主夫ロマンティック

独身中年男子の介護録──母が授けてくれたこと。そして、それからのこと。

【全能の非考社会】

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2017年6月23日

 

コインパーキングに門限があることを知らずに車を預けて食事に向かってしまい、不覚にも翌朝まで託さなければならない羽目になった間抜けな46歳がひとり、人で埋め尽くされた金曜深夜の駅に佇んでいた。

 

安全柵のないプラットホーム。歩くスペースは黄色い線の外側しかない。警備担当は他のことで精一杯でぼくのことは見えないらしい。帰宅を試みるも松葉杖の状態では危険だと察し、地上を目指した

 

──向かう先は馴染みの酒場──

 

いつもの安全地帯に逃げ込み、笑いあり、涙あり、そして真剣な考察ありの一晩を過ごし、息も絶え絶え帰宅して汗を拭うと、疲れと激痛でもう動けなかった。

 

──片方の松葉杖は車の中に置かれている──

 

食事に向かった先で邪魔になるからと余計な配慮をしたことを悔やんだのはまさに後の祭り。思い描いた以上のバッドエンドに思考が停止した。

 

目が覚めてもしばらく動く気力なく、夕方になって起き出してどうにか現地に戻った。コインパーキングという名からは程遠い大枚を支払い、「なるほどわずかな釣り銭が戻ってくるからコインパーキングというんだな」 と苦笑を浮かべつつ、愛車に乗り込み再び家路に就いた。

 

週末の繁華街──否応無しの賑わいに不自由の身がどれだけ無言のプレッシャーを浴びせられるかを改めて痛感した

 

──毎日毎日、誰かに気を遣って暮らしているのだから、週末くらい自由にしたいよね──

 

松葉杖に蹴躓かれること数回、言葉も態度も交わされることはない。そのうち舌打ちする音でも聞こえてくるのではないかと案じ、お互いのために音楽で耳を塞いだ。

 

危機的状況でも指示されることなく整然と秩序を守り、立つ鳥跡を濁さずの精神で公共の場の掃除をして去る姿は、日本人を表象する気質として海外にまで広く伝えられているというのに、目の前にいる、顔も名前も知らない誰かのことを想うことはできない。

 

お行儀よく振舞っているのは、災難が降りかからないようにするためのただの保身か?

 

疑問を抱き考えることを放棄するために、マナーやルール、法令は実に有効に機能する全能の神のような存在たり得る、と、今夜もまた独り思索に耽るいつもと変わらぬ夜を迎えている

 

──こうして身体を壊すこともまた、或る気づきの前兆。無駄なことは何もない──

 

そんな不毛なことを考えている間に、大好きな牛乳を買って帰るのを忘れたことに気づいた(嘆息)

 

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