【チーズケーキを頬張り「いまこのとき」を想う】
2020年3月8日
この冬は、ずっと調子を崩したままだ。
昨晩秋の出張中、突如襲われた呼吸困難──主治医によれば、肺の音を聴く限り肺炎や喘息ではないという。逆流性食道炎による食道への胃酸上昇で刺激され気管支炎を起こした・・・と考えられるとのことで、胃薬など処方され経過をみている。
日常生活にはさほど支障はないうえ、状態はゆっくりと良くなっている。なのであまり心配はしていないが、そんな最中、世界は大きく揺るがされ始めた。
「健康体であれば過剰な心配はない」と言われているが、いまの自分がいるのは、その枠の外。
──外部との接触は最小限にすべし──
自らそう決めて、最近は、外出も食材の買いものにでるのみとなった。
日ごろからあまり出歩く方ではないが、こういう状況でやはりどこか負担を感じているのだろう。その憂さ晴らしか、遂にこんな嗜みに手を染めた。
──チーズケーキを作る──
母の介護がきっかけではあったが、料理をするようになって、日々、驚きと気づきを得ることが多くなった。
「まさかケーキを作る日が訪れるだなんて」
仕上がった品を頬張り、改善点を考えながらその驚きにひとり静かに興奮していると、いつもの思索癖が暴走し始める。
「次に何が起こるのか? わからない」
母の介護をしながら常々考えてきたことがまたも頭の中を駆け巡る。そしてその真実を突き詰めていく──。
「今日、こうして生きていることさえ、ぼく自身知り得なかったこと」
──今があることこそが奇跡──
母が不調に見舞われて以降、この7年半近くの間、料理をしている時間にあらゆる事象について考察を巡らせた。そこから授けられた数えきれない気づきは、まさしくぼくの宝となっている。
今まさに、明日があるかどうかさえ脅かされつつある。だからこそ、いまこのときを全力で生きたい。そのためにも、健康な心身を1日も早く取り戻す──今できることは、無理せず、そして楽しく日々を過ごすこと──ぼくにできるのはそれくらいしかない。
こんな調子でも食欲がさほど衰えなかったのは幸運だったと言えよう。強い身体を授け育んでくれた母に、改めて感謝の念が募る。
母が入居している特別養護老人ホームは、もちろん現在、面会制限中──予定日通りであれば、次に母に会う頃には、きっと桜は満開になっているだろう。母の笑顔がいつまでも朗らかであることを祈りながら、その時を待ちわびたい。
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