主夫ロマンティック

独身中年男子の介護録──母が授けてくれたこと

【目と耳の検診から知る心身チューニング法(1)】

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2021年10月13日

1番──。

こんな位はもう久しく味わっていない。そんな有難いはずの位が、まさか病院の受付番号だったなんて皮肉だ。

パンデミックの最中、最も酷使したであろう目とみみに違和感を感じ始めていたのはいつからだろう。身体に備えられた機能に疎かにできるものは何ひとつないため、不備を感じたときには即、検査にいくのだけれど、信頼の置ける眼科医がいる病院では、このコロナ禍、一時、外来の受付が停止されていた事情もあり、伺う機会を逃していた。

しかし、9月ごろには、視界に浮かぶゴミが終始見えるようになり、市販薬では改善されず、かつ耳には時おり、突発的かつ断続的に、耳を刺すような耳鳴りが繰り返されるようになり、加えて、外耳に痛みを感じ始める状態になった。


──過集中──


近年、技術と経験と環境が整ったおかげで、何事も徹底的に作業を追い込めるようになってきた。端的に言えば、一音一音の磨き度合いを際限なく行ってしまうということである。ようやく理想としていた音作りが叶い始め、それに伴いより高い品質が提供できると感じたら最後、もう、入り込んだZONEからは出られなくなる──そんな傾向を自ら客観視しては危険を覚えてはいたものの、「理想」という名の誘惑に完全に溺れてしまっていたのだ。

10月──感染者数が減ってきたこのタイミングで受診しなければ、冬場になるとまたチャンスを逃してしまう──そう感じて、長い待ち時間を要する眼科受診と合わせて、耳鼻科の予約を入れた。

母の付き添いの頃から通い慣れたこの病院も、長らく続けられていた改築と増築が完了し、当時の面影は薄れている。受付の事務スタッフには男性職員の方も増え、支払いシステムは現代的に機械式へと移行していた。院内を歩くと、親御さんの付き添いと思われるご家族の方の様子が何組か目に入ってきた。陽気に日常のことをお喋りする方、会話ができない親御さんの傍でただひたすらに沈黙している方、意思の疎通はとれないまでも、子供のように駄々を捏ねる親御さんの対応に疲れ果てたのか、視線の先が定まらぬままに無表情で遠くを見つめる方・・・。


──ぼくは、このすべてを経験した──


病院内でそのことを思い返して苦しくなることはなかった。しかし瞬時に、自分の今後の人生の進路決定において非常に重要になると考えていた40代のほとんどを、母の介護に費やさざるを得なかったことについて、否応なしに振り返らざるを得ない心境に陥った。

一方で、いずれ迎える親の介護を、40代という比較的体力のある時期にできたことは、むしろ幸運だったとも思えた。ほとんどの場合、50代後半から60代にかけてそれが現実となると考えると、より過酷な日常に直面することが予想できる。

同時に幸いだったのは、そんな時期でさえ、恵まれた仕事の機会を得られたことにある。


──たとえこの先が途絶えてしまっても構わない──


そう思えるほどの、まさに「作品」と呼ぶに相応しい仕事に関われたのである。ぼくにとっての「作品」とは、至高の表現のことだ。つまり、この世にこれ以上、純真な想いを込めた仕事は、ない、ということである。それに関われたことほど幸運なことは、ぼくにとっては存在し得ない。だからこそ、きっと遠い未来に振り返ったとき、40代は公私共々、「満たされていた時代」として記憶の底から呼び覚まされることだろう。

午前9時前──眼科の予備検診から1日が始まった。視力検査を終えたのち、久方ぶりの受診ということもあり、まず先に医師による問診が行われ、その後、恒例の「瞳孔を開く目薬」が点眼された。15分ほどで瞳が開き切った状態になる。これで眼球の隅々まで検査ができるというわけだ。

明るい光りを眼に当てられた状態で検査は進む。過去にも何度か同じ検査を受けたけれど、今日ばかりは、わずかに痛みを感じるほど、目が強く染みる思いがした。差し込む光に反応して、医師の指で見開かれた瞼を瞬時に閉じたくなる──それほどの刺激だった。

ゴミが浮かんで見える問題に合わせて、疲れるとものが二重に見える症状もあると訴えたところ、左右の眼球の位置にズレがある可能性を指摘され、追って検査を行うことになった。ついでに、コロナ禍に受けるのを控えていた緑内障検査もお願いすることにして、眼科の検診を終えた。

今日わかったことは、極度のドライアイだということ。原因として、眼を酷使している環境は言うまでもないが、それによって酸素不足に陥るのだという。そう伺って、つまりは、血流不足であると自分では解釈した。


──自律神経失調──


結局のところ、大元の原因はそこにあると認めざるを得ない。

処方薬には、3種の点眼薬が用意された。これらを1日合計13回打つ──不覚にも、このおかげでZONEに入り浸ることから自ずと解放されることとなった。


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