主夫ロマンティック

独身中年男子の介護録──母が授けてくれたこと

【それだけでぼくは満たされる】

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2017年6月8日

 

親切気をたくさんいただいた日──。

 

母が施設内で発熱したため、大事をとって外来受診に向かった。朝9時に出発して帰宅したのは15時過ぎ…疲れ知らずでは帰宅できるはずもない。

 

母は車椅子、ぼくは松葉杖を使っている状態なことに加えて、向かった先が介護施設医療機関ともなると、気配り目配りに満ちている。いや、実際はそんなこともない。「そういうところにお勤めだから」といって、気づかない方もたくさんいることを嫌というほどみてきたから。

 

32年ぶりに使うことになった松葉杖は実に便利だ。痛みの軽減はもちろん、足を引きずるようにして歩くより圧倒的に速く移動できる。

 

だがしかし、問題は両手が塞がってしまうこと。今日は施設から病院まで送迎車をお願いすることにしたのだが、院内は当然、母の車椅子を押さないといけない。そのため、片方の松葉杖は施設に預けて向かった。

 

幸い、母の車椅子が片側の松葉杖代わりになってくれる

 

──二人一脚──

 

二人でどうにか一人分、歩けているような感じ。

 

総合内科にて、詳細な問診を受けるも、この2年ほど母は何を訊かれても「大丈夫」としか応えないため、ぼくが状況を説明する。母の様子については離れて暮らす家族と共有しているのだけれど、やはりぼくがいないと、正確な診察は受けられそうにないと改めて痛感した

 

──まだここに留まるべきなのだろう──

 

その波に乗ったと直感したあの挑戦が叶わなかったわけがわかった気がした。

 

幸い、尿路感染の再発も肺炎もなく(75歳以上の高齢になると肺炎は重篤化しやすいらしい)、まずは一安心。

 

終始ぼんやり気味なのに、急に何かに興味を示したかと思うと誰彼構わずその話題を始める母…今日は、綾小路きみまろさんのポスターを見つけて、看護師さんや病院職員の方に

 

「わたしあのひと好き(大阪のイントネーションで)」

 

と繰り返していた

 

──子供がえり──

 

人の一生は、こうして放物線を描くように、いつかまたもとの地平に着地する。

 

人の話を遮るようにして思いついたことを脈略なく話し出すことが増えてきたころ、ぼくは母の脳内に何が起きているのか気づけず、都度、苛立っていた。そうした振る舞いを正しく躾けてくれたのは言うまでもない母だったのに…。

 

それからしばらくして認知症外来で脳の萎縮度を測る検査をした…納得できる結果だった。

 

「長谷川式」と呼ばれる認知症評価のための簡易検査の値は、当時から低下の一途を辿り、ここへきて一気にそれが加速した。30点中12点という報告を受けている

 

──これでいい──

 

煩わしいことは全部手放して、母にはこの浮世に思い残すことなく旅たってもらいたい。だから最近の食欲低下も、ぼく自身はあまり気にしていない

 

──そのときのための支度を始めた──

 

母の無意識の領域で、いよいよプログラムが実行されたのだから。

 

帰りに寄ったスーパーマーケットのレジでも、その親切さに暖かいものを覚えた。

 

松葉杖を突きながらカートを押すぼくを見るなり、レジ担当のご婦人が即座にカゴを引き上げてくださったのである。そして会計後も、カゴを戻しにレジから出てまで対応してくださった。ご自身も同様に困った経験があったのだろうか?

 

──こんな自然な対応はなかなかできない──

 

些細なことかもしれない。けれど、これだけで満たされた気持ちになれるものだな、と、帰りの車のなかで考えていた。例えいま、ぼくに何なくても…なんて、いつものようにひとりブツブツと…。

 

帰宅すると案の定、体力を使い果たしていた。痛みめた箇所を労わるようにして疲労にまみれた服を脱ぎ捨て、そっと汗を流した。

 

遅めの午後を頂いたあとの記憶がない。気づいたときにはもうすっかり夜になっていた。

 

このところ、居間のソファーで眠ってしまうことが増えてきている。

 

そしてこの真夜中、随分遠ざかってしまった千羽鶴折りを再開した。近頃毎日観ているJeff Beckのライブに耳を傾けながら…。

 

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