主夫ロマンティック

独身中年男子の介護録──母が授けてくれたこと。そして、それからのこと。

【鼓動はいつからこんなに力強く脈動するのだろう?】

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2018年3月6日

早朝5時──目覚ましの音で目覚める。

つまりそれは、昨夜も母は一度も目覚めることなく夜を過ごしたらしい、ということになる。一度も睡眠を邪魔されなかったのは助かるが、なんだか嫌な夢を見た。


──ギターがなくなる──


ギター合宿にでも向かっていたのか、憧れのギタリストと仲間たちとギターケースを抱えて電車移動をしていた。山積みになったケース群の相当下の方に紛れ込むように置かれたぼくのギターは、あるとき、どういうわけかなくなっていた。


「盗まれたんだね」


仲間のひとりがそんなセリフを吐いたときでさえ、まだ夢だとわからずに眠っていたようだ。

目が覚めて、それが夢だとわかったときから、いよいよ今日が慌ただしく始まる。

母が寝静まっている間に、朝食の食材を買出しに行きたかった。まだ夜が明けきらぬうちに家を出て、そのついでに、回覧板を返しにいったまではよかったが。


──小さく指先を切る──


回覧板を郵便受けに入れようとしたら、なかなか奥まで入らず、押し込もうと利き手の人差し指で押し込んだとき、ホッチキスの歯が引っかかったらしい。


──軽い出血──


押さえるものがないので、親指で圧迫しながら止血するも、わずかににじむ血の様子に比例して、痛みが残った。


「夢のツケは、こうして現実になったのか?」


ギターは目の前にある。でもこれじゃ、しばらく全力では弾けない──料理中、未だ指を切ったことがないのは、まるで奇跡のよう。日常のほかのシーンでも気をつけている方だけれど、まだまだ足りない──昨日の夜から、だいぶ疲れていたから…だなんて、そんなことを言い訳にしてはいけない。


でも、いいこともあった。目覚めてしばらくぼんやりしている間のことだ。落ち着きたくて、布団のなかで胸に手を当てて、いつものように心の暖かさを感じていたときだった。


──鼓動はいつからこんなに力強く脈動するのだろう?──


すぐさま、専門家に質問を送った。

新しい物語のための手がかりになりそうな予感がしている。


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