主夫ロマンティック

独身中年男子の介護録──母が授けてくれたこと。そして、それからのこと。

【前進】

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2018年1月27日

 

夕暮れどき、まるで予定されていたような隙間の時間を得た。

 

 

──何をするのが有意義か?──

 

 

そうだ、せっかく近くに来たんだから、父の墓参りに行くことにしよう。年末に向かったときは陽が落ちてしまって墓石を磨くのが不十分だったから丁度いい。

 

週末の寺町は、いつも以上に静まり返っていた。けれど、例の映画の影響は未だ続いているらしく、聖地巡礼を楽しむ観光客が後を絶たない。

 

その様子を横目に階段を下って行くと、雪化粧をした墓地の様子が目に入ってきた。

 

 

──おぉ──

 

 

これは思いもよらないご褒美だ。ここに母が墓を建てて30年。こんな景色を見たのは初めてだった。

 

寺の前にある井戸から水をくもうとしたが、一向に出てくる気配がない。中を覗くと案の定。

 

 

──凍結──

 

 

「大事な手がやられてしまうから今日はやめとけ」

 

 

そう父が言ってくれているような気がした。

 

墓前に立つと、今も師走の父の誕生日に供えたビールとタバコが遺されていた。今日2組追加して、計4つずつ並べられた図もまた史上初。初めて尽くしで何やらめでたい気分になった。

 

手を合わせて、決意のほどを報告。決めたことはひとつではなく、すべてが複雑に絡み合って説明するのは難しいのだけれど、総じてまとめると「前に進む」ということになるだろう。

 

 

──「ぼくの勇気をみまもってください」──

 

 

ぼくの挑戦を絶えずみまもってくれている母の言葉は今も変わらない

 

「あんたの好きにしたらええ」

 

それはすなわち、「自分で決めろ」ということだ。子供のころから、ずっとそう言われてきて、ずっとそうしてきた。母がそうしてきたように。

 

今度もまた、いきなり何を言い出す? そんなことを思われるのかもしれない。それでも、いつだってぼくのなかではひとつながり。

 

敢えて言うなら、前に進むのに、理由など、あってはならない。それが純粋な思いであればあるほどに。

 

さて、一服して、帰ろう。今夜もやるべきことがあるから。

 

 

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【恋?】

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2018年1月26日

 

最近の母は、少しだけ発する言葉が変わってきた。

 

「ここに居ると楽しいからすぐに時間が経つ」

 

退屈でやることがないとボヤいていたころもあったが、そう思うと、これは実に大きな変化だ。

 

よく観察してみると、母の周りにはいつも誰かがいて、構って下さっている。それは、母が関西弁で言うところの「アホなこと」を口にしたりして周りを笑わせているからなのだろうが、生まれてこのかた一人住まいをしたことがない母には、何か特別なものに守られているのかもしれない。

 

少し前に、悪気なく放った一言が他の入居者の方を怒らせてしまったようで、しばらくひとり離れた席に移されていたのだけれど、最近では、男性入居者の方と何やら可笑しな会話や今で言う「変顔」を見せ合って楽しんでいる様子をよく見かける。

 

 

──その様をみて、ぼくが子供のころのことを思い出した──

 

 

事故でながらく学校を休んでいた友達の家に、毎日のように見舞いに行っていた。丁寧に、お母様にお電話をして、見舞いに行っても構わないか確認していたような記憶もある。

 

部屋のドアから顔を出したり引っ込めたりして、変な顔を見せて笑わせていたのが楽しかった。ほとんどベッドに横たわっていたけれど、時にはご両親と一緒に食卓を囲んで、ジュースやお菓子をいただいたこともあった。みんなで並んで写真を撮ったような気もする。

 

 

──たぶんぼくは、彼女のことが好きだったんだろうな──

 

 

そんな気持ちさえわからなかったころの出来事──。

 

 

あの男性も、母のことが好きなんだろうか?

 

 

──恋?──

 

 

母の気持ちはどうなんだろう?

 

毎日が楽しいだなんて、まるで初恋のようだね。いいことじゃないか。

 

これからどんな風に言葉も表情も変わっていくのか、ちょっぴりたのしみになってきたよ(笑)

 

 

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【こうすけさん】

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2018年1月26日

 

毎日窓を開けて空気を入れ替え、仏壇に手を合わせるだけになって久しい母の寝室からみた夕暮れ時の西の空。陽の当たらない場所は今も残雪が目立っている。

 

夜になって、仕上がった洗濯物を届けるため面会にいった。就寝時間も近づいていたので、寝る前の薬が夜勤の職員の方から運ばれてきた。

 

先日行った母への出張散髪の出来が好評だったようで、入居者の方からも声をかけられたりしたのだが、今夜は職員の方からも訊ねられた。

 

こうすけさんがカットしたんですか? 上手ですね。評判もいいんですよ」

 

 

こうすけさん?)

