主夫ロマンティック

独身中年男子の介護録──母が授けてくれたこと。そして、それからのこと。

【ギフト】

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2018年9月21日

全力主義──ほどほどにしないと心身が持ちこたえられそうにない。

相変わらず音作りに度が過ぎて、昨日も一日中、眠り続けていた。


「長時間眠れるのは、若い証拠」


いつだったかそんな話を聞いた憶えがある。眠ることにも体力を使うのだそうだ。そして、実際にしっかり眠れなければ長時間、床にいることさえできない。あまり眠れなかった時代を一時期過ごしていたからよくわかる。

昨日はぐっすり眠ったお陰か、だいぶ疲れも癒えた気がする。そう、ただ「そんな気がする」だけなのだ。今月は半分ほど体調を崩していたし、その疲れも回復してしきっていない。もっと重点的に休息を…そう期している。


──脳の疲れ──


最新の研究では、疲れの原因は、脳が疲れていることによるものらしい。

90年代初頭──情報過多の時代と言われた。当時でも溢れるような情報の渦の中にいたが、あれから30年近く過ぎて、今や人類は、無限の刺激を脳に与え続けているようなものだ。1日2日分は働いて、世界のどこにいても気の休まる暇がない。

そんななか、期せずして母の介護に向き合う時間が、ぼくの40代のほとんどを埋め尽くした。人としてもキャリアとしても最も、生きることに、そして仕事に専心する時代──その幕開けと共に、まるでぼくを試すかのように、「そのとき」が訪れた。

世の中よりもひと足早く、働き方改革を断行しなければいけなかったのだが、30代の体力の余韻にまかせ、力技で乗り切ろうとした。あまりに突然に突きつけられた「介護者」としての任は、ぼくの思考回路をすべて太断ち切って、襲いかかる目の前の問題を次々クリアする──まさにゲームのような毎日を過ごすことになった。

そうしている間にも、たくさんの気づきを得た。それが何よりの恵みだった。


──母からの最後の贈りもの──


この試練は、まさに「ギフト」だった。

今年の春の終わりに、母が特別養護老人ホームに入居してから、ぼくはあまり料理をしなくなった。入居前、最後の一時帰宅となるであろう機会に母と2人で囲んだ我が家の食卓の図は、母との忘れがたい想い出のひとつだ。

もし、母がこの先この家に帰宅を果たせたとしても、かつてのように食卓を2人で囲むことはできない。あの日、ぼくの手作りで母の好物を頂いた2人の食卓も、まぎれもない贈りもの。まるでそれは、儀式のような時間だった。

昨夜、真夜中に目が覚めて、数日前から作ろうと食材を揃えていたタイカレーを拵えた。お土産でいただいたペーストが実に美味しい。

この6年の間に、母から受け継いだレシピを超えて、色んな料理を手がけるようになった。母がここにいずとも、これは、母が55年ものあいだ守り通してくれた暖かい食卓──たとえ今はぼくひとりのためであっても、絶やさずにいたい。


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