主夫ロマンティック

独身中年男子の介護録──母が授けてくれたこと。そして、それからのこと。

【慌ただしい午後に出逢った木】

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2017年12月26日

 

珍しく早起きして、朝一番の時間にしか上映していない映画を観に行った。

 

出勤ラッシュから少しだけ遠のいた時間に電車に乗っていると、母を預けている施設から着信があった。下車して伝言を聞くと、母の義歯にトラブルがあったらしく折り返してほしいとのこと。映画館に向かいながら電話を入れた。

 

最初の報告では、一部が折れてしまったとのことだった。自由診療で入れている義歯ゆえに、修正にはまたかなりの追加料金が発生しそうだと嘆息しながら朝の喧噪のなかを目的に向かって急いだ。

 

それからおよそ2時間半のち、ちょうど昼どきに映画館を出て食事に向かうころになって電話をオンラインにすると、上映の合間に複数の着信と伝言が残されていたことを知らせる通知が連続した。

 

内容を確認するとかなり慌てた様子だったので即座に折り返す。すると、折れた義歯の一部を誤飲した可能性があり、もしもその場合は体内の画像撮影をした方がよい、との打診があった。

 

破損の具合を口頭説明され把握するのはかなり困難だったので、現代的に写真を撮影して送ってもらった。

 

ぼくの記憶の限りでは、特に問題は見受けられなかったが、とにかく今から確認のため施設へ伺う約束をして家路を急いだ。

 

しかし、こういうときに限ってドラマはつきものである。

 

 

──電車不通──

 

 

自宅最寄駅のひとつ手前で折り返し運転となってしまい、やむなく下車。時間には少し余裕があるようだったから、ひと駅、歩くことにした。

 

帰宅してから支度を改めて施設に向かうと、スタッフの皆さんが心配そうな表情で迎えて下さった。挨拶もそこそこに、母の居室へ向かって、義歯を確認。寝ていた母を起こし、装着した状態でもチェックして問題ないことを確認した。

 

ケアマネジャーは恐縮しきりだったが、思い込みで「大丈夫」として問題が流される方が問題なので、むしろ、問題ないことを確認しあえる対応をしていただいたことに感謝を伝えた。これまでと何か違うと気付いて下さったのは、口腔ケアを担当されたスタッフの方だという。お話を伺うと、本当にわずかな差を憶えていて下さっったようで、万全を期して確認の連絡を入れて下さったのだそうだ。

 

 

──頭が下がる──

 

 

ケアスタッフひとりあたり数名を看なければならない体制で、かつ入居者の入れ代わりも激しいというのに、少しの違いを見逃さなかったことに感激した。今後は、治療の経過もきちんとこちらから申し送りできるよう、最新の状況と画像をお預けすることを約束した。

 

そんな慌ただしい午後だったが、穏やかな瞬間もあった。途中下車を強いられて初めて歩いた住宅街で、今では珍しいくらい大きな空き地と出逢った。敷地の奥には立派な木が立っていた。

 

「また介護施設でもできるのかな?」

 

そんなことを想像しながら立てかけられていた建築計画を確認すると、どうやら集合住宅が建つらしい。

 

自宅の近所にも、最近大きな邸宅が取り壊されて建築予定地ができた。かつてそこには空高く、壁のような存在感でそびえていた数本の木々があったのだが、それらまで切り倒され、今は完全な更地にされてしまった。

 

今日出逢ったこの木は、果たして今のまま保存されるのだろうか?

 

 

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