主夫ロマンティック

独身中年男子の介護録──母が授けてくれたこと。そして、それからのこと。

【会いたい──千羽鶴あと100羽】

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2017年6月26日

 

千羽鶴18/20色目は、若草色?

 

赤や黄の、目に刺激のある色が続いたあと、終盤に差し掛かり優しい緑系となった。そういえば、始まりに選んだ色も緑だった。子供のころ、ぼくが緑色が好きだと気づかせてくれたのは、やはり母だった。

 

夕方、洗濯物を届けに昨日に続いて施設へ向かった。日曜日ということもあってか、今日は面会者が多い。

 

いつも母のことを見守って下さる入居者の方とお話しすると

 

「今日、娘が来てね。もっと身体を動かしなさいって意見されちゃった」

 

と。

 

それでもなぜだか表情はほころんでいた。気のせいか、いつもより口数も多く感じる

 

──やっぱり嬉しいんだろうな──

 

母もそうだ。

 

ぼくが顔を出すと周りのみなさんにいつも同じ紹介をしてくれる

 

「この子、未熟児だったの。こんなに大きくなって。食事も何でも家のことを全部やってくれるの」

 

そう話しているときの母はとっても朗らかな表情をしている。

 

話しに夢中になる母をみなさんにお任せして、ぼくはひとり母の居室へ向かった。仕上がった洗濯物を備え付けのチェストにしまっていると、カーテンで仕切られた向こう側で、お隣の入居者の方が名前を呼び始めた。

 

どうやら息子さんが面会に来たと勘違いしたらしい。

 

ぼくが部屋を去るまでずっと名前を呼び続けていた

 

──息子さんはいつも日曜日に会いに来てくれるのかな?──

 

泣いて笑って喧嘩して…お互いに憶えていられないくらいにたくさんの出来事と向き合って皆生きていく──

 

こうして残された時間の方が短くなった今、「会いたい」と思える誰かがいる──

 

たとえ修復できない溝があるとしても、

今はその所在さえわからなくても、

2度と顔を合わせたくなくても、

口を聞いてもれなくても、

もうあまり記憶になかったとしても…

 

名前さえ思い出せなくなっていても…

 

──人が定めた理屈を超えた、どこまでも変わることのないかかわり──

 

それが「家族」というものなのだろう。

 

その一員であることに何の疑問もなく、それが当たり前のこととして過ごしていた日々を、今はとても懐かしく想う。

 

千羽鶴、残り2色。あと100羽。

 

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