主夫ロマンティック

独身中年男子の介護録──母が授けてくれたこと。そして、それからのこと。

【甘えかたを知らないまま】

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2018年2月13日

 

翌日の一時帰宅に備えて様子を確認するため、夕方、面会へ向かった。

 

高熱を出していた母は、手厚いサポートにより、すっかり元気になっていた。先日と変わらず、未だろれつが回らないのは入歯を外していたからだと思いたいが、これまでは同じ状態でも今のように酷くなかったから、少し心配している。

 

今日は、看護師の方と初めて会う相談員の方から最新の容体について説明があった。解熱しているものの、やや便通が緩めになっているという。そのため、寝る前に処方されている下剤は停止しているとのこと。さらに、元々座る姿勢がよろしくないせいで痛めていた尾てい骨周辺の皮膚の症状が悪化しているとも付け加えられた。状態を確認すると、だいぶ痛そうだったが、本人は何も感じていないらしい──身体の状態を正確に伝えられない問診者泣かせの母は、今日も健在だった。

 

明日から2泊3日。実質、中1日とはいえ、40時間以上は絶えずみまもる必要があるかと思うと、今から気が遠くなる。定期受診もあるうえ、5ヶ月ぶりの一時帰宅。ぼくが直接長時間介助するのもそれ以来となるため、無事、再び母を送り出したあとは、もう気絶必至に違いない。

 

面会を終えて外にでると、今日も美しい夕陽が西の空を染めていた。

 

その光を浴びながら駐車場へ歩いていると、先程までの面会時間のことが蘇ってきた。

 


──親子漫才──

 


初めて顔を合わせた相談員の方に、これまでの5年間の間で感じたことなどを話しつつ、時おり母を会話に混ぜようと冗談を振ると、それに上手に母は応えた。これまでと変わりのない、いつものオチをつけただけなのだけれど、なんだかそのやりとりがとても愉快だった。

 


「スタッフのみなさんと入居者の方を楽しませてあげようよ」

 


そう約束した通り、今も母は道化を演じて毎日を楽しんでいる。

 


「母は太陽なんです。周りを明るく照らしだす…」

 


そう口にすると、相談員の方は大きく頷いて言葉を添えて下さった。

 


「川瀬さんは、女性男性問わずお話しされて人気者ですからね」

 

「ぼくも酒場じゃ人気者なんですけど、ここでの母には敵いません」

 


こんな風に、誰かに話ができる今日を迎えられるだなんて、あの頃には思ってもみなかった。

 


3年前──あの闇に沈んだ日々のことが懐かしく思い出された。

 

 

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