主夫ロマンティック

独身中年男子の介護録──母が授けてくれたこと

【帰る場所があるから】

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2017年4月13日

 

「川瀬さんは人気ものですから」

 

──母のことである──

 

先日見舞った際、リハビリ担当者との会話のなかで、そんな一言があった。確かに母のリハビリの時間は、笑顔が絶えない。時折冗談をいったりおどけてみせたり…。はたから見ているとまったくリハビリに集中していないことに嘆息させられるばかり。そのせいもあって肝心の身体能力は年相応よりも少し早回しに衰え続けているが、こればかりはもう抗ってどうなるものでもない。

 

そして、昨夏処置を施した心臓の具合が、今になってまた少し悪化しているらしい。そのため、積極的なリハビリは控えられているという。1日3回が2回になったのは、そのせいもあるのだろう。

 

今夜も母を見舞って、話しをした。相変わらず自分の状態がよく把握できていないようだった

 

「家に帰れる」

「自分の身の回りのことができるようにならないと、無理だよね」

 

──そう伝えるのが精一杯だった。

 

これまでは

 

「家に帰りたいとアピールして、しっかりリハビリをやっていこう」

 

と繰り返し伝えてきたけれど、今夜からは目標を変えることにした。

 

「スタッフのみなさんを楽しませてあげようよ」

 

昭和一桁生まれの母は、幼いころバレエや声楽のレッスンを受けていて、叶うことならステージに立ちたいと願っていたらしい。

 

でも、時代も時代もである。自分から進んで「早く働きたい」と、就職する道を選んだ。

 

「やっとステージに立てたね(笑)」

「せやなぁ(笑)」

 

気の抜けないタフさが求められる医療の現場で、スタッフのみなさんをいっときでも和ませて差し上げられるのなら、それはきっと、母にしかできないことだから。

 

入院患者のなかには、色んな人がいる。それに一様に応えていかなければいけない業務は、想像を超えた厳しさがあるに違いない──

 

「だからさ、人気者の〇〇ばあさんが、にっこりさせてあげなよ」

「わたしは大阪生まれやからなぁ〜オモロいんかなぁ(笑)」

 

たとえもうここへ戻れなくても、帰る場所があるだけで、母はきっと安心して毎日を過ごすことができる。

 

もちろん、ここは母のためだけではなくて、ぼくにとっても大切な大切な、帰る場所だ。いつか母を無事に見送るまでは、何としても守り通したい。

 

あといつく、この桜を見上げることができるだろう?

 

──今年の桜にもまた、たくさんの記憶が宿っている。

 

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