主夫ロマンティック

独身中年男子の介護録──母が授けてくれたこと

【デブでよかった】

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2018年4月25日

なるほど、そういうわけだったのか?

本当の訳など、知る由もないし興味もない。何事もこうして、ただ自分が納得したいだけ──それでいいじゃないか。

今日、母の振る舞いを見つめながら、そんなことをおもった。

2日後に迫った特別養護老人ホームへの入居に備えて、今日は母を健康診断へ連れて行った。

11ヶ月お世話になった介護老人保健施設からは、掛かりつけの病院まで送迎車で送ってもらえるのだが、母は、車椅子用のリフトがお気に入りらしく、遊園地のアトラクションに興じるかのように、そのわずかな時間を楽しんでいる。

そしてこのところは、必ずと言っていいほど、投げキッスをしてくれる。ぼくだけじゃなく、目があった人すべてに。

エレベータホールに、たぬきの置物がある。母はここに入所したときから、このたぬきと顔を合わせると挨拶をしていた。


たぬきちゃんたぬきちゃん」


そういって、膨れたお腹をさすったり、時には叩いたりする。

今日も、このたぬきに挨拶をしてから健康診断へ向かった。

午前から降り続いた大雨の影響だろう。病院はいつになく閑散としていて、それだけでだいぶ気持ちに余裕ができた。母のわがままにも耳を傾けることができたし、まるで自分の子供と戯れるような感覚で母と時間を過ごせたように思う。

子供帰りが著しい母は、もう、じっとしていられない。そのため、今日の健康診断も、特養から求められていた頭部CTはパスするかたちとなった。

心電図・胸部レントゲン・問診──検査はそれだけだった。待ち時間もほとんどなかったけれど、最近、すぐに「あれしてこれして」と待ちきれない母は、目の前にあったぼくの大きく張り出たお腹を突然叩き始めた。


「立派なお腹やなぁ」

「叩いたらダメだよ。たぬきさんにするみたいに優しくなでないと」


そう伝えても、太鼓のつもりか、母はお腹を叩き続けた。申し訳なさそうに、時おり、さすってくれたけれど、感触が楽しかったのだろう。父親のお腹にまたがって腹太鼓に興じる娘のように、飽きるまで叩いていた。

早産で逆子、そのうえへその緒が首に巻きついていて仮死状態で、産声をあげずに生まれたぼくは、未熟児で保育器にしばらく入っていた。そんなぼくを、食べ過ぎで身体を壊せるほどに強靭な肉体に育てあげてくれた母に、改めて、感謝を伝えた。

介護者として過ごして6年弱──もしも華奢な体つきだったら、身体はもたなかっただろう。その期間に2度、古傷の腰痛が祟って数ヶ月に渡り激痛に見舞われたけれど、その程度で済んだのは、この身体を授けてもらったおかげだ。母を介助するにも、大きな身体でよかったと思うことばかりだった。


──ぼくのお腹を見るたび、たぬきを思い出して楽しんだらいいさ──


お腹を叩きながらいっぱいの笑顔を浮かべる母を見つめながら、ぼくは、いつか過ごした愛しい時間のことを思い出していた。


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