主夫ロマンティック

独身中年男子の介護録──母が授けてくれたこと

【ただ在るだけの日々】

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2017年7月11日

 

入院時と違って、母との面会も回数が減ってきた。

 

今では週に一度程度となっているが、それでもすっかり顔を憶えられたらしい。

 

このところは母よりも、母の話し相手であり見守り役にもなって下さっているSさんと会話することの方が多くなっている。その間、母は新聞を読んでいて時おり相づちを挟むくらい。

 

Sさんに母の日頃の様子を伺ったりしていると、いつも母に向けて

 

「息子さんに感謝しなきゃね」

 

と言って下さるのだけれど、そこは親子ゆえのてれがあるのか、当たり前のことはなかなか自然には表現されない。

 

「いつもありがとうございます。しあわせです(笑)」

 

まるでコントか昭和のホームドラマの台本のように、取って付けたようにそう口にしては照れ隠しに大きな笑顔添えてくれる母。慣れた自宅での暮らしからだいぶ遠のいているけれど、ここでも穏やかな様子をみせてくれているのは何よりである。

 

周りの入居者の方に目をやると、みなさんとても静かな様子だ。

 

Sさんによると、ほとんどの方が耳が遠くなっているのだという。

 

「話さなくなると言葉もでてこなくなるしね」

 

とSさん。

 

──耳が遠くなると自分から話すことを遠慮してしまう方も多いのではないだろうか?──

 

そんな現実が容易に想像できた。

 

──ただ在るだけの日々──

 

母を含め、ここにいるみなさんの様子を見つめていると、ふとそんな言葉が思い浮かぶ

 

ああしたいこうしたい・あれもやりたいこれもやりたい・こうなりたいああなりたい

 

──もういいじゃないか──

 

今の日本を創ってきたみなさんだから、せめて晩年くらいはゆっくりしてもらいたい

 

──すべての欲望から解き放たれること──

 

それこそが人が目指す境地なのかもしれない、と、帰りのエレベーターのなかでひとり考えていた。

 

──そして今日もまた、この交差点に差し掛かる。

 

母が終を迎えるそのときまで、ぼくはあといくつ選択を迫られるのだろう?

 

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