主夫ロマンティック

独身中年男子の介護録──母が授けてくれたこと。そして、それからのこと。

【あれから3年】

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2017年7月31日

 

昨日の夜、黒猫に逢った。

 

常軌を逸するとはまさにこのことかと我ながら呆れるほど連日昼夜問わずに敢行した〈GET WILD REMIX〉。そのための作業を明け方まで行って眠りに就こうとしたもののかなわず、結局不眠のまま朝一番で血液検査を受けるため、お世話になっているクリニックへ向かった。

 

「寝てないんですが、検査を受けても大丈夫なんでしょうか?」

 

そんな冗談交じりの会話から問診がスタート。ぼくの暮らしぶりに理解ある主治医は、最新の血圧データを確認しながら

 

「それだけ仕事に没頭してもこれだけいい数値ならまず安心ですね」

 

と、いつもの穏やかな笑顔を絶やすことなく伝えてくれた。

 

 

──ここへ来てから3年ほどがたった──

 

 

お陰で今があるのだと、自然と感謝の気持ちが湧き上がった。

 

検査のため空腹のままだったから、朝食を食べて帰ろうとするも、時間はまだ10時前。ほとんどのお店は未だ支度中だった。諦めて帰宅する間も、REMIXの仕上がりを絶えずチェック。気になるところがまた見つかり修正リストに加えるも、家に着いたところで力尽き、ようやく入眠を果たした。

 

目覚めたのは、確か20時ごろ。まだ今日の時間が残っているうちに、作り置きのために食材を買い求めに出ることにした。

 

夜風の心地よい静かな時間。カチカチと松葉杖を着く音を立てながら夜道を歩いていると、一匹の黒猫がぼくを見つめたまま立ち止まった

 

「ひとりは気楽でいいものだよな〜お互いに」

 

そう声をかけると、過ぎ去ろうとしていた猫がまた立ち止まってぼくを見つめた。

 

夜中に逆光を浴びた松葉杖姿のこの巨漢を、あの路面から近い視線で見上げたらどんあ不思議な物体に見えたのだろう? いや、もしかしたらあの黒猫も、ぼくのことを自分を映す鏡のように見つめていたのかも知れない。

 

LEDに切り替えられているはずの街路灯は、水銀燈のような薄い緑色を含んだ光を放っているように見えたのは気のせいだろうか? なんだか悪くない色合いだと思えたのは、その光の色に包まれていた愛しい場所の記憶があるからに他ならない

 

──そこを巣立って3年──

 

そんな風に感じた夜は、昨日が初めてだった。

 

 

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