主夫ロマンティック

独身中年男子の介護録──母が授けてくれたこと

【1,900日──どうしてひとは、感情を露わにすることを躊躇うのだろう?】

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2018年2月23日

特別養老老人ホームの入所面談の日時が確定した。打診通り、3月14日午後、現在母が入所している介護老人保健施設にて、本人、ぼく、そしてケアマネジャー同席のもと行われる。

母が事故を起こしてから今日まで、およそ5年半。日数にして、わずか1,900日足らず──その時間がどれだけのものだったのか? ながかったのか? 短かったのか? よくわからない。

確か、3年ほど経つまでのころは、それまでに母に起きた出来事を細かく憶えていられた。しかしそれ以降は、日増しにおぼろげになっていった感覚がある。

入退院が繰り返され、その都度、帰宅後の生活を支えるために複数の介護サービスと契約を交わし、在宅介護時には日常的なリハビリと通院のサポートが増えていった。当然のように、仕事との狭間で身動きが取れなくなり、逃げ場を求めて街を彷徨い、そばにいてくれた大切なひとからの理解も喪った。すべてにおいて追い詰められていて、何もかも忘れたかったのだろう。


──このままではイケナイ──


それからだった。書くことで、心を静めたかった。大波と化してしまった自分の心を。穏やかに揺らめく水なものように、再びあの美しさを取り戻したかった。

在宅で母を看ることができなくなって、13ヶ月。老健に入所してから9ヶ月。特養の入所申請を出して3ヶ月──過ぎ去った時間を点で追えば、一瞬の出来事のように思えるのかもしれない。でも、それを振り返る「この日々の記」に改めて目を通すと、自分の心のざわめきが、動揺が、葛藤が、強さと弱さが、克明に思い出される。

こうしてここに記し出す前、かつて闇に沈んだ自分を省みた。だからいまは、慎重に言葉を選び、可能な限り正確に、そして素直に感じたことを記そうと努めた。

しかし、熟考を重ねて書いたわけではない。思いついたままを書き留め、誤字脱字の確認をした程度で公開してきた。いま読み返すと、言葉足らずの部分があるし、感情に任せて書いているところもある。もちろん、己のセンチメンタルに酔いしれているところも──。

それでも、今日までどうにか前を向いて来られたのは、ここに綴ってきたからに他ならない──それだけは確かだ。


周りがどう思うかなんて、考える余裕はなかった。


──ぼくは今、自分と母のことで精一杯だから──


ひとはどうして、感情を露わにすることを躊躇うのだろう?


子供もころ、だれかを素直に「好き」と言えなかったのは、周りから噂されて、からかわれるのが嫌だったからだ。

大人になって、自分の意見を曲げるようになったのは、変わった面倒な人だと見られて、社会のなかで孤立することを恐れたからだ。

ネットに紛れて、オフラインでは語れない純粋な気持ちを吐露することさえできないのは、「メンヘラ」だのと揶揄されて、炎上対象になりたくないからだ。


──この宇宙のなかで、自分の意のままにコントロールできるのは、この己だけ──


感情を抑えている暇は、ない。


──ぼくは、自由だ──


そうは言っても、口にできないことはたくさんある。いやむしろ、その方が多いくらいだ──誰彼と等しく。


母をみまもりながら、どうすれば互いに望む今が過ごせるのか?

そればかり考えてきた。

哀しいことに、決定的な解決策はひとつしか思い浮かばなかった。


──莫大に稼ぐ──


この資本主義のなかで、それしか方法が見当たらなかった。しかし…それを果たせる目処は、未だにたっていない。むしろ、日々のことに追われる始末──。


まだ何も決まったわけじゃない。先に進んだとしても、それは「後戻りできる選択」。いつか叶う日が訪れたら、また一緒に暮らせばいい。


我が家が育んできた、幸運を信じて、どんなときも、前を向く。

今のぼくにできることは、それしかないから。


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