主夫ロマンティック

独身中年男子の介護録──母が授けてくれたこと

【その選択が許された日】

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2017年5月2日

 

その選択が許された日──。

 

今日も早起きして、連休中のおかずを作りおく。

 

母の次の受入先が決まった翌朝に、まるで走馬灯のように記憶を呼び覚ましてくれる思わせぶりな音楽を聴きながら調理をしていたものだから、この4年と半年ほどの日々のことが次々と蘇ってきた。

 

トントントントン──。

 

中学生のころ指先に火傷をして以来、演奏に支障がでるほどの痛みを遺した苦い経験のせいで、お湯さえ沸かさないようになっていたぼくが、ここまで料理をするようになったのだから、今日はいつだって新しい驚きと興奮を届けてくれるものだと、我ながらよく揃えられた下拵えの出来栄えを観ながら思った。

 

4年といったら、学校を卒業するくらいの時間だ。生まれた赤ん坊も、歩き出して言葉を話しているころだろう

 

──随分とながい時間が過ぎていた──

 

どんなに自分を肯定しようと、絶えず悔いが残るのが介護だと思い知らされた母との日々。出来合いの惣菜や出前に頼ったのは体調を崩したときくらいで数えるほどだったし、身の回りの世話にしても自分のことは随分と放ったままにして(周りにも迷惑をかけながら)できる限りのことをしたつもりだ。とても口外できないような無茶苦茶な暮らしだったけれど、よくやった、と思う

 

それでも──。

 

そう、いつだって、この言葉が後に続いてしまう

 

──「お互いのための選択を」──

 

どんなときもそう信じて岐路に立った。むろん行く手に見える景色は、そこに辿り着くまでは誰にも知れない。

 

我が家が幸運なのは、母が朗らかなことだ(今のところは)。そして、先へ進むに連れ、記憶を始め様々な機能がゆっくりと、そして着実に衰えていることだろう──

 

この春の選択は、この春でしかあり得なかった

 

──今のままの暮らしで創作に全力を投じることができるのか挑戦した去年の今ごろでも、キャリア史上最大のプレッシャーに向き合いながら何も手につかず闇に沈んだ一昨年でも、安息の地を喪って母とふたり顔を付き合わせながら息つく暇もない毎日が始まった一昨々年でも、頼りたかったときに助けが得られず絶望したあの始まりのころでもない──

 

唯一、昨日だけが、この選択が許される日だった

 

これからが、きっとながい。同時に、ひとつ一つの選択が、ますます重たくのしかかってくる。そのときにまた闇に沈み込んでしまわないように、この日々の渦の中で、身とこころを削ずるようにして学んだことを役立てていきたい。

 

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