主夫ロマンティック

独身中年男子の介護録──母が授けてくれたこと

【母への償いのために】

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2018年5月1日

コーヒー生活を始めたのは、2016年初頭からだった。母との暮らしに息が詰まってしまい、何か気を紛らせるものを、と、コーヒーを選んだのは、必然だったのかもしれない。


──香りを聞く──


最初は香を嗜むように、その匂いだけ嗅いで飲まずにいたのだが(もともとコーヒーは好んでは飲まなかった)、その年のうちに自宅でエスプレッソまで淹れるようになっていた。直火式メーカーを選んだのは、極力、依存するエネルギーや物事を減らしたいと考えていたからだった。

コーヒーを淹れ始めたころの空気感を思い返しながら、今夜、ミラノで教わったイタリア流エスプレッソを久々に味わっていた。一気に飲み干し、カップの底に残った砂糖をスプーンですくい口に運んだ。

この味わい方を教わったあの頃、母は、敗血症と心臓冠動脈へのカテーテル挿入処置を経て長期入院をしていた。なんとか自宅復帰を果たそうと、1日3回のリハビリに励んでくれていた。その甲斐あって一度は希望が叶ったけれど、あれから2年と経たずに特別養護老人ホームへ移ることになるだなんて…。


──本当にぼくは、できるすべてをやり尽くしたのか?──


目指す丁寧な暮らしを取り戻しつつあるここ最近、この1年余りの依存的傾向について振り返っている。


人に
食に
酒に
場に
物に
親に
兄に
家族に
街に
友に
仕組みに
社会に
仕事に
環境に

そして…

美に──。

音楽に──。


それは、当たり前のことかもしれない。一切の頼りもなくひとりで立っている人など、この地上にはいない。

けれどぼくは、未だ言葉にし得ない違和感のなかに、ずっと佇んでいた。

その違和感とは、いわゆるこれだ。


──自己嫌悪──


ひとつひとつ、携えたものを手放していく母を見つめてきて、己の強欲さに嫌気がさした。

未だ50歳手前の身──欲深き時代の真っ只中にいることが「普通」と言っても過言ではない。

しかし、この1年のあり様は、一体何事だ?

今はそう、自戒している。

過ちは、正していく他ない。


──まだ間に合う──


こうしてコーヒーを淹れながら、まだ「今」という瞬間がある幸運を嚙みしめている。


──ひとつひとつ、手放していく──


望まぬままにそう強いられた母へ、ぼくからの償いの想いを込めて。


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