主夫ロマンティック

独身中年男子の介護録──母が授けてくれたこと

【自分・自立・自由】

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2017年8月15日

 

母の退所前訪問を前に朝から掃除などを2時間ほどこなした。

 

施設から持ち帰ってきた母の衣類を洗い、アイロンがけをしていると、また色んなことを考え始めていた。

 

 

──こうして家を守ってくれていたんだな──

 

 

「自分」なんて主張し始めてから久しい今では、家になんて誰もいない。

 

「誰かが留守番してないと」

 

と会話していた時代は、そう遠くなかったはずだ。不在を守るのは、今やオートロックやセキュリティサービスの役目。近所づきあいも益々希薄で、不意の来客もなくなり、ジェンダーに関わらず外に出て「自立」を強いられるこの時代に、家にはどんな役割があるのだろうか?

 

この5年、介護の負担を軽減するため、衣類はアイロンがけしなくてもいいものを中心に選んできた。でもアイロンがけがまったく不要な衣類なんてそもそもないから、自分の服も多少シワになっていても「まぁ、これも、らしいかな」と黙認していたのだけれど、この一年ほどはさすがに改めたいと思うようになっていた。

 

そして遂に母が施設に入ることになって私服を部屋着に持ち込んだときに、

 

「ヨレヨレの服は着させられない」

 

という思いが強く湧いた。

 

 

──かつて母がこうして整った服を絶えずぼくに用意してくれていたのだから──

 

 

慣れないアイロンがけは、なかなか上手くいかない。それでも不思議と、母がアイロンがけしていた姿が蘇ってきて、徐々にコツを掴み始めている。

 

「確か、湯気が立っていたような」

 

つまりそれは、生地に霧を吹いたあと、高めの温度設定にしたアイロンを乗せていたことになる。

 

 

──いい感じ──

 

 

この季節、短パンにTシャツ、ヘアバンド姿で家中を駆け回りながら家事に勤しんでいた母

 

 

──「家事を本気でやったら休む暇なんてないで」──

 

 

それが口癖だった。

 

ひと回り年の離れた兄とぼくのために55年、現役を務めてくれたことには、本当に感謝している。

 

家を守ることの責任と重みを、いまではだいぶ丸くなったその小さな背中で教えてくれたことも。

 

母がそうしていたように、今日、ぼくも膝の裏にタオルを挟んで、正座をしてアイロンをかけた。

 

 

──誰かのために生きる──

 

 

それは「自由」とは程遠い暮らしなのかもしれない。けれど、誰かの自由には、それを見守る掛け替えのない支えが常にそばにあることを、いつも想像できるようにしたい。

 

当たり前になっている大切なことは、つい忘れてしまいそうになるから。

 

 

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