主夫ロマンティック

独身中年男子の介護録──母が授けてくれたこと

【非常常時──すべては当たり前のことなんかじゃない】

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2017年7月20日

 

乗ることなどまずない下りの通勤電車に揺られた朝──。

 

この時間帯、優先席に空きはない。内部障害を抱えているとも思えない風体の輩が我関せずとばかりに踏ん反り返って見苦しい図体をシートに沈めている。

 

立っていることも、30分くらいの連続歩行もできるほど股関節の故障は回復してきているが、未だ松葉杖に頼る我が身は、「非常が常時」と化したこの空間の保安のために、すっかり慣れた手つきで松葉杖を素早く身に包むようにして抱えて空いた席に身体を滑り込ませた

 

 

──さて、得意の人間観察を楽しむ時間だ──

 

 

ぼくら特有の乏しい表情のせいなのかもしれないが、この景色はもはや名物と言えそうなほど長い歴史を刻み続けている。自分を守ろうと必死に「個」を貫こうとしているのか、周りの様子を察する気配など全く感じない

 

 

──これはどうかな?──

 

 

そんな空気がどう変わるのか、イジワルな試みをした

 

 

──飲み終えたペットボトルを握りつぶす──

 

 

隣で勉強していた中学生と思しき男子だけが一瞬音に反応するも、他は完全なる沈黙が続いている

 

 

──まさかみな、瞑想の達人か?──

 

 

そんな妄想を働かせてしまうほど揺るぎないこの奇妙な静寂…和かにしているのは、向かいに座った二人組の女子中学生だけだ。その微笑ましい様子をぼんやり眺めていると、また余計な記憶が蘇ってくる

 

 

──ぼくの子供のころは、在来線で子供が席に座るだなんてことはほとんどなかったな──

 

 

時は無常なり

 

 

小さな希望が、何かを変えるかもしれない、と、独りそっと微笑んでみたけれど、結果は言うまでもない。

 

 

──感じようとしなければ、気づくはずもない──

 

 

今日を迎えられたことも

 

太陽が光を奏でていることも

 

大切な人がいつもそばにいてくれることも

 

 

──すべては、当たり前のことなんかじゃない。

 

 

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