主夫ロマンティック

独身中年男子の介護録──母が授けてくれたこと

【もう一度、音楽のある暮らしを】

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2018年6月21日

母が入居している特別養護老人ホームは、全部屋個室となっている。

ならば、その環境を活かして、母に再び、音楽のある暮らしを──入居前からそう決めていたことを、ようやく実行した。

当初は、使いやすいように、ポータブル型のCDラジカセで対応しようと思っていたが、やはり、少しでも自然な音がするシステムにしたいと考え直し、小型のCDコンポを導入することにした。

先日、品が届いたので、前回に引き続き夕食どきを狙って施設に向かった。

既に夕飯を待ちわびて居間で過ごしていた母への挨拶も手短に、足早に居室へひとりこもってコンポを組み立てた。

準備してきたパヴァロッティ歌唱による〈誰も寝てはならぬ〉の各バージョンを収めたCDを再生して音のチェック──母のお気に入りの曲だ──しかし、まだスピーカーがエイジングされていないこともあるのか、期待していた出音が鳴らない。

マニュアルをみながら音質調整を試みるが…何も手を加えていないカーステレオの方が心地よく感じるレベル──。

母が聴き込んでくれたら、きっと音も馴染んでくるに違いない。それを期待することにしよう。

設置を終えて、最近の母の様子などを職員の方に伺ってから、食事の様子を確認しに居間に顔を出した。

周りの入居者の皆さんにとっては、身体の大きなぼくは特別珍しいのか、たくさん声をかけてくださる。


「いっぱい食べるの?」
「立派なお腹ね」
「お相撲さんみたい」
「いい息子さん」


母はその言葉を受けて、いつものように和かにしながら、ぼくは次男だということを何度も繰り返し説明していた。

そのせいで食事への興味が失せたのか、途中でほとんど食べずに箸を置いたあと突然ご立腹となり、器をテーブルの中央に寄せて自分から遠ざけてしまった。


「もう食べません」


近ごろ、こうした態度がよく見受けられる。認知力の低下が影響しているのはもちろんだが、環境の変化に伴って、言葉にし得ない心の叫びが積み重なっているのではないかと、案じている。

音楽が、もう一度、母の穏やかさを呼び覚ましてくれるといいのだけれど。


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