【夢中ということさえ知らずにいたあのころのように】
2017年11月28日
未だ微熱にうなされる午後、随分と久しぶりに抹茶入り玄米茶を淹れた。
この2年近くはコーヒー中心になっていたし、たまに味わう日本茶はいただき物の八女茶だった。それをぜんぶ飲み干して以来だから、いつが最後だったのか思い出せない。
急須に湯を注ぎ入れると、立ち込めてきた湯気に誘われるようにしてぼくを包み込んだ芳ばしい香りに思わず声を上げてしまった。その瞬間、うっとりさせられると同時に、ある懐かしさが蘇ってきた。
──玄米茶も母が教えてくれたんだよな──
親が好む品品を覚えては大人の仲間入りをしたような気持ちになっていた子供時代…歳を重ねた今になって当時を振り返ると、「今日」その日をなんの心配もなく過ごしていたことそのものが、母の偉大さを表象していると改めて感じる。
──この、亡き父から受け継いだつもりの放蕩も、そろそろ墓前に返上のときであろう──
母はゆるやかに、次へ旅立つ支度を始めている。ぼくは気付けば父が鬼籍に入った歳もゆうに越え、五十路の声が聞こえ出すころ。たとえまだまだ気が遠くなるほどの月日がこれから与えられようとも、残された時間は絶対的に少ない。
そして、忘れてはいけない。
──誰しも生命として不可避なその瞬間と隣り合わせに生きていることを──
日常の戯れに埋もれてしまいがちな大切なことは、いつだって思わぬかたちで知らされる。それを受け止められる場に未だ在るうちに…。
──もう一度、夢中になりたい──
「夢中」ということさえ知らずにいたあのころのように。
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