2018年3月22日
午後、母が入所している介護老人保健施設でコンサートがあった。
入所者の方を中心にした…と伝えられていたが、その方は元々、日劇で歌手をされていたそうだ。バンドのサポート陣もまたプロフェッショナル。ジャズスタンダードを中心にした素敵な演奏を母と聴きながら、お隣の公園に咲き始めたひと足早い桜景色を楽しんだ。
演奏はもとより、曲間に語られる今回のコンサートの中心人物である入所者の方のお話がとても興味深かった。
「ろうそくは、己の身を削りながら、人の行く手を照らす」
我が家の墓がある新宿・四ツ谷の寺町をその方が歩いていたときに出逢った言葉だったそうだ。期せずして放たれた言葉に、こんな御縁があったとは、我ながら未だに止まない「引のちから」を改めて感じた。
楽曲の説明と合わせてこうした話題を織り交ぜて下さる様をみて、自分のこれまでの出逢いを振り返っていた。
思えば、ぼくが出逢ってきた人たちは、みんなとても魅力的だった。馬鹿がつくほど純粋で、年齢なんて関係なく子供みたいにどんなときも必死で、宴ともなれば誰よりも無邪気で楽しみ、人のためなら全力になれる──そんなひとたちばかりだった。
「ペイパームーン──たとえ紙の月でも私の愛で本物以上に愛しくなると歌った曲です」
そう自然と語れるほど、今日出逢った方もまた、魅力あふれたひとだった。
「病気は大変で苦しいときもありますが、必要なときもあります」
心に染み入る言葉だった。
──こういう大人になりたい──
一切混じり気のない気持ちでそう思えた自分がいた。ぼくをそんな風に育ててくれたのは、隣にいる母がであり、これまで出逢ってきた魅力あるすべての仲間たちである。
気持ちは、きれいに割り切れるほど単純じゃない。ルールは秩序を守るためにあるのであって、それを遵守することが正義というわけでもない。
──大切なものを守るために──
ときには、すべてに背を向けなければならないこともあるだろう。
目の前にいらっしゃる先人たちは、そうした激動の時代の先に「今」を迎えている。どんな歴史を背中に負っていようとも、その姿は凛々しく、明るく伸びやかなオーラを放っていた。
驚いたのは、終演後のカーテンコールの瞬間。花束を持ったご婦人たちが集まって来られたのだが、どなたもその方のオーラを映したように、みなさん凛としておられたのだ。伺えば、なんと、高校の同級生だそうで、もう50年の付き合いになるらしい。
──ぼくがみつめている人たちは、ぼくが望むぼくを映しているだろうか?──
このところのぼくは、目の前の苦しさから逃れたくて、都合のいい言い訳を見繕っていた気がする。
──難しいことしか信用できない──
果てしなく、純粋であること──これほどに己を試されることはないだろう。
今日もまた、いいお手本をみせていただいた。
──そろそろ決心するとき──
今度はぼくが手本になろう。
──この子が頼り──
最近の母が口にしてくれるその言葉に相応しい自分になれるように。
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