主夫ロマンティック

独身中年男子の介護録──母が授けてくれたこと。そして、それからのこと。

【味気ないひとりの夕食】

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2017年8月25日

 

22:00、遅めの夕食──。

 

買物に寄って帰宅したのは確か14時前。

 

まもなく手配していた荷物が時間通りに到着。これで今日の家事は終了した。

 

15時、汗を拭うまもなく腹を満たそうと、買ってきた格安オニギリを頬張った途端、寝不足の二日間のツケが一気に回り始めた。

 

目覚めたときにはもうすっかり夜になっていた。

 

今後、特養への入所希望を出すことになったため、今日、ケアマネジャーからいただいてきた資料に目を通しつつ、ネットで情報を集めた。

 

いくつか候補を絞ったところで、見学の予定を立てたかったところだが…当面、予定は作れなさそうだ。

 

21時、食材が傷む前に、作り置きの続きを少し。

 

完成した山盛りの野菜炒めを適量取り分け、作り置いてあった鯖の味噌煮と合わせていただく。

 

麦茶を切らしていたから、豆乳をマグにたっぷりと。

 

大変な母の一時帰宅だったけれど、こうしてまたひとりの夕食となるのは、やはりとても味気なく思う。

 

 

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【(ニコ)】

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2017年8月25日

 

顔──。

 

余っていた作品のための材料を使って即席で作った階段の転落防止用の柵。母はこれをやけに気に入った様子で、横を通る度、

 

「これ、ええなぁ」

 

と口にした。

 

何がそんなに気に入ったのか?

 

息子の細やかな気遣いに感心したに違いない!

 

と、鼻高々に想像していたら──。

 

 

「ここがな、顔に見える」

 

 

(目が点)

 

 

その視点は、ぼくにはなかった。

 

お陰でぼくにも、このパーツはもはや「顔」にしか見えなくなっている(苦笑)

 

 

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【ぼくらはこんな今を選んだのか?】

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2017年8月25日

 

午前11:25──。

 

予定より少し遅れて、母の迎えが到着した。

 

今朝は、見送るだけだったのだが、昨日の受診時に処方された三ヶ月分の薬の一包化が薬局で間に合わず、薬を受け取ってから追って施設へと向かうことにした。

 

せっかく寄ったので、ケアマネジャーと面会しつつ、一時帰宅の感想などヒアリングをお願いした。

 

 

──ふたりだけで暮らしていくのは、不可能──

 

 

それが素直な実感だった。

 

認知機能が衰えてしまった今では、いくら策を講じても、人に頼る前に行動にでてしまう。立ち上がり、歩行にもみまもりが必要な状態で、ぼくに声をかけてさえくれればお互いに安心なのに、それがもうできなくなっている。

 

それゆえに、センサーを四方八方に取り付けているのだけれど、母の行動すべてをカバーできるわけではない。

 

昼間は家事をしながら母の相手をすることもできる。そのぶん、これまで通り夜中に仕事をすればいい、と思っていたけれど、環境が変わったせいもあるのだろう。施設では起きることのなかった夜中に何度も目を覚ましてはトイレにひとりで向かってしまう。

 

作業も、そして睡眠も遮られる。気晴らしにのんびり風呂に入るなんてことはもちろんできない。

 

 

──だれか、もうひとり──

 

 

複数で在宅介護ができる状況にある人は少ないのではないだろうか? なかには老老介護という場合もある。介護に限らず、子育てだって同じだろう。シングルマザー、シングルファーザー…核家族化されて久しく隣近所との交流もない現代では、気安く頼れる人はいないに等しい。

 

 

──ぼくらはこんな今を選んだのか?──

 

 

ぼくの独り言のような話題にも和かに付き合って下さるケアマネジャーと、ときに冗談を交えながら、今後のことについて改めて確認を取り合った。今回も、100言わずとも意思の疎通が取れる方が担当してくださり、母はとても幸運だと改めて思った。

 

認知機能が衰えても、朗らかで陽気な母は、ここでもまた人気者らしい。

 

今日は戻るなり、よくして下さっている入居者の方から「おかえり」と声が上がったそうだ。

 

 

──帰る場所が増えていくなんて、素晴らしい──

 

 

盆踊りの季節だったからか、施設で憶えた東京音頭を家でも歌いながら、手振りだけして笑っていた。歌詞が間違っていたのは、もちろんご愛嬌。

 

子供のころは、みんなこんな風にして細かいことにはこだわらず、全力で楽しんだもの。

 

 

これでいい。

これでいいんだ。

 

 

母はまた、住み慣れた森のなかへ帰っていった。

 

 

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【配膳、左利きシフト】

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2017年8月25日

 

母、ショートステイ入所の日──。

 

8:30、朝食。

 

嗚呼、ひとりの生活が続いていたから、また左利きシフトで配膳してしまった(反省)

 

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【少しだけでいいから、深く眠りたい】

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2017年8月24日

 

母、一時帰宅、二夜目、22時──。

 

「岡村くん、好きぃ」と、年甲斐もなく岡村隆史ファンの母は、今夜のぐるナイ2時間スペシャルを楽しそうに見つめていた。

 

 

「久々に岡村くんの顔をみられてよかった」

 

 

そう何度も言いながら放送を楽しんでいた。

 

かつては寝床でラジオを聴くのが習慣で、彼のオールナイトニッポンにも時折り耳を傾けていたらしい。

 

「最近、ラジオはあんまり聴かへん」

 

認知機能も徐々に衰えてきているせいか、ラジオが楽しめなくなってきているのかもしれない。

 

この二日間もあまり会話にはならなかった。

 

話題にしようと何か話してもから笑いばかりで言葉はほとんど返ってこず、母は母で、脈略なく思いついたことを繰り返し口走る…この1〜2年は、その傾向がますます強くなっていた。

 

そんな兆候が見え始めていたのは、いつ頃からだったか? まだ母が料理を自分でできたころだから、5〜6年ほど前からだったろうか?

