主夫ロマンティック

独身中年男子の介護録──母が授けてくれたこと。そして、それからのこと。

【もしも願いが叶うなら】

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2017年6月13日

 

松葉杖で両手が塞がってしまうこんな体調のときにも、自然はいつも変わらず自然にことを進めてくれる

 

──梅雨入りしてしまった──

 

それでなくとも、日常生活で手が空かないのは実に困ると痛感しているこのごろ。

 

いつもはポケットに入れている電話や財布は、身体を必要以上に動かしてしまう今、パンツをずり下げるのに大活躍だ。両手が塞がっているから正すのも即座にはいかない。

 

ならば背負った鞄に入れてみると、今度は取り出すときに面倒になる

 

──何かいい手があるはず──

 

と、そこで思い出した

 

──何の目的で手に入れたのか思い出せないポシェットがあることを──

 

母の手を引いて歩くときに、やはり手が塞がらないように…と思っていたのだろうか?

 

一昨年の年始までは、ぼくの腕にしがみつけばまだ歩けていたから、何度か新宿の百貨店まで出かけた。新宿で暮らしていた母の黄金時代によく通った馴染みの場所で、頭と身体の体操を…と期して

 

──今日、老人保険施設のケアマネジャーから連絡があった。先の担当者会議で相談を受けた通り、あらゆる工夫をしていただいているようだが、相変わらず主食を食べないそうだ。

 

入所後3週間で3キロ減量して、まもなく大台に迫っているという

 

──何度も繰り返して自分を言い聞かせる──

 

これは、そのときのための支度を母が始めたんだ──

 

「きっと、そこへ通じる入口は細くて小さい」

「空高く舞うには身体も軽い方がいい」

 

ぼくの誕生と入れ替わるように先だった父を看ていた母が話してくれたことがある

 

「こんなところまで肉が落ちるんやね」

 

末期、痩せ細る父の表情をみて思ったそうだ。

 

その様子をぼくは観ていないはずだけれど、このところ痩けてきた母の頰をみると、45年前に母が見つめた影が浮かんでくる。

 

冗談交じりにそんな話しを母にしてみても、相変わらず、いつもの調子で和かに笑うだけ──

 

この先、症状が進んだとしても、この朗らかさだけは保てるといい。

 

よく笑う母だから、どんなことがあろうと、笑顔だけ遺して解き放たれて欲しい──

 

もしも願いが叶うなら…。

 

 

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