2017年7月1日
換気扇のフィルター交換──。
半年に一度、この作業をするたび、あの日のことを強く思い出す。
それまで聴いたことがなかった、まさに巨大な物音が家中に鳴り響き、昼過ぎまで眠っていたぼくを瞬時に叩き起こした。
音を扱う身として、どれくらのことが起きたのか容易に想像がついた
──覚悟をして母のもとへ向かった──
手が届かなかったのか、ガスコンロの上に乗ってフィルターを交換しようとしていた母は、そのまま台所の床に転落した。脚の力が衰えてきていたことを自覚できないほどの認知力になっていたのだろうとぼくが理解できるようになったのは、それからだいぶあとのことだった
──あれから今年の秋で丸5年──
左頭部側面と全身を強打。脳震盪を起こしただけで他に怪我はなく、回復可能な軽い記憶障害があった程度だったけれど、それから終を急ぐように、色んな出来事が重なって起き始めた。
目の前にある「これまではあり得なかったこと」に慄き、怯え、不安に沈んだ終わりの見えない日々を幾度も越えて、今日もまだこうして朝を迎えられていることを何より幸運に思う
倒れたっていい。時間はかかってもいつかきっと、またいつか過ごしていたような穏やかな今日がくるから──
そう信じていた、とは、決して言えない。
ただただ打ちひしがれ、これを絶望というのかと考えることさえ遠ざけていた日々もある──それでもぼくには、たくさんの支えがあった
──そのことをいつまでも忘れないでいよう──
あの時、母の歩みがカットアウトされなかったことも、今もなってはぼくの大いなる支えになってくれていたのだと、今、ようやく思えるようになった。
これからまた、このフィルターを手入れするたびに、この奇跡のような恍惚とした試練に感謝しよう。
これでようやく、心を開くことができたのだから。
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