 

 

今では中学校の同級生女子からくらいしか呼ばれなくなったその呼び名だが、21世紀に入って知り合った方からそう呼ばれるのは、どこか不思議な感覚があった。

 

いつからか、下の名前で呼ばれるのは照れくさくなった。そして、もはや旧式の思考ゆえ、家族か大切なひと以外から呼ばれることにも、未だに若干の抵抗がある。海外に行っても「KAWASE」と呼ばれることを好んでいるほどだ。

 

もちろん、親が与えてくれたこの名前を、ぼくはとても気に入っている。

 

 

「一番呼びやすいのを選んだんや」

 

 

母はそう教えてくれた。

 

それ以上に感謝したいのは、何か、意味を込めたような名前にならなかったこと。そんなプレッシャーに、ぼくは耐えきれないだろうから。

 

友達と下の名前で呼びあっていたのは、やはり中学生のころまでだったろうか? それもごく一部の間だけだった気がする。高校生のときはどうだったか? そもそも卒業以来、再会したことがないから、もはや知るすべがない。

 

しかし今日、名前を呼ばれて特別驚いたくらいだから、それはきっと随分と久しぶりの出来事だったのだろう。

 

 

──嗚呼、また余計なことを思い出した──

 

 

かつて近くにいてくれた大切だったひとたちもまた、名前では呼ばない方ばかりだった。妙なあだ名をつけられたりされたなぁ…どうりでどれもうまくいかなかったわけだ(遠い目)

 

 

いい名前だから、ぜひ皆さん、声高らかに呼んでください。

 

 

──こうすけ!──

 

 

嘘です。冗談です。

 

そんな風に呼ばれたら、所構わず、この上なく、照れます(赤面)

 

 

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【母を初めておんぶした日】

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2018年1月25日

 

母の帰宅前訪問と併せて新規介護サービス二社との契約を終えた15時過ぎ、ようやく食事の時間になった。

 

生活スペースである二階に上がれるかどうか?

 

わずか数日の帰宅とはいえ、その間に通院やデイサービスに出かけるため、毎日昇り降りする必要がでてくる。

 

今日、久しぶりに自宅内で介助した印象では、脚力そのものに大きな変化は感じられなかった。けれど、その日のコンディションに母の体力はかなり左右される。

 

 

──そんなときのために──

 

 

おんぶのスペシャリストとしてのヘルパーさんがいらっしゃるとのことで、早速今日、面会し契約した。

 

福祉用具担当者からは、大人用のおんぶ紐を提案され、それも来たる一時帰宅に向けてご手配いただくことになった。

 

サンプルで持ち込まれたおんぶ紐を使って母を背負うヘルパーさんをみて、念のため、自分でも試してみようと思った。

 

 

──ぐぅ──

 

 

立ち上がるときにはかなりの負荷が掛かるが、背負えてしまえば、どこまででも歩いて行けそうなほどの安定感がある。言うまでもなく、それは器具の効果だけではない。

 

 

──母は軽くなっている──

 

 

あえて、股関節を傷めた方の脚を軸にして立ち上がった。

 

 

──こんな日がじきに来ないとも限らない──

 

 

そのために始めたトレーニングで身体を壊すとは情けない。去年は結局、初夏から初秋まで松葉杖暮らしだった。

 

 

──もう一度、正しいやり方で鍛え直そう──

 

 

母のためだけじゃない。自分の脚で、1日でもながく立つために──。

 

今日、およそ5ヶ月ぶりに帰宅した母は、かつてここで過ごしていたときと変わらず、よく喋り、周りを笑わせていた。でも、まるで予定されていたかのように、少しずつ言葉も不明瞭になってきている。それでも可笑しなことを口にしては和かに笑う母をみると、自然と穏やかな気持ちになる。

 

いつかのころは、それが何よりも苛だたしいこともあったというのに。施設にお世話をお願いせざるを得なくなった今、ようやく適切な距離感が保てるようになったのだろうか?

