主夫ロマンティック

独身中年男子の介護録──母が授けてくれたこと

【ぼくのバックアップ】

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2017年5月31日

 

だいぶまた痩せたな──

 

午前中をすべて費やして、母の眼科受診のため短いお出かけをした。こうして母とふたり道を行くのは、随分と久しぶりだった。

 

送迎の車もお願いできたのだが、いい天気だったので、坂の上の施設から坂の下の病院まで車椅子を押して向かった。股関節の故障は癒えぬままだったが、300メートルほどの距離ゆえ問題ない…その見積りが甘かったと思い知らされたのは、登りになる帰りのことだった。

 

──緩やかな坂だというのに──

 

思えば、車椅子を押しながら坂道を行くのは初めてだった。脂汗をかきながら痛みを堪え悶絶し、ようやく母の居室に戻ったときには、むしろぼくの方が車椅子が必要なほどになっていた。

 

部屋着を補充して持ち帰る洗濯物を袋詰めし、お昼の時間を迎えた母に「食事をしっかり摂るように」と一言添えてから施設を後にした。

 

全体的に食が細くなってきていることに加えて、やはりここでも米を食べないらしい。

 

入院時には仕方なく麺類にしていただいていたほどだ。自宅で好物のパスタをだすと「下手な食レポーターか?」とツッコミたくなるほど戯けた調子で喜ぶ母だから…そして何と言っても、粉もの天国=大阪生まれだから…

 

残りの時間の方が少なくなった今、できれば好きなものだけ食べさせてあげたいが…そうもいっていられない

 

──「無理な延命はしない」──

 

それはぼくら家族だけではなく、母自身も望んでいることだ。

 

でも、目の前でどんどん痩せていく様子をみると…自然と「生きる」ための言葉が口を突く。

 

嗚呼、またもや解のない問いの狭間で空回りが始まってしまいそうだ

 

──理屈で捉えて理解しようと努めていることと心が感じることの差異──

 

この病院一混雑している眼科の受診をひと気の少ない待合の最後部で待ちながら、母に最近読んだ本にあった宇宙の始まりについての話をした。さらにぼんやり度合いが進んでしまっている様子で、これまで以上に上の空だった。

 

ぼくはその変化の速度に戸惑いつつも

 

「今の母にしか感じられないものがあるんだ」

 

と自分を言い聞かせながら、あの望まぬ物語を再び心に書き留めないよう努めた。

 

痛みをこらえ片脚を引きずりながら歩幅を半歩ずつにして行く家路。

 

「もしもぼくが…」

 

と考えだせば、その道はすぐさま、哲学の路へと通ずる。

 

──「ひとりで子供が産めないわけもよくわかる」──

 

ひとつの生命を独りでは支えきれない。だから、見守る眼が二つ=両親が必要なのだろう。親を見守る眼も同じだ

 

──誰かを看る──

 

それを独りだけで完遂するのは、奇跡なのかもしれない。

 

ぼくのバックアップは、未だ見当たりそうにない。

 

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