主夫ロマンティック

独身中年男子の介護録──母が授けてくれたこと。そして、それからのこと。

【いつか預言者に出逢うことがあったら、そっと訊ねてみたい】

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2017年8月23日

 

スタジオ玄関、再び──。

 

拙作《ROCKSTAR》を作るために場所がなくて、自宅の玄関を簡易アトリエに使ったのは、立春から節分にかけてのころだったろうか? まだ寒さ感じる季節だった。

 

「間に合えば」と思って先延ばしにしていたのだけれど、やるべきことの方を先送りにして、やはり、階段転落防止用の柵を作ることにした。タッチアップをもう一つ借りても良かったのだが、介護保健の単位数を少しでも節約するために自作することに(タッチアップは重いので生活動線を塞ぐと色々と不便)。

 

作品で使った2x4と作業台用のパーツが余っていたので、久々にインパクトドライバーを手に脚だけ組み上げた。

 

 

──刺々しいな──

 

 

母のためというより、自分の手を守るために、トップだけでもカンナをかけた。資本は使い切ったけれど、知恵と体力と想い、そして道具だけはまだ残っているのだから、できることは、やる。

 

今後の一時帰宅は、わずか数日間だけの予定だが、常時みまもりが必要になる。それでも、抜け目なく看ていることは不可能だから、先回りしてやっておかなければならない。

 

 

──我が介護の鉄則──

 

 

この5年、何のためにこんなに必死になってきたかと言えば、無論、お互いのためにである。

 

「人生、やり残しなし」

 

と豪語する母に本意ではない最期を迎えさせてしまって本人も悔いが残るだろうし、遺された方には生涯拭えない忌々しい記憶が刻まれてしまう。

 

何より、そんな光景をぼく自身がみたくない。

 

 

──あのはじまりの日に耳にした轟音──

 

 

母が自宅で転落事故を起こして、床に全身が叩きつけられたであろうあのとき、それまで聴いたことのないような、今も言葉にし得ない物々しい音が鳴り響いた。

 

 

──すべて終わった──

 

 

そう覚悟して駆け寄ったあの日、母の人生がカットアウトされなかったことは、とても幸運だったと思う。

 

あれからお互い、筆舌にし難いほど大変なときを数え切れないほど過ごしたけれど、あのまますべてが閉ざされてしまうよりはよかった。

 

溢れかえる苛立ちと哀しみを超えて、これまで考えることさえなかったことに深く想いを巡らせてみたり、想像もし得なかった日々や目を逸らしたくなるような認めがたい気持ちがぼくのなかにもあるのだということを「嫌というほど」知れたことは、あのまま何も感じずに過ぎてしまうよりも何かの足しになったに違いない。

 

願わくは、ぼくが過ごしたこの日々を、いつか若い世代に伝えてあげたいところだけれど…ぼくを支えてくれた若者たちが介護者になるのは、早くてもあと20年ほど先のこと。

 

そんなときまで、こうして変わらず無駄口を叩いていられるか?

 

いつか預言者に出逢うことがあったら、そっと訊ねてみたいものである。

 

さて、そろそろ母を迎えに行く支度をしよう。まずは汗を拭って。

 

 

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