 

 

──理由なんて、何もいらない──

 

 

その瞬間をお互いに大切に思って過ごせればそれでいい。

 

 

──望むのは、ただそれだけ──

 

 

こんな風に、憎まれ口を叩けるのは、家族の間だけ。当たり前のように交わしていた他愛もないやりとりが、今日はやけに懐かしく思えた。

 

 

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【丁寧に、そして静かに】

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2018年1月24日

 

27時──。

 

母の衣類までアイロンがけをしたかったけれど、自分の分だけで力尽きる。

 

 

──どんなときも、親はこうして寝る暇を惜しんで、夜なべしてくれていたんだろう──

 

 

もうそのまま眠りそうになっていたが、小一時間ほどネットを彷徨いつつ休息をとり、沸かしておいた風呂に浸かった。

 

 

──食事と風呂が、いつだって安心の場だった──

 

 

湯船に浸かりながら目を閉じると、母が家で倒れていたシーンか蘇ってきた。

 

 

──ひとつ思い出せば連鎖的にすべてのシーンが呼び覚まされる──

 

 

望まない光景を目の当たりにして慌てふためくような質ではないから、当時も特に動揺はしなかったが、他の選択はなかったのかと、今になって、つい思い返してしまう。

 

 

──無論、その選択しかなかったのだけれど──

 

 

嗚呼…疲れると、ろくなことがない。

 

 

やるべきことを進めながら、しばらくは、じっくり身体を休めていこう。

 

 

──次の出番が近付いてきている──

 

 

丁寧に、そして静かに──。

 

 

その日々のなかでみつめた心象を、何か他のかたちにして映し出したい。

 

 

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【母、帰宅前訪問、前夜】

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2018年1月24日

 

だいぶ溶けたけれど、未だに置き場所に困るほどの残雪。

 

 

──破壊と再生を繰り返し筋肉は鍛えられていく──

 

 

先の除雪による影響で喰らった裏腿と臀部の痛みを感じながら、怠けた身体にはきっといい影響があると信じて、黙々と雪を掻く──。

 

自宅前の植込みの木をすべて処理したのは、何年前のことだったろう? 母の身体に色々と起こり始めた2012年の暮れだったような気がする。

 

あの頃から、祈るように、あらゆることを整理してきた。今になって振り返れば、一番最初に手をつけるべきだったのは、自分の心だった。

 

目の前のことばかりに気を取られ、気づいたときには、自分自身を見失ってしまった──それからあらゆるものに助けを求めた。

 

 

──医療・食事・運動・書籍・瞑想──

 

 

気持ちが整えられていく実感が少しずつ湧いてきたのは、その実、ようやく最近になってからだ。

 

──もっと早い段階で心を落ち着けることができていれば、手放さずに済んだこともあったのかもしれない──

 

 

時折、そんなことをぼんやりと考える。

 

いや、いまこうしていることが、何よりあるべきかたちに他ならない。過去も未来も、今この瞬間には存在しないのだから。

 

 

──「すべては書かれている」──

 

 

何度か引用したことのある、あの小説の言葉通りのこと──。

 

 

さて、明日は母の帰宅前訪問の日。自宅環境でどの程度過ごせるかを確認することになる。

 

そのわずかな時間に、いろんなことが見えてくるはず。

 

 

──もう一度、すべてを変える必要に迫られる──

 

 

そのつもりで、母の今すべてに目を懲らそう。

 

 

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【とうに限界を超えているのはよくわかっているのだけれど、誰かに頼めることじゃないこともまた痛いほどよくわかっている】

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2018年1月24

 

もしかしたら、今年に入って初めての作り置きだろうか?

 

今日は必死に主夫の日──母の面会に行くために、お借りしている駐車場の雪かきから始まって、明日に予定されている母の帰宅前訪問のため、家の前も再び除雪。終わるなり洗濯機を回して、一息ついてから料理に着手…後片付けを残したままで、既に7〜8時間経過している。

 

 

──苦笑──

 

 

まとめて作っておけば後が楽だから…と、いつも一気に取り掛かるが、今日は料理以外のこともあったので、現在、かなりの放心状態に。

 

とうに限界を超えているのはよくわかっているのだけれど、誰かに頼めることじゃないこともまた痛いほどよくわかっている。

 

 

ネギ味噌(蒸し鶏にのせて食べたら旨い)

ひじき

鯖の味噌煮

鮭の甘酢あんかけ

鶏肝と砂肝の生姜煮

蒸し鶏

豚ロースとにんにくの芽の野菜炒め

 

 

いつもの定番と久しぶりのものを。

 

しかし…こんなに拵えて、食べきれるだろうか?

 

このところ、食べ過ぎが原因で少食気味なのに。

 

 

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