【帰る場所を、母に】
2017年9月5日
初秋の静かな夜、ここにこうして腰をかけると、この5年の様々なことが頭をよぎる。
寝静まる母の傍らで明け方まで料理を作り置いたあと、まだ夜が明けきらぬ薄暗いこの部屋で、淹れたての玄米茶で一服した日々のことや、母の突然の不調で24時間のみまもりが欠かせなくなって、ここで朦朧としながら進まない仕事に焦りを募らせていた夜のことなど、数え切れない記憶が次々蘇ってくる──。
そしていつか、逃れることのできない「そのとき」を過ぎたころ、かつてそんな毎日があったと、ここでこうして腰掛けながら、ひとり懐かしく想い出すときがくるのだろう。
母が不在でも、毎日やることはたくさんある。
家もやはり生き物で、誰も住まわなくなると、驚くほど色褪せてしまうものだ。
──帰る場所を、母に──
この家は、その拠り所。
しかし場所があるだけでは、機能は果たさない。
──奏でられることのない飾られたままの楽器がそうであるように──
逃げ惑い、思案している暇はもうない。
──前へ。
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