主夫ロマンティック

独身中年男子の介護録──母が授けてくれたこと。そして、それからのこと。

【時機 ── 一ト月ぶりの面会と親子インタビュー(1)】

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2019年2月18日

この6年の間、こんなにも母と顔を合わせなかった日々はなかった。

この一ト月、面会が中止されていた。施設内でインフルエンザが発症したそうで、落ち着くまでの間、一切の入館を禁じられた。

その連絡が届いたのは、母の誕生日から数日経ってからだった。そのときぼくは、あまりに不発に終わった誕生会の後味を解消しようと、ある贈りものを準備している真っ最中だった。


──想い出の写真立てを飾ろう──


居室に置いてある兄とぼくが映った写真をみて、母はいつも笑顔を浮かべている。その様子から、常時目につくところに、母の記憶の支えになる写真を飾りたいと思った。これまで撮りためた母との日々と、母のアルバムから選んだ人生の名場面を集めてプリントし、額装を施した。

古い写真のなかには、母がぼくたち兄弟を連れて京都から東京にでてきたころの様子を写したものやぼくの小学校入学式に桜の木の下で撮られたものもある。最新の写真は、去年の3月5日に自宅で撮影したものだ。父と母の結婚記念日に一時帰宅が重なったので、大きな花束を贈って、いつも母が腰掛けていた場所で記念撮影をした。あの日のことを思うと、およそ1年で随分と子供がえりは進んでいる。


──人は環境に影響される──


そのことを改めて思い知らされるこの頃──ぼくの選択は正しかったのかと、絶えず自問させられる──介護者が背負った宿命だ。

贈りものを用意していた日、プリント端末の前で四角いプリントができると知るまで、このアイデアはなかった。調べてみると、端末によって対応していない機種があるらしく、たまたま出向いた先で対応機種に出逢わなければ、こんなに素敵な額装にはならなかったはずだ。しかも9分割されたスクエアの額も、そのとき店頭で見かけるまで存在さえ知らなかった。


──インスタグラム3D──


育まれた職能を活かすと、こんな仕事もできるのだな、と、完成した額を眺めながら他人事のように関心していた。

品はすぐに手渡せるはずだったが、インフルエンザという見えない壁がぼくたち親子を遮った。


──それから一ト月──


すっかり昼夜逆転生活に舞い戻り明け方から眠っていたある日の正午前、電話が鳴った。普段はiPhoneの機能をフル活用して、就寝中は施設からしか着信しないように設定している。つまり、眠っている間に鳴る呼び出し音は、施設から以外にはありえないのだ。


──なにごとだろう?──


施設からの電話には、そんな不安が必ず頭を過る。

その日の連絡は、予想していた通り、面会中止解除の報告だったが、予想外なことも伝えられた。


──親子インタビューをお願いしたい──


毎月送られてくる会報に掲載するのだという。足繁く面会に行ってはスタッフの方とも対話しているぼくと、いつも笑顔で周りを楽しませている母の組合せは、まさに適任に思える──迷うことなく、ふたつ返事でお引き受けすることにした。

面会が解除になる日に合わせて、今度は、準備した額をどうやって母の居室に設置するか? その解決方法を急いで探す必要があった。


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