主夫ロマンティック

独身中年男子の介護録──母が授けてくれたこと。そして、それからのこと。

【包丁1本40年】

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2017年4月25日

 

料理を終えて、切れ味の衰えた包丁を研ぐ──。

 

親指の爪の上で滑らせ刃のばりを取り除いたことを確認してからバナナを切り落としてみると、実にいい切れ味。断面も美しく、舌のうでの感触も全く違う素晴らしさを体感したが、やや切れすぎな印象ゆえ、わずかに鈍角に調整しなおす。

 

それにしてもこの包丁、もしかしたら、母の京都時代から使われていたのだろうか? 新宿時代からはこの包丁だったことは覚えているから、少なくとも40年モノであることは間違いない。

 

母の物持ちの良さは、昭和一桁生まれゆえという理由だけではなさそうな気がする。

 

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【自分のためなら料理は作らん】

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2017年4月25日

 

このところ睡眠時間は少ないのに、目覚めが実に快調だ。

 

眠りの浅い周期にタイミング良く起きるからに違いない。ながらく活用している睡眠の質をモニタリングするアプリの集計データがそれを物語っている。

 

せっかく早起きしたから、まだ街も静まり返っている間に主夫ロマンティックに変身。快晴を期して布団を早々と干したあとは、料理を。

 

スパイスを油で炒めるところから始まるレッドカレー、鶏ガラスープの湧いた土鍋に放り込み蓋をして置くだけで出来上がる蒸し鶏、塩を擦り込んで1時間強じっくり煮込む塩豚角煮、そして、母から教わった、ひじき…。

 

こんなに時間をかけるつもりはなかったのだけれど、気づくと後片付けまで終わったところでほとんど4時間を費やしていた。

 

それでも不思議と疲れはない。でも、差し出す相手もいないのに作るのは何とも虚しい気分だ。

 

「自分のためなら料理は作らん」

 

そんな母の言葉を、今日もまた、独り思い出していた。

 

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【福音】

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2017年4月21日

 

今夜も母の見舞いへ。

 

夕食後の時間に病室へ入ると、母はもうすっかり寝入っていた。テーブルの上にいつも置かれているリハビリ科からの予定メモを覗くと、今日は朝から午後にかけて、短い時間に3回のリハビリがあったらしい。きっと疲れているのだろうとは思ったが、そっと声をかけてみた。

 

「ああ、あんたが来てくれると、うれしい」(関西弁)

 

母はいつも、ぼくの顔を見るなりそう口にする。

 

寝入りの頃に起こされたこともあってか、今日はあまり話も弾まない。わずかな沈黙のあと、母が思い出したかのように口を開いた。

 

「ながいこと生きてきて、これは成功やったなぁと思うことがある」

 

──何かと思ってそっと耳を傾ける──

 

「それはあんたを産んだことや」

 

この、物語のようなシーンは、一体、何だ?

 

そんな冷静な分析は一瞬にして感情の波にのまれた。嗚咽を堪えるのが精一杯だった。

 

こんな気ままな日々を過ごしていられるのは、母のおかげだ。同時に、世間の親御さんが喜ぶこと──いい学校を出ていい会社に勤めて立派な社会人として家庭を持つ──を一足先に果たしてくれた兄の努力によるものだ。今、母がこうして何の不安もなく入院が続けられているのも、兄がいてくれるおかげ──。

 

ぼくはきっと、毎日何かをした手応えが欲しくて、こうして母を見舞っているだけなのかもしれない。多忙な兄の、またはぼくと入れ替わるように先立った父の代わりに、ぼくにできることをしている…。

 

これは、誰からもとがめられることにない、都合のいい言い訳なのだろうか?──。

 

帰り道、ずっとそんなことを考えていた。

 

そして、突然そんなことを言い出す母のことが少し心配になった。でも、確かにその言葉を受け取ったから、安心しておくれ。

 

この母のもとに生を授けられた幸運を、きちんと言葉にして伝えたい。

手遅れにならないうちに。

 

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【起きてもいないことは考えない】

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2017年4月20日

 

母が入院する新病棟は、伸びやかな光が心地よく射し込んでくる。

 

見舞いに行く側にとっても…そんなことを考えるたび、10年以上前に関わらせてもらった特養老人ホームのための作品プランをしていたころを思い出す

 

入所者だけじゃなく、

働くスタッフのみなさん、

それから、見舞いにくるご家族の方が足を運びやすくなるように

 

そんな、プロデューサーの言葉がとても印象的だった。

 

いま振り返ると、あの頃の自分は、この4年の、介護者としての時間を想像さえしていなかったのだから、我ながら、呆れる。

 

制度上の入院期限が迫るも、次の段階に進む段取りは、なかなか進展がない。心臓の具合を見守りながらのリハビリは、1日3回の予定が、遂に1回にまで制限されている。

 

表情は元気そうだけれど、いつ何が起きてもおかしくない

 

──起きてもいないことは考えない──

 

そのための鍛錬をこの1年、積んできた。

 

あの闇に沈むのは、そのときを迎えてからでいい。

 

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【鶴、5色目】

https://www.instagram.com/p/BTHFAE5DiDX/2017年4月19日

 

鶴、5色目──。

 

そろそろ折り返しに近づいてきたのだろうか?

できたそばから吊るしていく方がよさそうな気がしてきたが、とにかくまずは無心で折り続けたい。

 

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