主夫ロマンティック

独身中年男子の介護録──母が授けてくれたこと。そして、それからのこと。

【3度目のワクチン接種──母と婚約者 ふたつの死(9)】

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⁡2022年2月9日

昨日はひどく疲れた1日だった。抑えきれない感情をノートに綴りながら、止めどなく泣き続けていた。ノートは、1日1度開けば済むことがほとんどだが、ときには数度、開かれる。昨日はまさにそんな1日になった。明るい方から暗い方へ……高いところから低いところへ……あらゆる感情の迷路を行ったり来たりしながら、出口を求めて彷徨う──その繰り返しである。

泣き疲れてぼんやりしていると、昨今の感染拡大に関する報道が目についた。


──早く3回目のワクチン接種をしたい──


居住区が提供してくれている最短の予約を既に取ってはいたものの、1日でも早い方がいい──そう直観して、大規模接種会場の予約サイトにアクセスした。すると、既に埋まっていたはずの今週の予約にキャンセルが見受けられた。こんな心理状態で接種するのはどうかと迷う気持ちもあったが、ぼくの願いの方が勝った。


──1日も早く社会機能を正常化させたい──


その一端を担うことができるなら、未来の自分の身の不安よりも「今」、確かなことをしたい──その一心で接種を決めた。

老衰で旅立った母と突発的な病いで急逝した婚約者──そのふたつの死はウィルス感染に直接関連するものではないが、この混乱が続く渦中で、いずれも1年8ヶ月もの間、ぼくと会うことが叶わなかったことを思うと、心身にどれだけの負担がかかっていたか? そのストレスが、寿命を縮めた可能性はゼロとは言い切れない。


──間接的コロナ死──


そう呼んでもおかしくないと、ぼくは考えている。

そして、一ト月の間にふたつの死を見つめた今、想う──。


──ぼくのような悲しみを、他の誰かに味わって欲しくない──


今日、この会場で、ぼくと同じ境遇で接種に望んでいる人は、恐らくいないだろう──接種後の待機場所でぼんやりしながら、そんなことを「また」思い浮かべていた。

およそ一ト月前、彼女を荼毘に付した夜、東京に戻ってきたときにも同じことを思った。


──1400万人のなかのひとり──


それは、単なる死別ではなかった。あの夜、あんな最期を見届けて東京の街に佇んでいたのは、きっとぼくだけだった。


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