【もうすぐ母の日──あれから一年】
2017年5月11日
母が過ごした居間から今年の桜を独り眺めていたころ、あれだけ望んでいた静かな暮らしが実に味気ないものだと知った。
あれからまだ一ト月ほどしか経っていないのに、母を取り巻く状況は着実に進んでいる──。
今日、初めて母のショートステイ先へ面会に行った。
最初にショートステイを利用したのは2年前のこと。ちょうど新国立劇場での仕事が佳境に入ったころだった。何かあっても本番に穴は開けられないため、以来、上演があるときはその前後を含めてお願いすることにしてきた
──仕事が終われば母を迎えにいく──
それがこれまでの常だった。
初めての面会は、予想外に心苦しい時間となってしまった。
それはひとえに、ぼくのこころを母の表情が映しているようだから
──このところ、ずっとこうだ──
自宅復帰を目指して母のやる気を促す一方で、こころのなかでは、それは叶いそうにないことを悟っている
──今のままでは家には帰れない──
そう、遠回しに伝えてしまう自分が嫌でたまらない──。
振り返ればこの一年、延べ9ヶ月もの間、母は入院していた。足繁く見舞いに行っていたとはいえ、過ごした時間はごくわずかだ。離れて暮らす家族のようによそよそしくなっても仕方のないことだと、帰りの車の中で思った
──こうして少しずつ距離を保つことで、そのときのこころの準備が整っていくのだろう──
そのためにたくさん時間の猶予を与えてくれている母に、改めて感謝したい。
もう直ぐ母の日。
今年はどうか無事に迎えられますように。
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【明日は来ないかもしれない】
2017年5月11日
母の荷物整理に目処がついたところで、スタジオの再構築を進めている。
立春のころにもだいぶ整理したのだけれど、今度は完全に組み立て直す。その過程で、永年に渡って集めた使われないままの機材や楽器を処分することにした。
ぼくは預言者じゃないから未来のことなんてわからない
──明日がやってくる保証は、ない──
残された時間を何に充てるか? 熟考した結果、ギターとベース、コンピュータ、それから自分の身体から発する声や音、言葉に集中するべきだと結論した。
何より、もっと風通しのいい環境に身を置いていたい
──ひとつを得たら、ひとつを手放す──
介護者としての4年半もの時間に、数えきれないほどたくさんの大切な想いを手にした。だからあとは、愛するものだけあればいい。
そして身軽な気持ちになって、いつでもどこへでもいけるようにしておきたい。
今年も繰り返された母の不在は、ぼくにその機会を授けてくれたに違いないから。
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【健全なニクタイ】
2017年5月9日
昨日、母を病院からショートステイへ送ったときに受けたダメージが、自分でも驚くほど大きかったことに衝撃を受けた。結局、帰宅してからほとんど寝入る羽目になった。
──現実から逃れるように──
そんなことをしても明日は変わらないことくらいわかっているけれど、見事に動けない状態に陥ってしまった。
今朝、目が覚めてもまだ何とも言い難い鈍い感触が残っていた。布団のなかでしばらくぼんやりしながら「この感触は何かに似ている」と、そんな気がして考えてみた。
答えはすぐには見つからず、そのまま時間が過ぎるのを待っているわけにもいかないので、予定通り、自宅スタジオの模様替えに着手。まずは所狭しと収められた品々の整理整頓を始めた。
目処がついたところで、気晴らしに表にでると、想像以上のダメージの深さに改めて慄いた。心理的衝撃を喰らったあとの足元の定まらないこの感じ
──恋を喪ったときのあの感じと同じだ──
それでもあとを引かなかったのは、実際の失恋ではないことに加えて、この一年、こういうときのためのセルフコントロール術を身に付けてきたからに他ならない。
そして最近では、再びPlankにも励んで体力向上を図っている。かつて一度挫折してしまったのだが(慣れるまで本当に辛い)、今時の潮流に乗りアプリを使ってサポートしてもらうと成果が見えやすい。最初、20秒3セットでもきつかったのが、今では60秒2セットのプログラムまで到達している。
1セット目は余裕なのだが、25秒間休憩した後の2セット目以降がまさに苦行。30日の継続で最終的に5分間耐えられるようになるそうだが…達成の暁には、コーヒー、瞑想に続く習慣としたい──
残りあと20日(遠い目)
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【奇跡を期して】
2017年5月8日
病院からショートステイ先へ車で移動すること30分──。
25年前、偶然この町へ越してきた幸運をこのところ噛み締めている。
当時暮らした新宿の場合、自宅周辺に病院や介護施設はなかった。これだけスムースな移送を可能にしたのは、まさにここに暮らしたから。
到着後、自宅から預けにいく際は予め準備していく薬の仕分けを、病院から直行した今日は到着後に母の居室で行った。
──2週間──
1度の利用では、過去最長かもしれない。
施設の性質上、ここではリハビリは行われない。老人保険施設に移ってから、またゼロからのスタート。
この4年余りの間に繰り返された奇跡は、また起きるだろうか?
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【誰かのためになるということ】
2017年5月8日
「川瀬さんとお話しするのを楽しみにしている患者さんも多いんですよ」
退院直前に、病室にて介助していただいて着替えを行う母に、看護師の方がそう話しかけていた。
涙を流して別れ惜しんで下さった方もいるらしい。
経済活動に貢献できないものに対する風当たりは高齢者にさえ厳しい世の中だが、人知れず、こうしたこころ温まるエピソードがあることを見逃さないようにしたい
──今の母が家族以外の誰かのためになっている──
それは、ずっと付き添っていたぼくにとっても褒美のような瞬間だった。
でも、身体全体の動作の衰えは隠せない。車に乗り降りする際の介助を久しぶりに行ったが、全介助が必要なほどになっている。自宅復帰には程遠い状態──。
長らくお世話になった病棟からの帰り際、去年の入院時から母をサポートして下さっている看護師の方から声を掛けていただいた。実にこころのこもったお言葉を頂戴し、かえって恐縮してしまった。
毎日毎日、タフな現場に向き合っておられるというのに、まるで、疲れ切った背中をさすってもらったような暖かい言葉に、思わず…。
次いで、薬剤師の方から退院時処方の説明を受けたあと、とても優しく接してくださった入院患者さんらと挨拶を交わして病棟を後にした。
これから2週間、介護老人保健施設の空きがでるまでの間、ショートステイで過ごしてもらうことになる。
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