【ココニイル】
2018年4月21日
東京からの指令に待機しつつ、灯りをつけたまま携帯電話を握り締め布団に横になっていると、案の定、眠ってしまったらしい。
風呂でよっぽど身体が温まったのだろう。今夜はだいぶ早い鼓動を感じていた。
寒さを感じてふと目覚めると、時間は午前3時を過ぎていた。カエルの大合唱はだいぶ収まり、小編成による演奏になっている。
麦茶を飲んで喉の渇きを潤し、布団の上であぐらをかいて再びぼんやりしていると、突然、こころの静けさのようなものを覚えた。
──ココニイル──
灯りを消そうと、灯具から垂れた紐を2回、引いた。
部屋を満たしたそのオレンジ色の薄明かりは、母が最も人生を謳歌した昭和の時代の記憶を呼び覚ましてくれる。
──バレエが好きだった母が、この作品を観ることができたら──
ふと、そんなことが頭を過った。
午前4時──。
待ち侘びたはずの静けさは、一瞬にして、慣れ親しんだ揺らぎへと変わった。
母は施設で、そろそろ目を覚ますころ。
──ぼくが何をしているか?──
もう思い出すこともなくなっていくのだろう。
幼きころの母が夢見た表現の世界に、今一度、すべてを捧げよう。すべてを捧げてくれた母への、胸いっぱいの感謝の気持ちを込めて。
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