主夫ロマンティック

独身中年男子の介護録──母が授けてくれたこと

【晩年】

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2017年11月30日

 

冷え込みが厳しくなってきたこの頃、病院付添いの帰り道にふと視線を逸らすと、こんなに綺麗な紅葉がすぐ隣にあることに気づいた。

 

 

──うつむき加減で歩いていたら、側にある美にさえ気づけない──

 

 

そんな当たり前のことを、植物はいつもそっと教えてくれる。

 

春に芽を出し新緑の季節を謳歌して、秋に色づき、冬の散り際を目前にして、それまでとはまた別の美しい表情を見せるだなんて…。

 

そんなことを思いながら、その変遷を人の一生に重ね合わせてみた。

 

この浮世では罪とまで言われたあらゆる欲望、満たされない想いが創り出す怒りという幻想、そして痛みや苦しみ、さらには喜びや楽しみが知らせてくれる生の証…。

 

そのすべてから解き放たれようとする人の晩年も、やはりその散り際に、また別の美しさを表現し始めるのかもしれない。

 

「することなくて退屈や」

 

と、母は言う。それがストレスになっているのか、ときには聞かされた相手を悲しくさせてしまう「口にしたらイケナイ言葉」さえ発することもある。

 

きっと、それが本音なのだろう。けれど、その先に進んで穏やかでいられるのかどうか、誰も知らない。先にそこへ進んだ亡き父でさえ、それを教えてはくれない。

 

 

「私を早う呼ばんといてや」

 

 

そう母が伝えると、

 

「お前なんか呼ぶかぁ〜」

 

と父は病床で応えたという(それはきっと、照れ隠しだったに違いない)。

 

ぼくが産まれて入れ替わるように先立った父──。

 

あれから半世紀近くが過ぎても、まだ父は母を呼ばないままにしてくれている。

 

 

「きっとまだ何かやることがあるってことだよ、この現世に」

 

 

母はこれまでと変わらず、何も語らないまま、ぼくにたくさんのことを今も伝えてくれる。

 

父はきっと、その様子をどこかでそっと見守っているのだろう。あの世での晩酌の肴にしながら。

 

 

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