではなく「解釈」しようと努めていた。

 

どこかでそう自覚しながらもそれを認めず、苦し紛れにあらゆる時間と空間に逃げ込む。

 

 

──母は、ぼくが在るべき姿を今も見せてくれている──

 

 

そんな気がした。

 

それをしっかりと受け止めたい。

この手に触れていられるうちに。

 

 

「大きくてあったかい手やなぁ」

 

 

いつからか、部屋を発つときに毎回握手をするようになった。

 

今日の母は、いつものその言葉を口にしなかった。

 

 

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