主夫ロマンティック

独身中年男子の介護録──母が授けてくれたこと

【今日という名の贈りものを再び】

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2020年3月25日

「この危機を乗り越えて生き延びることができたら何をしようか?」

風水的には全く勧められないらしい西陽の射す台所でコーヒーを淹れるなどしてひと息つきながら、近ごろ、よくそんなことを思い浮かべる。

ここはぼくのお気に入りの場所。介護者として母と過ごした日々に昼夜問わず独り過ごし、多くのことを授かった「気づきの場」でもある。今日もこの場所で、「気づきのとき」が訪れた。


──何か特別なことはないだろうか?──


例えばスカイダイビングをやってみるとか、これまでしたことがなかったことは楽しいだろうか? と想像を巡らせるも、実際のところ、少しも興味が湧かない。

ではこんなのはどうか?


「五十路からのダンサーデビュー!」


こんな風に得意の妄想力を暴走させてみても、なんら高揚しない。いまこの瞬間、心から思い浮かんでくる「本当に欲している出来事」はみな、特別なことではなかった。



馴染みの酒場で気のおけない仲間たちとどうでもいい話に興じたい

大切な人と延々とダラダラ過ごしたい

まともな会話はできずとも母に会いたい

変わらぬ日常を丁寧に生きたい


──すべては今まで通りのことだった。


しかし今となっては、「奪われてしまった日常」のこととなった。


──「日常」こそが特別──


気づきのときが訪れた。

誰かの言葉にこんな一節がある。


「今日は贈りもの。だからプレゼント(present)というのさ」


昔、誰かが教えてくれたその言葉を思い出し、深く深く、いま生きている幸運を噛み締めた。


──この危機に見舞われている今も贈りものなのだろうか?──


人はいつだって、特別な日常がそばにあることを忘れてしまう。それをこんなに極端にかつゆっくりと迫りくる形で再び痛感させてくれたことを「教訓」という名の贈りものだと捉えよう。困難から学び前進できる能力こそが人類の叡智に他ならないのだから──。

生き延びることさえできれば、ひとはどうにかする。歴史が物語る通りに。


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