 

そのときの話題に関係のないことを、話しの腰を折ってまで口走るようになっていた。昔からその傾向は少しあったせいもあり、それが認知機能低下によるものとは思いもよらなかったから、ぼくはよく口ごたえした。

 

「話しの腰をおるんじゃないって、親が子に教えることだろ!」

 

母はどうしてぼくが怒っているかもわからない様子で、キョトンとした表情をいつも浮かべるばかりだった。

 

 

──人に見られている効果──

 

 

施設では、周りに気を遣っているのか、和やかに冗談をよく口にしている。

 

「周りを楽しませてあげよう」

「それが残りの時間の役割だよ」

 

その約束を実行してくれているのかもしれない。

 

でも、まるで舞台を終えて帰宅したコメディアンのように、一時帰宅した母は寡黙だった。

 

きっと、どうして家に帰って来ているのかさえ把握できていない。

 

「今日から幼稚園よ」

「春には小学校だね」

 

ぼくらが子供の頃にそう伝えられてもピンと来なかったように、今の母はわけもわからず、あちこち連れまわされていると感じているのかもしれない。

 

──小学校の入学式の日の朝のことは、今でもよく憶えている。

 

着物を着た母に制服を着せられて、手を繋いで駅まで向かい、どこかに一緒に行ったこと──。

 

気づくと知らない子たちばかりの部屋にいて、黒縁メガネの知らない男性が「隣の人と挨拶しましょう」というので怖気付いていたら「〇〇〇〇です。よろしくね」と、目をキラキラさせてハキハキと挨拶をし握手を求めてくる女の子に、何の反応もできず恐る恐る無言で手を差し出した、何とも気まずかった小学校一年生最初の日──。

 

 

──あの日もなぜここにいるのか? 何も分からなかった──

 

 

母は今のぼくがそうしているように、きっと丁寧に何度も何度も事情を説明してくれたに違いない。そしてぼくは、今の母と同じように、何度説明されても憶えることはできなかったのだろう。

 

自分を生んでくれた親が老いていく様子を断片的にではなく、世話をしながらそのすべてを見つめることは、言葉では言い表せないほどに重たく苦しい経験だった。それまで当たり前としてあった「普通のこと」が、ゆっくりとゆるやかにそうではなくなっていく毎日が、怖くて怖くて仕方なかった。

 

あれから途方もなくながい時間を費やして、ようやく「これこそが普通のこと」として受け止められるようになったけれど、そんな今、改めて想う。

 

 

──母を送ったとき、どうなるのか?──

 

 

早くに未亡人となった母と父親を子供時代に失った兄の気持ちを知ることが、そのときようやくできるのだろうか?

 

いや、きっとぼくのことだから、その喪失感に押しつぶされるに決まっている。

 

 

──そんなときくらい、孤独に酔いしれてもいい──

 

 

昨夜の母は、環境が変わったせいか、夜中に何度かベッドから起き上がってしまった。

 

 

──歩行が危うくなった今、起き上がり、立ち上がりの際のみまもりは欠かせない──

 

 

ぼくは仕事はもちろん、ほとんど眠ることさえできず…。

 

今夜の母はぐっすり眠っている。仕事を進めたいけれど…。

 

 

少しだけでいいから、深く眠りたい。

 

 

──明日の午前に、母はショートステイへ長期入所する──

 

 

特養老人ホームが見つかるまで、このサイクルの繰り返し。

 

 

──全国の入所待ち50万人──

 

 

新設のところに当たらなければ、2〜3年待ちは普通らしい。さあ、ここからまた気力、そしてあらゆる意味での体力が試される。

 

この1年で手に入れたセルフコントロール術を駆使して、乗り越えていこう。

 

 

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【歩けることの素晴らしさ】

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2017年8月24日

 

まもなく、股関節に痛みを憶えて三ヶ月になる。

 

まだ時折り痛むけれど、休めれば直ぐに回復するようになった。そろそろ本格的に松葉杖がいらない生活に戻れそう。

 

この間、何の根拠もなく「治る」と思ってはいたけれど、本当に完治する保証なんてどこにもないのだと、痛みを抱えている最中、想いを巡らせた。

 

 

──どうかこのまま順調に──

 

 

そう願いたい。

 

 

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【頼りになるのは「人」──電脳化を越えて】

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2017年8月24日

 

母は案じたよりもだいぶ早めに寝静まってくれた。

 

時折、居室の温度を確認しにいっては様子を覗いているが、心地好さそうに眠っている。徐々に朝が近づいているから、少し温度を高めに補正。

 

 

スマートフォンから遠隔で温度コントロール

・仕事部屋からみまもりカメラで様子を確認

 

 

こうしたツールを介護者側もスタッフ側も難なく使いこなせるようになる未来の介護環境は、きっと大きく変わるだろう。

 

 

──その頃にはぼくが被介護者になっているかもしれない──

 

 

でも、結局一番頼りになるのは「人」──。

 

顔を合わせて手と手を触れ合って言葉を交わして、たくさんの時間を過ごさなければ知れないことばかりだった。

 

自分のなかの深い闇を何度も見たし、そこから救い出されてもきた。

 

 

──「誰にでも起こりうること」──

 

 

そう身を以て感じられた経験は、いつかそばにいる誰かの闇を光で満たすために、きっと役立つに違いない。

 

喜びも苦しみも怒りも、それを乗り越えていくことも、そして、とことん楽しむことも、ぜんぶ母が与えてくれたこと。

 

 

ずっと大切にしよう。

 

 

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